「これがクライシスのアバターだ」
 「あばたー?」
 「分身みたいなものだ」
 「え、でもどうしてここに? コアを失って死んだんじゃないの?」
 「そうだな、正確に言わせてもらおう。クライシスを私がよみがえらせたものだ」
 「え?」
 「私はコアを人為的に生み出すことに成功した。その技術とクライシスの肉体に残されていた情報を利用して、彼を再生させることに成功したのだ。しかし、過去の記憶はない。彼は生まれ変わった新生クライシス、だからな」
 「……それが、どうして?」
 「話を聞いていなかったのか? 彼が君に魔力を常に供給し続ける、これで君は完成した」
 「……そういうことね」


 そういえば自分は魔力を消費して生きる生命体だと言っていた。それに、魔力が尽きることがあるということは、一人の人間が持てる魔力には限界があるのだろう。だが外部から供給し続けることによって、その心配がなくなる。
 つまりは、原初の魔法少女とほとんど同じ不死身なのだろう。
 マリアがうんうんと頷いている姿を見て、クライシスは満足そうにクルクルと回り続ける。
 その姿に見とれている間に、達也はマリアの前に立つと説明を始めた。


 「しかしながら君はまだ能力を使いこなせていない」
 「え……?」
 「なぜなら使ったことが無いからだ、これから先は実戦を経験してからだ」
 「で、でも!!」


 一方的な通告にマリアは反論しようとする。
 だがそれを無理矢理遮ると達也は悪魔じみた笑みを浮かべて言い放った。


 「拒否権はない!!」
 「――ッ!!!」
 「なぜなら、戦うことが君の生まれてきた意味だからだ」
 「そ、そんな」
 「君は世界を救う義務があるんだ!!!」
 「…………」
 「戦え、分かったな」



 ここまで言われて反論できるほどマリアは強くなかった。
 それに、他にどうすればいいのかも分からなかった。生まれて間もない彼女にこの荒廃した世界での生き方や、外の世界など未知の領域だった。死にたくなければ達也に頼るしかない、それには戦う以外の道などなかった。
 なので
 しょうがなく
 マリアは頷くほかなかった。
 世界を救う以外の選択肢が用意されていなかった。


 それは二人とも分かっていた。


 それでも達也は嬉しいのか、歓喜の笑みを浮かべるとそのまま部屋から出て行ってしまった。
 マリアは黒い部屋の中、一人で絶望した。
 開いたままの扉からこっそりと二人が覗いているのが見えた。
 だが、何も言えなかった。