十五分後

 満身創痍の燈子はジッと目の前に立つ朱鷺の姿を見る。
 その隣には、胸に大穴の開いた一人の魔法少女の死体が転がっている。ほんの一瞬前、朱鷺の足が彼女の心臓を貫き、殺したのだ。ほんの少しの隙を見せただけというのに、断末魔の言葉もなく、彼女の命は消えうせた。
 それは悲しいことだが、今の燈子にそんな余裕はない。
 彼女もギリギリだ。
 肋骨が半分ほど折れて、右腕の健も切れている。左足など、地につけている感触がない。
 意識も飛びかけている。
 これ以上戦うことはできないだろう。
 戦力も宮崎と自分だけだ。

 「ハァ……ハァ……」

 だが、もうその心配ない。

 目の前に立つ朱鷺

 彼女はすでに息絶えていた。
 全身を真っ赤に染め、潰れた左目をしっかりと開いたまま、しっかりと結ばれた唇はもう青紫色になっている。残った右目は既にじっとりと淀んでいて、舞い散っていた式神も粒子と化し、雪のように降り注いでいて、背中からは魔法少女が突き刺した刀や投げナイフが突き刺さっている。
 地面には折れた棍の欠片が転がっていた。
 かの有名な弁慶のように
 彼女は立ったままこと切れていた。


 「ハァ……勝った……けど……」


 ほとんど負けたようなものだ。
 六人中二人しか残っていない。
 それも敵の魔法少女と超能力者も逃してしまい、怪我だらけで追うことができない。


 「やっぱり、あんた凄いよ」


 燈子は薄れ行く意識の中
 朱鷺に向かい、彼女はそう呟いた。

 宮崎は地面に倒れ込み、意識を失った燈子の姿と、死してなお自分たちに立ちはだかる朱鷺の死体とを交互に見る。何か悩んでいるようで、顎に手を当てながら、ひたすらその作業を繰り返している。
 一分後
 無言のままコクンと頷いてから、燈子の体を小脇に抱えるとそのまま来た道を戻っていった。
 彼女一人ではまともに戦うことができない。
 一度撤退した方が賢明だと判断したのだ。
 死体を持ち帰るのは面倒なので、放置する。

 全力で地を蹴り、宙を飛ぶとそのまま消えていく。

 毒の霧が充満し、血と魔力の残滓がふりまかれている中
 朱鷺の死体はただピクリとも動くことなく、何かを待つようにジッとその場で立っていた。銅像のように、偶像のように。それは何とも言えない哀愁を漂わせる姿だった。それが朱鷺の最後だった。