朱鷺は少しも力を抜くことなく七節棍を突き出し続ける、それを抑えるので精一杯なのか、一歩も動くことができないでいる。
 均衡状態に陥る二人
 その隙に、椎名は朱鷺に話しかけた。


 「あんた」
 「なんだ」
 「どうして戦うんだ?」
 「ふむ。どういう意味かな?」


 質問の意図がよく分からず、首を傾げる朱鷺
 椎名はそんな朱鷺のことなど一切気にせず言葉を続ける。


 「知ってるでしょ!? 魔法少女は不幸だってこと!!!」
 「知ってるが?」
 「私たちを不幸にしたのは何だと思う?」
 「教えてもらおうか」
 「世界だ!!」


 顔を真っ赤にし、思いっきり歪ませるとそう叫んだ。もし視線で射殺せるなら、既に朱鷺は無様に死んでいるだろう。そう思わせるぐらい椎名は鬼気迫った顔をして、必死に言葉を吐きだし続ける。


 「私たちを不幸にしたのは、この世界だ!!」
 「ほぉ」
 「私が戦う理由は復讐だ!!! 不幸にした世界に対する!! 報復だ!!」
 「ご立派だな」
 「そういうあんたはどうして戦っているんだ!!」
 「ふむ…………」


 朱鷺はそう呟くと、七節棍を跳ね上げていともたやすくダガーを弾き飛した。その勢いに負けた椎名はバランスを崩すと、一歩後ろに後退ってしまう。その姿は完全に隙だらけだった。
 それだけではなく、朱鷺は式神を操ると椎名の体をグルグルにまいて動きを制限する。体の八割がミイラのようになってしまい、ピクリとも動けなくなる、完全に拘束されてしまった。
 その後、朱鷺は椎名の目の前に棍の先を向けると言い放った。


 「私の戦う理由か…………」
 「教えなさいよ」
 「今は亡き、親友のために」
 「……え?」


 予想外の答えに驚く。
 次の瞬間、朱鷺は七節棍を振るうと椎名の胸を一突きした、その一撃は正確に心臓を貫いており苦しむことなく一瞬の間に絶命した。体から力が抜けて、ぐらりと椎名の体が倒れ込む。だがその前に式神が死体を包み込むと、そのまま地面に横たえた。
 これはせめてもの慈悲だった。
 朱鷺は血で真っ赤に濡れた棍を振るって綺麗にする。
 その後、顔を上げると小さな声で呟いた。


 「優希……」
 「終わったかしら? 朱鷺」
 「ん、終わったぞ」
 「なら帰りましょう。詩音も戻って来たわ」
 「そうか」


 顔を上げてみると、確かに詩音の姿が目に飛び込んできた。おそらく目的を達成したのだろう、二人はのんびりと待つことにした。
 このご時世でも、この三人は健在だった。