翼の少女がまるで軍隊のように隊列を組んで進んでいる
 その先頭には二人の魔法少女が並んでいた。一人は気の弱そうな子で、もう一人は髪を色とりどりに染め、チャラチャラした雰囲気を身にまとっていた。彼女たちは原初の魔法少女側についた魔法少女達である。
 彼女たちは研究所を攻略するために動員されたのだ。
 誰もいない大通りを足音を響かせて、ゆっくりと進んでいた。
 それはまるで葬列のようだった。


 そんな軍隊を見下ろす三人の少女
 「たった五〇〇人だってね」
 「楽勝っすよ、これぐらい」
 「…………」
 そんなことを呟きあう。
 彼女たちは既に勝利を確信しているようだった。


 顔を青くして、辺りをキョロキョロと見渡し、警戒を続けていた魔法少女は、やがて自分たちを見る魔法少女たちに気が付いた。隠れようとしているようにはこれっぽちも見えず、堂々と立っていた。
 逆光のせいでうまく姿を見ることができなかったので、ピタリと足を止めるとじっと目を凝らす。
 それに合わせて後ろに並んでいた翼の少女と、一緒に歩いていた魔法少女の足が止まる。


 「おい、サン。なんで止まってるんだよ」
 「え……あの、ごめんね……椎名。あれ……何かな?」
 「マジあり得ないんだけど、この木偶の棒」
 「ごめんね、ごめんね」


 そう言って頭を下げるサンと呼ばれた魔法少女
 椎名と呼ばれた方は面倒くさそうに顔を上げながらブツブツと文句を言い続ける。
 ふと、どこからともなく第三者の声が聞こえてきた。


 『おいてめぇ、サンを馬鹿にするんじゃねえぞ』
 「……ルナは黙ってなさいよ」
 『オレに文句を言うんじゃねぇ、あれを見ろってんだ』
 「分かった」


 呆れた声で頷く椎名
 目を細めてジッとビルの上に立つ三人の影を見る。
 それが魔法少女であることに気が付くのにそう大して時間はかからなかった、だが、それが誰かまでは分からない。援軍か、もしくは敵か。いぶかしげな顔をする椎名。一方のサンは不安で顔をさらに青くしていった。
 しばらくの間、膠着状態が続いていた。
 しかし、ビルの上の少女のうち中心に立っていた一人がゆっくりと口を開くと話しかけた。


 「久しぶりね、サン」
 「―――ッ!?!?!?!?!?!?!? そ、……そ……その……声は……まさか」
 「そうよ、私よ」


 少女が地面に降り立つ。
 大人っぽい雰囲気を身にまとい、鮮やかな夜の色をした麗装を身にまとっていた。装飾に無駄こそなかったが、決して味気ない物ではない。中々独特なものだった。両手にはがら空きで武器は何も持っていなかった。
 彼女こそ、世界最強の魔法少女と呼ばれるフレイヤだった。
 サンはフレイヤの顔を見た瞬間に顔面蒼白となる。もう青いなんた生易しいものではない。もう半分気絶しているようなものだった。
 フレイヤは久しぶりに見る懐かしい顔に笑顔になってしまう。
 だがいつでも攻撃できるようにしている。全身から殺気が放たれているのがよく分かった。
 椎名はこの一年で生まれた魔法少女なので、フレイヤのことを知らなかった。それは、ある意味では非常に幸運と言えた、なぜならサンのように怯えることなく堂々と話すことができるからだ。
 声を荒げ、中指を立てると無謀にもフレイヤに向かって挑発を始めた。


 「誰なのよ。このクソビッチは」
 「椎名……やめて……」
 「ハッ!! 何をビビってんだよ敵はたった一人、こっちは五〇〇人だぜ」
 「…………無理、勝てないよ……だって……彼女は一騎当千・百花繚乱のフレイヤだよ」
 「なんだそのダサい異名は」


 そう言って鼻で笑う。