ベッドに寝ころび、聖書を片手にそんな事ばかり考えている。
 つまりは現実逃避である。
 あの戦いから丸一日がたっていた。あの日以来マリアは何となく憂鬱な気分になっていた、気分転換日本でも読もうと思い、持って来てもらったのだがどういう訳か聖書と村上春樹の本しかなかった。
 特にほかにすることも思い浮かばなかったので、とりあえず読んでみたのだが気分転換にならなかった。
 聖書は訳が分からず、村上春樹の本は考えさせられる。純文学というのはマリアの性に合っていないらしい、呼んでいる途中で頭が痛くなってきた。

 「……………」

 死
 気を抜くとこのことばかり考えている。
 人はなぜ死ぬ
 マリアは達也にこの質問を尋ねてみた。


 「なぜ死ぬか」
 「教えてください」
 「生命エネルギーが尽きるからだ」
 「そういう意味じゃなくて」
 「……それ以外何の意味がある」

 これだけだった。
 マリアはそれで分かった。
 達也にとって、世界は理屈なのだ。生命エネルギーがあるから生きて、尽きると死ぬ。敵がいるから戦って、目的のためには手段を必要。達也が死ぬのが怖くないわけでないことを、理解した。
 彼は死を理解していないのだ。
 でも、それが正しい人の考えなのだろう。
 マリアは何となく分かった。

 「…………」


 死
 自分もいつか死ぬ
 誰でも死ぬ

 そして
 自分は殺しもする。


 「―――ッ!!!」


 何かたまらないものを感じてマリアは聖書を掴むと壁に向かって投げつけた。
 バシンッという軽い音が自分のやっていることが何ら意味のない行為であることを示していた、その事実が余計にマリアのことを苛立たせる。自分がどうすればいいのか分からない不安感がそれを助長する。
 自分は誰?
 マリアはそれでも戦うしかなかった。
 ユウキが顔をのぞかせる。ここ最近、何となくマリアにかける言葉が見つからず、ずっと放置していたが、そういう訳にも行かない。今日は達也から招集命令が下ったのだ。すで魔法少女たちは集っている。
 自分たちが行かなくては話にならない。
 非情だが、これが仕事だ。


 「マリア……行くぞ」
 「ん」


 思いの外素直だった。
 マリアはフラフラとベッドから降りると、ゆっくりとユウキのいるところへ向かって行く。


 「行こうか」
 「ん……ごめん。遅くなった」
 二人は並んで廊下を進んでいった。