するとそこに人がいた。
 椅子に座りコクリコクリと頭を上下に揺らしている、どうやら居眠りをしているようだった。起こすのも悪いなと思ったので、そのままそっとしておくことにする。だが、そうなると何をしていいのか分からない。
 少女は途方に暮れてベッドの上に体育座りする。なるべく自分の体を小さく、外敵から身を守るようにする。
 そして、考え込む。


 「私は誰?」


 だが答えが出るはずもない。
 この世に自分はたった一人でここにいる。

 孤独だ。

 少女は非常に心細くなってしまう。心の芯が凍り付くような寒気に襲われ、プツプツと鳥肌が立ってくる。両腕で自分を抱きかかえると、それで何とか堪えようと試みる。だが焼け石に水だった。
 何の意味もない。

 怖い

 右も左も分からないこの世界で、自分は自分の事すらまともに理解できていない。

 酷い話だ。


 「誰か……助けて」

 「なら、俺が助けてやろうか?」

 「――ッ!?」


 いきなり声をかけられる。
 どうやら考えている間に誰かがやってきて、カーテンを開けると少女に向かって話しかけていた。いきなりのことに驚く少女だが、男の姿を見た瞬間に言いようも知れぬ恐怖が襲い掛かってくることに気が付いた。
 その男は白衣を纏って、冷たい視線を向けてきていた。まるで物か何かを見るような目で、自分の事を見下してきている。その視線に射抜かれてしまったかのように、少女は指先一つ動かせなくなる。
 だが、視線はある一点にのみ集中していた。
 それは男の右腕だった。肩までまくられた白衣から、おおよそ人間の物と思えない姿をしたものが覗いていた。光を反射して銀色に光り輝くその腕は機械でできていた。だが、お世辞にも美しいものではなかった。
 何となく無機質な恐ろしさを感じさせた。
 少女がただただ絶句していると、男はあざ笑うかのような表情を見せてもう一度言った。


 「助けて……やろうか?」
 「ヒッ!?」


 引きついた声を上げ、体勢を崩すと後ろに下がってしまう。
 何となく
 この男から逃げたいという欲求に駆られた。怖い、生まれて初めて抱くその感情に戸惑っていた。だが、ここは狭いベッドの上、どこにも逃げ場はなかった。それだけではない。少女にとってここ以外の世界など全く持って知らなかった。
 それなのにどうしろというのか

 殺される
 なぜかそう感じてしまう。
 少女のその考えを読み取りでもしたのか、男はさらに嫌な笑みを浮かべて見つめてくる。
 
 嫌だ
 死にたくない
 そう思った次の瞬間
 少女の体に異変が起きた。