いわれた通りにカメラを起動して写真を撮る。
 上官はそのデータをタブレットで受け取り、そこにある敵のデータと照らし合わせて確認してみる。警察の顔認証システムを応用したもので、結果が出るまでほとんど時間がかからなかった。
 上官はそれを見て顔を真っ青にする。


 『これは……』


 無線がつながっていることを忘れていた。
 兵士は上官のつぶやきを聞き取り、嫌な予感を感じ取る。


 「どうしたんですか?」
 『いいか!! 今すぐ逃げろ!!』
 「え?」

 その会話が最後になった。


 彼女はゆっくりと腕を上げると、こすり合わせている右手の親指と中指をシュッ動かし、パチンッという甲高い音をたてて指を鳴らした。
 その瞬間
 師団の中心部が消える。
 文字通りだった。
 ガオンという音が響いたかと思うと、数十mにわたって列をなしていた人間がゴッソリと姿を消したのだ。その途中には戦車も含まれていたのだが、それも綺麗になくなっていた。地面も少し抉れていた。
 八千にもいたのに、半数以上が消えた。
 トンネルの穴が空中に空いたように空間が削除されたのだ。
 あっという間に国連軍は混乱の渦に叩きこまれる。
 半分だけ消えていしまった兵隊や、戦車、血液やオイルが噴き出していく。いきなりのことと、最高司令官がいた場所が削除されてしまっため、指揮系統が完全い崩れ去ってしまった。何十人かの兵隊がレーザー銃を捨てて逃げようとする。
 その様子を見て彼女はより一層真っ赤な三日月を大きくさせていく。

 彼女こそ、原初の魔法少女と化したアリスだった。

 『ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!! ハハハハハハハハハハハハ!!! ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!! ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!』


 久しぶりの大虐殺
 アリスは全身全霊で楽しんでいた。
 基本的に単身で全世界を駆け巡り、翼の少女用の魔力コアを生成したり絶望少女生み出したりとしているアリス。そのため、最近は戦場に出ることが無かったので、色々と欲求不満だったのだ。
 しかし、空間削除では自分でやった感が薄れる。
 彼女は二本の剣を袖から取り出すと、両手でしっかりと握りこむ。
 そして音もなく宙を切ると、軍隊に向かって行く。それを受けて、再びレーザーとヘリからの機関銃の銃弾が襲い掛かってくる。体をピクリとも動かさず、かわすことなくアリスは突っ込む。
 誰一人として彼女を止めることができない。
 結局

 一個師団八千人が全滅するまで三十分もかからなかった。
 血塗られた勝利を得た彼女は、死屍累々の中で表情を変えることなく。ゆっくりと首を回す。
 その視線の先にはマリア達が戦ってたアリーナがある。
 アリスは無言のまま宙を切るとそちらに向かって行った。