この後、色々と達也が話していたがほとんど頭に入ってこなかった。
 エレベーターに乗り込み、地下にある実験室に向かう。するとそこには機械の椅子が一つだけ置かれていた、周囲の壁は他の物と違い灰色で、何かグラフのようなものをいくつも浮かび上がらせていたがマリアにはそれが何か分からなかった。
 部屋の広さは人が二人入るとギリギリのサイズで、ユウキとデルタの二人は外で待機していた。
 達也は何やら持ち込んでいたタブレットを操作して、何やら確認しながらマリアに向かって命令した。


 「そこに座れ」
 「分かったよ、で、何するの?」
 「契約だ」
 「え?」
 「いいから座れ」
 「…………」


 話にならない。
 そう思ったマリアは何も言うなく椅子に座り込む。すると、キュイィィィィィィィという起動音がして、椅子の手すり、背もたれが淡い光を放ち始めた。何となく暖かい感覚が全身を包み込んでくる。
 だが、生理的に嫌気がさしたのでマリアは椅子から降りようとする。
 ところがそうすることはできなかった。
 まるで金縛りにあったかのように体が動かない。


 「何ッ!!! これっ!!」
 「静かにしろ。すぐに終わる」
 「そんなこと言って―――ッ!?」


 異変に気が付き、マリアは突然口を閉ざしてしまう。
 脳内を電流のようなものが迸ったかと思った瞬間、全身筋肉がピンっと張り体がピクピクと勝手に動き出す。だが、それは五分も経たないうちに収まると今度は視界に異物が見えるようになったのだ。
 最初は小さい違和感だった。


 ザザッというノイズのようなものが何度も走り、何かが浮いているのがちらりと見えた。やがてそれはしっかりとしたか形を保ち、マリアの目の前に現れた。
 それはまるでピエロの顔をしたこけしのようだった。全長は三十cm程度、胴体部分には何やら不思議な文様が刻まれており、そこから紫色の光を放っていた。また、体の周りにはまるで猫の手のようなものが二つ浮いていた。
 それはにやりといやらしい笑みを浮かべたまま、マリアに向かって話しかけてきた。


 「始めました!! 君がマリアだね!! よろしく!!」
 「な……なに、これは……」
 「僕かい? 僕の名前は、クライシスだよ。よろしくね」
 「え? ええ?」



 さらに困惑するマリア
 いきなり目の前に謎の物体が出現したのだ、今日で二番目に困惑した出来事だった、どうすればいいのか分からず完全に固まってしまう。クライシスは「あれあれー?」と言いながらマリアの周囲をぐるぐると回っている。
 達也は「成功だな」と呟きながら操作していたタブレットを仕舞い込むと、この部屋の機能を停止する。
 その後でこう言った。


 「クライシス、彼女が困ってるじゃないか。ちょっと待ってやれ」
 「あれ? 説明してないの?」
 「今からする」
 「なら早くしてよ」


 マリアは混乱していたが、あることに気が付いた。
 このこけしは先ほどクライシスと名乗っていた。それは、先ほど達也が話していた魔法少女の物語に出てくる完全生命体の名前とまったく同じなのだ。一体どういうことなのだろうか
 疑問に思ったので尋ねようとしたが
 先に達也が答えてしまった。