周囲にキラキラとした光の粒が現れる。暖かい何かが少女の体の底から何か力がこみ上げてくる、それは非常に心地の良い感覚だった。しかし、それが恐怖感を拭い去ってくれる訳ではなかった。
 だが、身を預けるには十分ほど心強いものだった。
 男は何やら焦ったような顔をすると小さな声で何やら呟く。


 「クソッ!! こんなに早く定着するとは……いや、暴発か?」


 何を言っているのかよく分からない。
 だが、男にとって想定外なことが起きていることだけは分かった。
 少女は顔を恐怖で歪ませながら、こう呟いた。


 「こっちに……来ないで!!」
 「―――ッ!?」

 キィィィィィィィィィィィという爪でガラスを引っ掻くような不協和音が鳴り響いてくる。
 男はどうやらうまいこと体を動かせないでいるようだった。
 少女はこの力が何かよく分からないが、完全に気を許していた。
 周囲に満ちる力がどんどん濃密なものへとなっていく、じっとりと湿度が高い日のように嫌な感じが肌を覆ってくる、息が苦しくなる、冷汗が流れる、気が遠くなってくる。それでも男は少女の方を見続ける。
 これから起こることを見逃さないように
 少女は気丈に男を睨み続ける。
 しかし、それはあまり長い時間続かなかった。


 瞬きもする間もなかった。
 力が最高点を迎え、男の我慢が限界を迎えた瞬間


 いきなり少女の姿が消えたのだ。


 フッとベッドの上にいた少女が跡形も無くなった。急いで腕を伸ばすと、さっきまでいたところを触れてみる。するとそこには確かな温かみがあったが、それだけだった。それ以外何も残っていなかった。
 男はそれを確認して、ニヤリと笑って呟く。


 「完璧だ…………」

 計画通りに事が進んだとはいえ、ここまでうまくいくとは思っていなかったのだ。
 だが、問題もできてしまった。
 男はベッドから数歩は離れて一拍置いた後、小さな声で呟いた。


 「ユウキ、仕事だ」
 「なんだよ、達也のおっさん」


 そんな声がしてユウキと呼ばれた一人の少年が姿を現す。