「待てくらぁ!!」
 「ヒィィィィィィ!! 誰か助けて!!!」


 悪魔のような笑みを浮かべながら、泣き叫ぶ少女を追いかける詩音
 完全に危ない人だった。
 かれこれ五分間はこんな追いかけっこを続けている。二人とも限界ギリギリの速度を出して宙を飛んでいるのだが、どうしても埒が明かない。サンは捕まるわけにいかないし、詩音は詩音でここで引いたら名が廃る。
 だが、これではいたちごっこだ。
 見かねたルナは声を上げる。


 『おい、サン』
 「な、何よ………こんな状況で何!?」
 『このまま逃げ続ける気か?』
 「そ、そ、そ、それは……」
 『いいから迎え撃つぞ』
 「で、でも……」
 『オレがやるから』
 「…………」


 速度を落とすことなく考え込むサン
 ルナの言うことはもっともだった。
 このまま逃げ続けることはできないだろう、だったらここらで腹をくくって撃退した方がよさそうだった。幸いにも詩音一人だけだし、ルナがやる気になっている。サンでは勝てない相手でもルナなら可能性がある。
 そう結論づけると、小さく頷く。


 「分かった、行くよ」
 『オーケー、俺の出番だ』


 二人の声がぴったりかあさなる。
 それと同時にサンの顔に異変が起きる。気が弱い少女の顔がグニャリと歪むと打って変わって色の黒い、男勝りな顔に変わる。それと同時に麗装も形を変えると、病院の白衣のような物から西部劇のカウボーイのような物になる。
 何も持っていなかった手には古めかしい二丁の拳銃が顕現され、体つきまでもがガラリと変わる。
 詩音はそれを見て「チッ」と舌打ちして呟いた。


 「クソッ……ルナが出て来たか」
 「ヘイヘイヘイヘイ!! オレの時間が来たぜ!!!」


 完全に別人へと変化した。
 これがサンの能力だった。
 ルナという少女は動きを止めぐるりと空中で向きを変えると二つの銃口を真っ直ぐ向ける、寸分たがわず頭部に狙いがつけられていた。詩音も一旦動きを止めると、掌に魔方陣を形成する。
 そしてそこから巨大な氷の塊が生み出される。
 「久しぶりだなぁ、ルナ」
 「東雲ぇ……容赦しねぇからな」


 メンチを切りあう二人
 ガンガンと銃声が響き渡る。
 二発の弾丸が宙を切り向かって行くが、それらは全て吸い込まれるように氷の塊に命中する。その瞬間に詩音は氷を投げ捨てると、上昇し、そこから攻撃を仕掛けようとする。
 ルナもそれを察していた。
 なので次は銃口を上にあげると待ち構える。
 すると、予想通り射線の先に詩音の姿が見える。


 「へっ!! 甘い!!」
 「どっちが、かな」
 「んなっ!!」