しかし、その気持ちはあっという間に消える。
 なぜならユウキも同じように怒りに満ちた目をしていたからだ。
 歯ぎしりしながら、ユウキはマリアに向かって言う。


 「前も言ったろ、殴っても無駄だ」
 「……ユウキ」
 「代わりと言っては何だ、達也のおっさん。一ついいか?」
 「早くしろ」


 そっけなくそう言い放つ。
 ユウキは苦虫を噛み潰したような顔のままこう言った。


 「ちょっと町に出ていいか?」
 「別にいいぞ、こっちが命令したらすぐ来いよ」
 「分かってるよ。マリア、行こうぜ」
 「え?」


 いきなり話を振られて困惑したような顔をするマリア
 ユウキは無理に笑顔を作ると言った。


 「お前、何も知らないだろ? 遊びに行こうぜ」
 「え、え、別にいいけど」
 「詩音さんとデルタはどうする?」


 そう質問され、詩音は顔を上げると「私はいい」と返事をした。
 デルタは達也の隣に立つと「魔力の充填があるから遠慮すル」と答えた。
 それらを聞いたユウキは勝手にマリアの腕をとると、無理矢理所長室から連れ出していった。それはマリアのためというよりは自分のためのように思えた。ユウキも達也には嫌気がさしていたのだ。
 それが分かって少しうれしい気持ちになる。
 二人はまるで駆け落ちするカップルのように研究所の廊下を走っていった。
 その後、一旦部屋に戻ってからテレポーテーションで移動をし、町まで飛んで行った。