マリアはそう思い、瞬間移動を発動すると翼の少女の真後ろまで移動する。そして、左腕を振るうと翼の少女の魔力を吸収しようとする。マリアの攻撃は翼の少女が刀を振り下ろす前に成功した。
 魔力の腕が掴み込み、吸収する。
 ところがそれに気が付いた少女は自分が死ぬ前に、最後のあがきとでも言わんばかりに刀を投げつけたのだ。それは見事に男に命中、まるで元々から生えていたかのように自然な状態で突き刺さる。


 「え?」


 何が起きたのかうまく理解できなかった。
 傷口から血が流れ出る。
 制服が真っ赤に染まっていく。
 意識が遠のき、目の前が真っ暗になる。体から力が抜けて、背中から地面に倒れていく。それと同じく翼の少女の体も文字通り、崩れ落ちていく。二人の違いと言えば、跡形もなくなるかそうではないかぐらいだった。
 マリアは消えゆく少女越しに、男の死体をジッと見ることとなった。


 「…………」


 ピクンッピクンッと痙攣する。
 すでに命は失われており、男は人間ではなくただの物と化していた。
 マリアはそれを見て、言いようも知れぬ恐怖感を覚えた。



 一方の詩音と朱鷺は既に戦いを終えていた。
 ドロドロと溶けてコアだけを残して消えゆく絶望少女を、まるで汚物でも見るような目で見送っていく。二人とも、ボーッと立っているだけだが、どこから見ても隙が無い。いつでも戦う音ができるようにしていた。
 二人は冷たい声で話し合う。


 「弱かったな、朱鷺」
 「うむ。あっちに戦力を裂いている様子なのでしょうがないな」
 「ってマリアのこと忘れてたぜ!!」
 「ここは任せろ、私はここにいる」
 「頼んだッ!!」


 そう言って飛び上がる。
 詩音はまっすぐトラックのある場所へ向かって行く。実は、車両は全て止まっていた、その理由はもちろん小隊長と男が殺されたからである。残った人たち全員は車から降りて、遺体の処理をしていた。
 車から降ろし、顔に白い布をかける。そしてあらかじめ用意しておいた布袋に仕舞い込む。
 そして、一度手を合わせた後でトラックの荷台に積み込んだ。
 マリアはただ一人、ジッとその作業を見守っていた。そこから表情を伺うことはできず、空虚なものだった。
 詩音はマリアの隣に立つと優しい声で話しかけた。


 「大丈夫か?」
 「………………」
 「うん? どうした……?」
 「…………詩音さん…………」
 「どうした? マリア」


 マリアは半分笑ったような、泣いたような顔で詩音の方を向く。悲壮感にあふれるその顔は非常に惨めなもので、どうにも見ていられなかった。それでも詩音はしっかりと目を合わせ。真摯に向き合う。
 今にも消えそうな声でマリアはこう尋ねた。



 「……人って……死んだらどこに行くんです?」


 「……あぁ、そんな事?」


 意外と大した問題ではなかった。
 詩音はあっけらかんとした顔で、親指を地面に向けるとこう言い放った。







 「地獄じゃね?」