少女は身の危険を察して後ろに飛ぶと、フレイヤから距離を取った。
 本当は自分の手でとどめを刺したかったが、しょうがない。


 「これでも喰らえー」


 少女はそう言って、腕を振るうと思いっきり銛を投げつけた。ヒュゥッという音がして、フレイヤの顔面向かって行く。いまだ世界が揺れてまともに反応ができずにいるフレイヤに、かわす術はないように思えた。
 しかしそこは史上最強の魔法少女
 さっき音で何かが飛んでくるのを察すると、座っている自分の体を覆い貸せるレベルの鉄の壁を何重にも生み出す。それで何とか攻撃をしのぐことにした。
 ガンッという音がして、銛が命中する。それとほとんど同時にフレイヤの目の前に鋭い先が顔をのぞかせた。あと一枚でも少なかったら、フレイヤの命はなかっただろう。間一髪とはこのことだ。
 しかし、油断できない。


 「はぁ……早く、早く……」


 適応しなければ
 段々慣れてきた。
 吐き気もだいぶ治まって来たし、生まれたての仔馬のようだが立てるようにはなった。あと少しもう少しすれば完全に戦えるようになるはずだった。と言っても、敵がそれまで待つはずなどなかった。
 少女は移動して、壁の前に立つとそこに突き刺さっている銛を掴む。
 そして、力任せに押し込んだ。


 「――ッ!?」


 フレイヤはその不穏な動きを察知し、後ろに飛ぶ。結果、鋭い切っ先は宙を切るのみとなってしまった。
 敵少女もそれを察し、今度は逆に銛を引っ張ると鉄の壁から引き抜いた。
 二人は鉄壁越しに言葉を交わす。


 「やるわね」
 「あなたもねー」
 「……私の事、知らないの?」
 「私バカだからー」


 どうやらこの一年で生まれた魔法少女らしい。
 なら、いくらでも隙をつくことができる。
 フレイヤはニッと笑うと、鉄壁を消し去る。すると、光の粒が舞い散ると同時に少女の姿が目に入る。どうやら彼女はこちらが何をしたのか分かっていないらしい、少しだけ不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
 位置は把握した。
 魔力を大幅に使ってしまうが、これで勝てる。