少し呆然としていると、当然大声が上がった。


 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
 「後ろッ!?」


 急いで振り返って見る。
 すると残った一体の翼の少女がトラックのガラスに張り付いている姿が見えた、どうやら悲鳴は若い男の物のようだった。マリアはハッと気が付いた。そういえば翼の少女は三人襲ってきていた。
 残った一人のことを忘れていた。
 やばい


 「やばいっ!!」


 声に出ていた。
 マリアは急いで振り返ると地面蹴って翼の少女に向かって行く。
 若い兵士は驚いたような顔をして、隣に座っていた小隊長の方を見る。一瞬の隙を疲れ、翼の少女が接近すると剣を振るってガラス越しに攻撃を仕掛けて来たのだ。狭い車内では逃げることができず、小隊長は貫き殺されてしまった。
 男は咄嗟にハンドルを手放し、しゃがんだからいいものの、小隊長は手元の銃を拾い上げようとしたせいで反応が遅れてしまった。
 男は運がよかった。
 しゃがんだおかげで小隊長が刺される様を見ずに済んだ。


 「うぐぅ……」


 心臓を一突きされた。
 残念なことにすぐに死ななかった。口元から血を流し、背もたれに寄りかかる。傷跡から血が大量に流れていき、ゆっくりと車内を汚していく。叫びだしたいところだったが、うまいこと声が出ない。
 最後に顔を男の方に向けるとこう言い放った。


 「……銃を持って逃げろ!!」
 「は、はい!!」


 男は特に何も考えず、レーザー銃を手に取るとドアを蹴り開けて無様な格好で転がり出る。
 そしてすぐに構えるといまだガラスに張り付いている翼の少女に照準を合わせる。


 「てめぇ!!」


 安全装置を外し、狙いをつける。そして冷たい鉄の引き金を何の躊躇もなく引いた。するとビュッという音が響き、赤い色をした光線が宙を切る。デルタに搭載されているレーザーと同じ種類の物だ。
 これは対翼の少女用に開発されたもので、魔力で生成されているレーザーなのだ。マガジンには銃弾ではなく魔力が充填されており、それを利用している新兵器なのだ。既存の兵器では歯が立たないので達也が開発したのだ。
 男の放ったレーザーが翼の少女に命中し、そのシールドを破り顔面に命中する。
 バチュンッという音がして、陶器の仮面が貫かれ、翼の少女の体がのけぞって地面に倒れる。


 「やったぜ!!」


 男は銃を下ろし、歓喜の顔で少女の方を見る。
 だが、その顔は一瞬のうちに曇ることになった。
 翼の少女はゆっくりと体を起こした。顔の半分がなくなって、血まみれになっていたがどういう訳かピンピンとしていた。ダメージを受けていないわけではないのか、体はフラフラとしていた。
 それでも、ゆっくりと顔を上げると仮面越しに睨み付ける。


 「ヒィッ!!」


 まるでゾンビのようなその姿に恐怖を覚える。銃を手放して、地面にへたり込む。
 完全に戦意を喪失していた、翼の少女は地面を蹴って飛び出すと男を殺そうとする。


 「――ッ!!」


 このままではいけない。