警戒して一旦距離を取った朱鷺はもう一度式神を放つ。
 大量の紙が束になって襲い掛かるも、やはりあっという間に振り払われる。


 「朱鷺さんさん、がんばれー」
 「――ッ!! 馬鹿にして!!」


 そう叫び、ギリギリまで接近すると七節棍の鎖を伸ばしてそれを振るう。彼岸の刀を弾き飛ばそうとしたのだ。その目論見は半分だけうまくいった。ガキンッという鈍い音が響いたが、それだけだった。
 刀は飛ぶことなく、しっかりと彼女の手に握られている。


 「うーん、惜しい!!」
 「茶化すな!!」


 しびれを切らした朱鷺は、棍を元に戻し、槍のように持つと首元を狙って突き出す。彼岸も同じように刀で突きを繰り出して、七節棍を止める。
 すると、命中したその場所から斬撃が走ると棍を伝って時に襲い掛かる。


 「――ッ!!」
 このままでは自分が切り裂かれてしまうので、棍を手放すと一気に懐まで飛び込んで、右足を振るうと思いっきり蹴りを決める。グニュッという感触と共に彼岸の顔が醜く歪む。見事に決まった。
 体をくの字に折った彼岸を見て、朱鷺は足を戻すと同時に腕を伸ばし彼岸の頭を掴む。
 そして頭を引き寄せると、同時に思いっきり膝を開けると顔面に叩きつける。
 ゴギャッという嫌な音がして、顔が潰される彼岸。その痛みに負けてうっかり刀を手放してしまう。 


 「――ッ!!」
 「忘れたのか? 私の本職はこっちだぞ」


 次に手を放し、一旦彼岸の体を自由にすると、一瞬のうちに棍を一本生み出す。それをしっかりと右手に握ると、全力で彼岸の腹部に突き刺した。それはほんの少しの抵抗があっただけであっさりとめり込んでいく。
 そして、あっという間に左わき腹を貫通した。
 彼岸は顔を真っ青にし、口を開くと悲鳴を上げた。


 「あああああああああああああ!!!」
 「死ねぇっ!!」


 最後に空中で一回転すると見事な回し蹴りを顔面に叩きこんだ。
 見事なまでの追い打ちだった。
 彼岸は顔面についた傷から盛大に血を吹き出しながら吹き飛ばされていく。意識が飛んでいるわけではないようだが、少し力が抜けているらしい。枝のように生えた七節棍に手を当てながら落ちていく。
 隙だらけだ。
 朱鷺は腕をクロスさせ、大量の式神を彼岸の体にまとわせていく。
 すぐそれに気づいたものの、手遅れだった。
 彼女はまるでミイラのように紙に包まれて動きを制限されていく。刀を何とか顕現して振り払おうとするが、間に合わなかった。そもそもすでに刀を握ることさえままならない状態に陥っていた。
 朱鷺は冷たい目で彼女を見下ろして小さな声で呟いた。


 「終わりだ」


 そう宣告する。
 棍を生み出して、その先を向ける。
 最後に一言だけ呟いた。


 「今生の別れだ。お前のことは嫌いじゃなかったよ」


 次の瞬間
 腕を振るい、まるで矢のように棍を投げつけた。
 彼岸にそれを躱す術はなかった。