弱々しい声でそう呟き、顔を声のする方に向ける。
 すると、あのいやらしい笑みを浮かべたピエロのようなマスコットがそこにいた。クライシスだ。思い返してみると、彼と顔を合わせるのが久しぶりなような気がする。それが錯覚なのか、現実なのかマリアには判別が付かなかった。
 彼はやけに慌てた様子でマリアに話しかける。


 「すまない、ちょっと心配ごとがあって少し離れていた」
 「……………そう」
 「この様子だと……原初の魔法少女を無事、殺すことができたんだね」
 「…………だから、何って感じだけど……」
 「それはまずいな」
 「え?」
 「悪いことは言わない。マリア、今すぐこの場を離れるんだ」
 「何を言って……」


 クライシスが何を言っているのか理解できない。
 それは言葉の意味が分からないというよりも、その言葉が頭の中に入ってこないのだ。無意味な言葉が無意味に自分の周囲を浮遊している。そのため、耳から脳内に入り込まないのだ。
 クライシスはそれが分からず、ただ単にマリアがボーッとしているだけだと思い、苛立った。


 「早く!!」
 「え、えぇと」


 よく分からないことを呟きながらなんとか体を動かそうとするマリア
 だが、うまくいかない。
 理由は分からないが、どうにも体が動かないのだ。どうやら体は動くことを拒否しているらしい。今のマリアに、それを無理矢理動かせるほどの気力はなかった。せいぜい、指一本動かすのが限界だった。
 彼女はクライシスに目を向けながらこう呟いた。


 「ねぇ、どうして私は戦ってたの?」
 「なんだい、突然」
 「これで本当に終わったの?」
 「……ある意味では、これから始まるのかもしれない」
 「……今、なんて?」


 クライシスの声のトーンがガクッと落ちた。
 何か、自分は聞いてはいけないことを聞いてしまったような気がして
 マリアは初めて興味をひかれた。


 そのせいか、彼女は気がつかなかった。
 通りの向こうから、自分に向かってやってくる国連軍の部隊の存在に