「こ、ここは?」
 「魔法少女軍の襲撃から免れた数少ない町の一つさ」


 そう言ってユウキは道を行く。
 はっきり言うと、ぱっと見では特に何か特徴があるようには見えなかった。マンションが立ち並び、スーパーのような物も見える。隅っこには何か娯楽施設のようなものも見える。それに、普通に人々が笑顔で歩き回っている。
 原初の魔法少女は最初の数か月で大虐殺を起こした後は、無人となった町を拠点とした。その後は国連軍の基地や研究所を狙ったり、住民の虐殺は鳴りを潜めた。勢力の拡大よりも敵を殲滅する方に力を割いたのだ。
 そのため、戦争が始まって一年たった今でも、避難した人々がこうして普通の生活を送ることができているのだ。
 ここはそんな平和な町の一つ
 突如その中に放り込まれたマリアは困惑する。
 この短い人生で、こんなに笑顔のあふれる空間を知らなかった。
 初めて肌に感じる幸福の感触。
 それはまるで異物のようにマリアのことを困惑させていた。
 何度か来ているユウキは慣れているのか、ポケットから財布を取り出すと中身を確認する。結構な額が入っている、これは達也がユウキにお小遣いとして与えていたお金の一部で、たまにしか使わないので結構残っていた。
 ユウキは手始めに自販機に近寄ると、適当にコーラを二本買ってマリアに手渡す。


 「飲めよそれ、うまいぞ」
 「あ、ありがとう」


 細い缶を受け取ったはいいが、どうやって飲めばいいのか分からない。プルタブを開けたことが無いので困惑しているのだ。ユウキは自分の分を開けてからそれに気が付き、小さく笑った後、自分の分を差し出した。
 それを見て、さらにきょとんとするマリア


 「これ、飲んでいいぞ」
 「え、でも悪いし……」
 「いいからいいから、次までにプルタブ開けられるようになってたらそれでチャラ」
 「なら……分かった」


 そう言ってからごくりとコーラを飲んでみる。
 その瞬間、炭酸特有のシュワーッとしたのが喉を下っていく。焼けつくような熱い感覚が全身を駆け巡り、雷が落ちたような衝撃が脳天を突き抜けていく。うっかり缶を取り落としてしまうが、ユウキがそれをキャッチする。
 マリアは両手で口を覆い隠し、ゲホッゲホッと咳き込む。


 「何っ……これっ!!」
 「炭酸だ、どうだ?」
 「酷い味!!」
 「ハハハハハハ、マリアにはまだ早かったか」


 そう言ってオレンジジュースを買いなおす。そしてプルタブを開けてから、渡してやる。
 マリアは急いでそれを受け取ると口に運ぶ。なんとしても口の中に残っている炭酸を流し去りたかったのだ。おかげさまで元に戻ったマリアは、ハーっハーっと荒く息を吐きながらジッとユウキのことを睨む。
 しかし、その目は涙目で顔は真っ赤になっていて迫力はこれっぽちもない。
 ユウキはニヤニヤと笑いながら謝った。


 「すまんすまん、ちょっとどんな反応をするのか気になってさ」
 「うー、意地悪ぅ……」
 「ハハハハハハ!! じゃ、さっそくいこうぜ」
 「うぅー、どこ行くの?」
 「まぁ色々見て回ろうぜ」
 「……分かった」


 何となく癪だが、ここは大人しくユウキについて行くことにした。
 二人は並んで道を歩くと、ゆっくりとどこかへと向かって行く。