マリアは自分に失望した。
 なぜなら、思っていたよりも罪悪感を抱かなかったからだ。なんというか、空虚なものだった。敵が何かよく分かっていないから、という理由もあるがそれ以上に自分には何か足りていないような気がした。
 気が付くと、脇腹の傷が癒えている。
 どういうことなのかと疑問に思うが、この間街中に飛ばされた時も似たようなことがあったことを思いだした。おそらくだが、傷の修復能力も備わっているのだろう。
 マリアは何とか立ち上がると自分の両手をじっと見てみる。
 これが今、猛威を振るったのだ。


 「…………」


 何とも言えない気分のまま立ち尽くす。
 その間にもクライシスは話を続ける。


 「いいかい、君には三つの能力を持っている」
 「…………三つも?」
 「その通りさ。一つは魔力吸収、他の二つは君が自分自身で見つけるんだ。と言っても、見当ぐらいはついているんじゃないかな?」


 少し顔をうつむかせて考えてみる。
 確かにクライシスの言う通り見当はついていた、目覚めてからすぐ、ベッドの上から柳葉町にまで飛んで行ってしまった。
 今思うと、あれはまだ完全に制御しきれていない能力が感情の高鳴りに誘発されて暴発したのだろう。


 「……瞬間移動?」
 「正解!!」


 当たった。
 ちょっと嬉しい。
 二人がそんなことをしている間にユウキは翼の少女と戦いを繰り広げていた。
 司令官役の少女は普通の翼の少女と比べて強力である。具体的に言うと、命令に従うしか能のない奴と比べると多少自分で考えて動くことができる。それにそこまで強力という訳ではないが能力っぽいものも扱うことができる。
 ユウキは待つのが嫌なタイプだった。
 先に仕掛けることにすると地面を蹴って飛び出す。
 そして右手を振るうとテレキネシスを放射する。
 翼の少女は刀をクロスさせてそれを受けた。ガインッという音が鳴り、のけぞるが、重力干渉波を一気に放ち無理矢理体を起こした。ユウキはある程度接近することはできたが、思いのほか立ち直りが早かった。


 「クッ!!」


 もう一度テレキネシスを放ってみる。
 しかしそれに対抗するかの如く翼の少女も自身の能力を発動する。すると、刀身部分から強力な衝撃波が発射され、テレキネシスと相殺する。ドンッと突風が周囲に吹き渡る。木々を揺らし、木の葉が舞い散る。
 その中を翼の少女が進むとユウキに向かって刀を振るう。
 それを見たユウキは腕を向けるとサイコキネシスでその腕の動きを止める。
 だがその程度でへこたれる少女ではない、左手の刀を横に振るうとそれでユウキの腹部を切り裂こうとする。


 「舐めるなよ!!」
 「…………」


 ユウキはテレポート能力を利用してその場から移動すると、少女の後ろに回り込む。
 刀が空振りし、拍子抜けしてしまう少女。背後に人がいる気配がしたので、首をくるりと回すと後ろを見てみる。
 すると腕を振るい、強力なサイコキネシスで少女の動きを止める。
 周囲に張ったシールドで体が直に掴まれているわけではない、そのためすぐに危害が加えられるわけではないが、動けないことに変わりはない。無理矢理にもサイコキネシスを弾き飛ばそうとする。
 だが、そう簡単にいくわけがない。
 ユウキはしっかりと狙いをつけると、テレキネシスで爆散させる。


 「死ねぇ!!」
 「……………ッ!?」


 バチャンという水っぽい音がして少女の体が四散しはじけ飛んだ。体の破片、内臓は一瞬の間に消えていく。
 ユウキはにやりと勝利を笑みを浮かべる。
 楽勝だった。