フレイヤはそういうと、背中を向ける。
 朱鷺と詩音はあらかじめそれを知っていた。前から、アリスに見つかった場合は自分の命を犠牲にしてでもマリア達を逃がすと。ずっと前から覚悟も、作戦も決まっていたいた。ッそれを知らないのは本人だけなのだ。
 彼女は笑顔のまま、もう一度フレイヤと向かい合う。
 そして自分の体を中心として数mにわたる壁のように大量の銃火器を生み出した。それはまるで後ろにいるマリア達を守るかのようにそそり立っていて、圧巻だった。アリスもそれを見ると真っ赤な目をさらに丸くする。
 しかし、その代償は大きかった。
 フレイヤの髪の先がサラサラと粒子と化して、風に乗って消えていく。
 すでに魔力が限界を迎えていた。


 「マリア!! 逃げるぞ!!」
 「ユウキ……でも!!」
 「グダグダ言うな!!」
 「でも、フレイヤさんが!!」


 マリアはどうしても見捨てることができず、駄々をこねていた。
 ユウキ達は今すぐにでも逃げ出したく、必死でフレイヤの方に向かって行こうとするマリアのことを止めつつ説得していた。と言っても主に話しかけているのはユウキだけで、朱鷺と詩音は何も言わなかった。
 デルタは魔力センサーを使って他に敵がいないか調べていた。
 フレイヤは後ろを見なくっても、マリアの踏ん切りがついていないことに気がついていた。
 なので、その背中を押してやるために、少し厳しめの声で話しかけた。


 「マリア!!」
 「フレイヤさん!! 私ッ」
 「ここは命という名の楯になる」
 「――ッ!!!」
 「私の屍を越えて行きなさい。あなたには、その資格がある」
 「………………分かりました」


 顔をうつむかせ小さくそう呟く。
 覚悟が決まったことに気が付いたのか、ユウキ達は一旦マリアから手を放すと、一歩後ろに下がる。マリアは両目から流れる涙をそのままにして、背をシャンと伸ばすと、今すぐにでも逃げられるようにする。
 朱鷺とデルタは先に向かって行った。
 ユウキはマリアの背中をポンッと叩くとこう言った。


 「行くぞ」
 「……分かった」


 その言葉を最後に、重力干渉波を一気に放つと二人は同時に宙へと飛び上がって行った。
 最後に、一度だけ振り返って見る。
 だが見えたのは数えきれないぐらいの銃と、それと相対するたった一つに小さい影だけだった。
 今すぐにでも戻りたい気持ちを抑えながら、マリアは研究所までユウキの先導で向かって行った。