苦悩 その①




 死ぬとどこに行くのか
 マリアには想像できなかった。
 今まで自分は何人かの翼の少女をこの手で殺してきたが、その時は何も感じなかった。否、自分の事ばかりを考えて、殺された側のことをこれっぽちも頭になかった。だが、今日ばかりは違った。
 目の前で二人の人間が死んだ。
 それも自分のせいで
 本当に酷い罪悪感が全身を包み込んでいる。だが、それだけではない。
 それよりも、はるかに大きく、重たい絶望がマリアにひっそりと寄り添っていた。


 死んだらどこに行く
 死んだらどうなる
 そもそも、死とは何か


 死
 死
 死


 人間が逃れることのできない絶対的な存在でありながら、まだ何も理解することのできていない未知の領域。一度そこに足を踏み入れた者は二度と戻ってくること叶わない世界、永遠の謎にいて最大の恐怖
 有史以来、死を乗り越えた者は殆どいない。
 不死身、不老不死と言った物は死を乗り越えたのではなく、それから逃げ出したのだ。ただの敗残兵、現実を直視できない弱者である。また、死なないということがどういうことなのか理解できていない人間でもある。
 死がないということは永遠を生きるということである。
 それは、あまりにも大きすぎる代償だ。


 しかしながら、死を乗り越えた存在が全くいないわけではない。
 その代表の一人がイエス・キリストだ。
 彼は一度死に、蘇った。つまり神になった。
 死の世界から戻って来たのだ。


 彼がその先で一体何を見たのか
 それを知る者は誰もいない。


 マリアはふと思い出した。


 原初の魔法少女アリスは、一度死んでから生まれ変わったのだという。


 つまり彼女は


 神になったのではないか