とりあえずユウキの言うことに従うことにした。
 五人は一斉に煙の中へと突っ込んで行った。視界がまともに利かないが、他の人は迷うことなく突っ込んでいく。ユウキはマリアのために速度を少し落として、案内してくれているようだった。
 ありがたいことだった。
 だが、それでも煙を抜けるまで一分もかからなかった。
 黒い尾を引きながら全員が飛び出す。
 すると大量の敵が目の前に迫ってきているのが分かった。
 一番近くてもう目と鼻の先まで来ていた。
 ユウキはサッと腕を上げると、自分の体を中心としてサイコキネシスを放つ。すると、ドンッという音がして翼の少女たちが吹き飛んだ。腕や翼がちぎれて、ブシャッという音をたてて血を吐き出す。
 それでやられたのか、重力に引かれて落ちていく。
 詩音は両手から何度も冷凍光線を放ち、絶望少女や翼の少女を凍らせていく。
 朱鷺は朱鷺で一歩先を行くと、式神が舞う中で七節棍を振り回している。鎖を限界まで伸ばし、鞭のようにして翼の少女の体をズタズタにしていく。おまけに、式神のせいで連携もガタガタになっている。
 フレイヤは両手にAK―47を携えると、後ろに控えているマリアにちらりと視線を向けて呟いた。


 「頑張りなさいよ」
 「フレイヤさん」
 「何?」
 「ありがとうございます」
 「フフフフフ、礼を言うのは勝ってからね」
 「はい!!」


 自分のためにこの力を振るう。意味など考える必要はない。
 これならしっかりと戦えるような気がした。
 フレイヤはマリアが小さく頷くのを見てから、先に進んでいった。脇に銃を構えて、特に狙いをつけず引き金を引き、銃弾を吐き出し続ける。また、周囲にはRPG―7を生成してロケット弾を滅多撃ちにする。
 独特な形状をしたそれらは、次から次へと命中しいくつもの爆発を起こしていく。
 小さな黒い雲がいくつも発生する。
 マリアは左手に剣を持ち、右手に力を込める。いつでも能力を顕現できるようにしている。
 ふと気が付くと、目の前にまで翼の少女が来ている。間の距離は2mもない。あっという間に射程内に入るだろう。
 どうやらフレイヤ達の攻撃を抜けて来たらしい。右腕をヒュッと突き出すと、刀でマリアを突き殺そうとしてくる。


 「クッ!!」


 それを身をよじらせてかわすと、右腕から見えない腕を伸ばし、翼の少女に触れる。
 と、同時にボッという音がして粒子化して消える。
 その瞬間、また殺してしまったという思いがこみ上げてくる。だが必死にそれから目を逸らす。たぶんしっかりと受け止めたら崩れ落ちてしまう、弱い人間だと後ろ指さされても仕方ない。
 マリアは心の中で言い訳をする。


 「マリア!! 右から来てるよ!!」
 「――ッ!!!」


 クライシスの声が響く。マリアは急いでそちらの方を向くと、右腕の剣を振るう。するとそこまで来ていた翼の少女の体を切り裂くことに成功した。スパッと心地よく腹部に真っ直ぐ鋭い傷が付く。
 思いの外、深い傷だったようで、そこから内臓をこぼしながら高度を落としていく。


 「私は……悪くない」


 言葉にしてそう呟く。
 クライシスはフレイヤとマリアの話を聞いていたので、何も言わない。
 これは自分のためだ。
 だから
 しょうがない
 しょうがないのだ。
 何度も自分にそう言い聞かして、マリアは戦場へと降り立っていく。