「何なんすかね、あいつら」


 トラックを運転していた若い男が助手席に座っている年配の男に向かってそう話しかける。彼はつい先日死んだ運転役の男に代わって派遣されてきた兵士だった。普段は補給節意を運んでいるので、こんな第一線に来るのは初めての経験だった。
 そのため魔法少女をしっかりと見るのも今日が初めてなのだ。
 小隊長は渋い顔をしたまま返事を返す。


 「何が、何なんだ?」
 「何様って話ですよ。年端も行かない少女がどうしてあんな偉そうなんすか?」
 「彼女たちは特別だからな」
 「それでもっすよ」


 男はそういうと腹立たし気な顔をしたままこう言い放った。


 「あいつらだって自分たちの敵と同じ存在なのでしょう。信じられるわけないっすよ」
 「……ま、言いたいことは分かるな」


 確かにそうだった。
 彼女たちは人知を超えた存在で、いつ敵対することになるかもわからない。それに今世界を滅ぼそうとしているのは、間違いなく同類である魔法少女達なのだ。信頼などできるはずがなかった。
 しかし、小隊長の考えは少し違った。


 「まぁ、お前の言うことも一理あるな」
 「そうっすよね」
 「だがな、彼女たちのおかげ勝利を得ることができていることも事実なんだよ」
 「まぁ、こっちの装備じゃせいぜい翼を殺せる程度ですものね」
 「俺たちは、彼女たちに頼るしかないんだよ」
 「……悲しいっすね」
 「そうだな」


 この後二人はジッと黙り込んだままになった。


 十分間ほどは特に何も起きず時間が過ぎていった。
 その間、ジッと周囲に気を配り続ける。わずかな物音にも過敏に反応してしまう。近くにハエが通りかかっただけで、ビクンッと体が跳ね上がる。それとは対照的に、詩音はあくび交じりに飛んでいた。
 どうしてそんな余裕でいられるのか、マリアは詩音の考えがよく分からなかった。
 ただひたすらに飛んでいた朱鷺は、ジッと前だけを睨み続けている。
 だが、その表情が一変した。仏頂面から険しい顔になるといきなり大きな声を上げた。


 「詩音!!」
 「おっ……思ったより早かったな」


 そう呟くといきなり戦闘態勢をとる詩音、突然速度を落とすと地面に降り立って、両手を地面につける。朱鷺は腕をサッと上げると一度トラックの運転を止めさせた。その一連の動作を見て、マリアは察した。
 敵が来たのだ。
 ゾッとする、冷たい感覚が背中を駆け抜けていく。まるで服の襟から氷を入れられたかのよう。