フレイヤはまるで十字架にかけられた人間のように両手をサッと伸ばす。
 すると、その少女を囲むように大量のアサルトライフルがドーム状に生み出された。キラキラと舞う魔力が霞む生臭い鉄の香り。少女は、何が起きたのか理解できず首を回し、困惑した顔で周囲を見る。
 荒業だが、これで逃げ場はない。


 「死になさい」


 せめてもの慈悲に、苦しまず殺すことにする。
 銃でできた半球の中から壮絶な銃声と、悲痛な叫びが響いた。


 ガガガガガガガガガガガガガガガガガガという激しい音と、「ギャアアアアアアアア!!!!!」という甲高い声の不協和音


 だがやがて、それらは収まる。
 まずは悲鳴、次に銃声
 フレイヤは平衡感覚が戻ると同時に、彼女が死んだことに気が付いた。


 「あなた、強かったわよ」


 背を向けて、全ての銃を消す。
 もしそうしていなかったら、彼女の目には全身をズタズタにされた哀れな少女の死体が飛び込んできただろう。もはや、それは人間のものではないようだった。まだぼろ雑巾の方が美しく見える。
 真っ赤な肉のかけらがバラバラになっている。
 久しぶりに会った強敵に、フレイヤは満足だった。
 そこで、彼女は思い出した。


 「そういえば」


 もう一人魔法少女が潜んでいるはずだった。戦闘に介入してこないことと、久しぶりの苦戦にすっかり頭から抜け落ちていた。さっきまでその少女がいたはずの場所に目を向けてみる。
 しかし、そこには誰もいなかった


 「……まぁ、いいわ」


 どういうことかよく分からないが、とりあえず忘れることにした。
 あとでデルタの脳から記録を取り出して、確認でもしてみればいい。
 フレイヤはそう判断し、デルタのいるはずの場所へと戻っていった。