ルナが引き金を引く直前
 詩音が動きを見せると、掌から鋭く太い氷の氷柱を超高速で伸ばしていく。それで視界を遮られ狙いをうまいことつけられなくなる、無理矢理にでも撃とうと思えば撃てるのだが、そんな軽率な行動はとりたくなかった。
 しょうがないので右に飛ぶと、氷柱を回避し、少し離れたところにある大通りに降り立つ。
 詩音もそれを見て氷柱を切り離すと、ルナを追いかけてそこに立つ。
 再び相対する二人


 「やるじゃん」
 「オレを舐めるんじゃねぇぞ」
 「舐めるわけないだろ、お前は強い」
 「じゃ、死にな」


 そう言ってルナは銃口を地面に向ける。
 まるで戦うことを放棄しているような行動だが、詩音はヤバいという顔をして身構える。ルナはそれを見てニッと笑った後、連続で引き金を引くと銃弾をいくつも放つ。それらは地面に向かって行くと、そのままめり込んでいく。
 普通ならそこで動きが阻害され、銃痕だけを残こる何の意味もない行為だが、ルナに限ってそんなことはなかった。
 銃弾は動きが止まることなく、魚のように地面に潜っていく。
 詩音は地面を蹴って飛び上がると、両手から程よい長さの氷の剣を生やした。何かをされる前に接近戦で叩きのめすつもりでいた。だが、それに対抗するようにルナも飛び上がると、向かって来る。


 「死ねぇ!!!」
 「お前がな!!」


 詩音は間合いに入ったのを察すると腕を振るう、冷たい剣がヒュッと宙を切ると寸分違わず首元を狙う。
 それを見たルナは思いっきり足を上げると履いていたブーツで氷の剣を跳ね上げた。だが、すぐに二撃目が襲い掛かる、左腕の剣の先を向けると思いっきり突き出される。しかしそれはルナの予想通りだった。
 右手の拳銃でそれを弾き飛ばすと、少し後ろに下がる。
 攻撃を全てかわされた詩音はしょうがないので氷の剣を外すと、もともとの自分の武装であるハンマーを顕現し、勢いよくそれを振るった。
 だがルナは両腕にシールドを集中させ、それをクロスさせるとハンマーを受け止めた。鈍い衝撃が襲い掛かってくる、骨が折れたか筋肉を傷めたか。どっちにしろ最悪の事態は避けることができた。


 「クッ!!」
 「痛いかな? 痛いよなぁ!!」
 「余裕だねー。オレの能力を忘れたか?」
 「うん? そういえばそろそろか」


 詩音はそういうと顔をうつむかせて地面を見る。
 すると、そこから銃弾が飛び上がってくるのが見えた。ルナの能力は銃弾を物体内部に潜行させて、自分の好きなタイミングで好きな場所から出すことができるのだ。自分の真下から襲い掛かツいくつもの銃弾を見て、詩音は少し焦る。
 思ったより距離が開いていなかった。


 このままでは回避は難しい。
 そう判断した詩音は両手から高速で氷を発生させる、それは一気に自分の周囲を囲うように広がっていく。それは銃弾が命中する直前に氷の球体となり、宙に浮かぶ。まるで小さな星のようだった。
 銃弾は全てその氷の壁に命中し、そこで完全に動きが止まる。
 バキッ、バキッという何かがめり込む音が聞こえてくるが、ここまで来ないという自信があるので慌てない。
 ルナの能力は銃弾を最初に命中した物体内部に潜行させるというものだった。どこから来るか分からない銃弾というのが売りなのだが、弱点として二回目に命中した物体には潜行できない。
 それが分かっているので、詩音は外に出ようとする。


 「…………」


 その直前、少し嫌な予感がした。