詩音も何とか態勢を立て直すと、すぐに攻撃を仕掛けようとするがその前にルナは間合いから離れる。その間ずっとサンはルナの背中から生えたままの格好で、詩音の方をじっと見ていた。
 その姿はまさに異形の怪物だった。
 ルナは動きを止め、もう一度銃口を向けると今日一番の笑顔で言った。


 「ありがとな、おかげで助かったぜ」
 「気にしないでよ……私たち……二人で、一人じゃん」
 「そうだったな」


 詩音は一度ハンマーを消すと、両手に魔方陣を形成する。
 そして悔しげな顔で叫んだ。


 「畜生!! 忘れてた!!」
 サンは他人を自分の体内に隠し、入れ替えることができる能力を持っている。ルナはその能力でサンの内部で居候しているのだ。二重人格などという物ではなく、二人は完全に他人なのだ。
 二人は詩音と相対する。一種の均衡状態に入る、お互いどうやって動くのか探りあっているところなのだ。
 そこで、サンが提案する。


 「ね、あ……あのー、詩音……さん?」
 「なんだよ」
 「こ、ここは引き分けにしませんか?」
 「あぁん!? 何言ってんだ。てめぇ!!」
 「そうだぜ、サン。俺も反対だ」
 「………見てよ……ルナ」
 「うん?」


 空を指さすサン
 つられて二人が見上げると、大量の翼の少女が向かって来るのが見えた。どうやら援軍らしい。ルナはにやりと笑うが、それとは対照的に悔しげな顔をする。非常にまずい状況だった。
 サンとルナだけが相手だったらまだ何とかなるが、ここに翼の少女の大群もやってくるとなると難しい。ただ単に面倒ということもある。
 ここはサンの言う通りにした方がいいのかもしれない。
 そう判断し、詩音は頷くと言った。


 「分かった。ここは引くわ」
 「……あ、ありがとう!!」
 「チッ!! しょうがねぇな」
 「じゃ、じゃ、じゃあ、私が表に出るね」


 そう言って、ルナの姿が変化するとサンに戻る。
 詩音はそれを見届ける前に背を向けると、さっきまで戦っていたところに向かって飛んで行く。約束通り、サンはその後を追いかけることなく、ジッと滞空していた。彼女はとりあえず身の安全が確保できたことを喜んでいた。
 体内ではルナが文句を言っているが、それはしょうがないとあきらめることにした。


 「……いつまで……続くのかな……」
 『あぁ!? なんか言った!!??』
 「う、ううん……何でもないよ。帰ろ」
 『チッ……しょうがねぇな』


 その言葉を最後に、二人も宙を舞うと翼の少女達の方へ向かって行った。