デルタは「チッ」と舌を撃ちつつも、腕をブンッと乱暴に動かして糸を抜こうとする。
 しかし糸はまるで意思を持っているかのようにグルグルと動くと、デルタの腕を拘束してくる。これでは簡単に逃れることができない。


 「捕まえたのです。逃がさないのですよ」


 薔薇はそういうと、まるで魚のかかった網を上げる時のように腕を動かすとデルタを自分の方に引き寄せようとしてくる。
 グイッとものすごい力で引っ張られる。
 何とかブースターを全力で吹かして逃げようとする。
 体を使った全力の綱引きだが、はっきりしたことを言うとデルタに勝ち目はなかった。そもそも魔力で織りなして糸がそう簡単にちぎれるはずがない。


 「クッ!!」
 「こっち来てくださいなのです」


 数十秒間拮抗していたが時間の無駄だと悟るとデルタは最終手段をとることにした。
 突然、何かが外れる軽い音がする。それと同時にデルタの左関節部分が外れると、その部分だけが薔薇に向かって飛んで行く。
 それを反射的にキャッチすると、驚いた声を上げる。


 「何なのですこれ!! 仕掛け多すぎですです」
 「うるさイッ!! くらエッ!!」


 そう叫ぶと同時に左胸の魔力砲が火を噴いた。
 カッと一際激しい光を放つと、大量の魔力が砲弾となって放射され、薔薇の全身を包み込む。あっという間だった。デルタの腕を見て目を丸くしていた彼女は避けることができなかった。
 麗装と肉体が焼けていく。シールドなんて何一つとして役に立たなかった。
 薔薇は粒子一つ残すことなく、全身が焼けていく。
 魔力砲が通過し、宙に消えていくまで十秒もかからなかった。
 デルタは背中から大量に蒸気を吐き出して、体内を冷却していく。魔力砲は強力は兵器なのだが、代償が大きすぎるのだ。まず有効射程距離が短く、接近戦でしか使えない。おまけに一対多の戦闘では真価を発揮できないのだ。
 デルタは何も無くなった空中を見つめる。もう欠片も残っていない。


 「……まだ敵はいル」


 左腕を失ったのは痛いが戦えないことはない、まだまだ敵はいるのだ。こんなところでのんびりしている場合ではないのだ。
 これで司令官は一掃したので敵の動きもだいぶ鈍くなるはずだった。