三人は宙を切って飛ぶと、指定された場所に向かった。
 地図を表示したタブレットを片手に持った朱鷺が先行し、その後を二人が追っていく。詩音とマリアはその間に何の意味もない会話を続けた。と言っても、主に詩音が喋りマリアが相槌を打つだけである。
 それに何を言っているのかよく分からないことが多々ある。それでも楽しいものだった。
 ふと、マリアは一つ気になっていたことがあったので、詩音にそれを聞くことにすると少し近づいて小声で尋ねる。


 「あの、一ついいですか?」
 「うん? 改まってなんだよ」
 「あの朱鷺さんって……どうして片目を失ってしまったんです?」
 「あぁ…………あれの事……」


 突然、詩音の顔が暗くなり、伏せられる。
 そして表情にピッタリと合った声で話し始めた。


 「半年ぐらい前か? 朱鷺と、ユウキ。他に二人の魔法少女が偶然にも原初の魔法少女――アリスと遭遇してしまったんだ」
 「え…………」
 「その際に負った怪我なんだと」
 「でも、治せないんですか? 私たちって傷が修復できるんじゃ……」
 「治せるぞ。でも治さないんだ。彼女は」
 「それまたどうして」
 「その時の戦いで朱鷺の唯一の親友が、自分の命を犠牲にしてアリスから彼女たちを守ったのさ」
 「え……」
 「優希って名前の魔法少女だ。強かったんだがな……」


 思いもよらない話にマリアの心は少なからず揺さぶられていた。少し顔を上げると、朱鷺の背中をじっと見る。そこからは、はっきりと見て取れるぐらいの哀愁が漂っているのが分かった。それが彼女の背負う物なのだろう。
 彼女はあまりいい人には見えなかったが、それは撤回しなくてはいけないようだった。
 少なくとも悪い人ではない。
 そんなことを考えている間にも詩音は言葉を続ける。


 「それ以来、彼女は失った目をそのままにしているんだ」
 「……どうして……?」
 「戒め、だそうだ」
 「…………」


 自分も悲しい気持ちになってしまう。
 二人の会話はそこでぴたりと止まってしまった。