「クッ!!」

 一瞬でいい
 一瞬の隙ができれば勝てるのだ。

 それなのに
 マリアは顔を悔し気に歪める。苦し紛れに唾でも吐き掛けてやろうかと思うがやめた。
 万策尽きたか。

 そう思った時だった。



 原初の魔法少女はマリアを拘束し、最後の一撃を繰り出す直前に顔の修復が終わった。

 彼女は
 深い意味のないただの好奇心から、今から抹殺する少女の姿を見てみることにした。魔力感知ではなく、普通の目で。おそらく、達也が残したであろう最後の遺産、彼がこの世界にいたことを示す数少ない作品
 それにどうせ、再生にはまず肉体を戻し、それから粒子化するしかない。直津粒子を集めるだけでは何の意味もない。
 ただの暇つぶしで、ついでだ
 原初の魔法少女はそう決めると
 黒い粒子の下で
 まず人間本来の目を復活させ、こっそり自分が追い詰めた少女の姿を確認する。

 すると彼女の顔が目に入る。
 まるで世界に絶望したかのような暗い目、涙をとめどなく流し、しかしながらその奥には断固とした決意が眠っていた。お世辞に美人とは言えない顔立ち。頭からは長く美しい髪が伸びているようだったが、そのほとんどは体の陰に隠れて確認することができない。全体的に少しやつれているようにも見えるが、気のせいだろう。
 それを見た瞬間

 原初の魔法少女

 否

 アリスは

 まるで金縛りにあったかのように、体の動きをピタリと止めると、

 聞こえるか聞こえないか
 ギリギリの声を

 ぽつりと漏らした。