第四戦 その①




 「ユウキ!! そっちに敵が行った!!」
 「分かってる!!」
 「せっかく教えたのにその言いようは何!?」
 「戦ってる最中にうるせぇよ!!」 
 「それはそうだけど――ッ!!」


 マリアはそう言いながら、サッと手を振るうと近くにいる敵の魔力をまとめて吸収する。
 ユウキは自分の方に向かってきた敵に掌を向けると、サイコキネシスを放って吹き飛ばす。本当はテレキネシスで吹き飛ばしたかったのだが、残念ながらそんな余裕はなかった。飛ばされた少女は数m離れた地面に叩きつけられ、無様な姿を見せる。
 デルタは少し離れたところでレーザーを放ち、敵を倒していたが、二人が喧嘩している姿を見るや否や、すぐそばに飛んで来て呆れた声で話しかけてきた。


 「馬鹿してないノ」
 「「だってこいつが!!」」
 「声をぴったり合わせて何を言ってるんだカ」


 そんなことを言いあいながらも、三人は順調に敵を殲滅していく。
 余裕、という訳ではないが、もうすっかり慣れたものだった。てっきり集中力が切れると思っていたがそんなことはなかった。逆に余計なことを考えずに済む分、無言で戦うよりも楽な面はあった。
 三人は背中合わせになりながら、向かって来る翼の少女たちを追い払う。
 また、マリアは隣にいるクライシスが話しかけてくるので、余計に慌ただしい。


 「マリア!! 上から来てる!!」
 「――ッ!!」


 急いで顔を上げる。
 すると確かに一人の少女が突っ込んできている姿が目に飛び込んできた。
 マリアは彼女に向かって左手を向けると、光弾を顕現し、それを放つ。かわしようのないそれは見事命中し、大爆発を起こす。バチャンッという嫌な音と共に少女の体が吹き飛び、粒子の雨となって降り注ぐ。
 そんな中、次の敵の視線を移しつつも、マリアはクライシスの礼を言う。


 「ありがとね」
 「気にしなくていいさ、君が死ねば僕も死ぬからね」
 「そんな言いかた……好きじゃない!!」


 そう言いながら、また別の敵を切り裂く。
 二人は仲良くやることができていた。



 戦いが一段落し、翼の少女の攻勢が少し止まった。
 その隙にマリア達は持って来ていた量産型コアで魔力を回復し、次の攻撃に備えていた。残念なことに、ユウキとデルタは少し離れた場所にいたので一人っきりだったがしょうがない。
 一人寂しくコアをいじくっていると、クライシスがそれを察して話しかけてきた。


 「どうだい? 調子は」
 「よく見える?」
 「見えるね、絶好調じゃないか」
 「ありがと」
 「いやいや、礼には及ばないよ」
 「…………ハハハハハハ、やっぱあなたは面白いね」
 「お褒めに預かり光栄だよ」


 そう言って猫みたいな手で頭を掻くクライシス
 実際、そんなことしなくてもいいはずなのだが、照れているアピールなのだろうか
 正直な話、マリアはクライシスがどういう奴なのか測りかねていた。
 なんだかつかみどころがない、腹の底がうかがい知れないというか、真意が読み取れない。気の良い友人のように振る舞っているが、クライシスがマリアのことをどう思っているかまで分からない。
 それでも、達也といるよりはよっぽど気が楽だった。
 マリアは少し笑顔を浮かべながらクライシスに話しかける。


 「そういえば、あなたってどんな存在なの?」
 「うん? 君のサポートをする、それだけさ」
 「そうなの……」


 マリアはそういう意味で尋ねたのではなかった。
 しかし、これ以上質問してもしょうがないような気がしたので、やめることにした。
 黙りこくったマリアの姿を見て、クライシスは優しげな声でこう言った。


 「でもね、一つだけはっきりと言えることがある」
 「それって?」
 「僕と君が手を組んだら、この世界を滅ぼすことも可能だろうね」
 「……何を言っているの? 冗談でも面白くないよ」
 「冗談じゃ何だけどな……まぁ、いいか。敵が来たよ、マリア」
 「第二波ね」


 そう言ってマリアは顔を向ける。
 すると、一人の魔法少女を先頭に何十人という翼の少女が飛んでいる姿が目に飛び込んできた。それを見て、凄く嫌な気持ちになるがもう慣れた。目をつぶり、その思いを思いっきり吹っ切った。
 迷わない
 絶対に
 殺す。




 「ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


 剣が光を反射してきらめく。
 次の瞬間、マリアの姿が消えると、翼の性の集団の中心に出る。
 いきなりのことに司令官の魔法少女も反応が遅れる。サッと後ろを振り向くも、既に手遅れだった。マリアは魔力吸収能力を発揮すると、くるりと空中で一回転し、周囲にいる少女の命を奪って行く。
 あっという間に数が減り、虚空へ消える。
 翼の少女たちは翼を翻すとその場から離れていく。ただし、司令官の魔法少女だけは武器を構えるとマリアの方に向かって行く。
 まるでカーボーイのような格好をし、二丁拳銃を構える少女
 彼女はルナだった。


 「なんだてめぇ!! どっから湧いて来た!!」
 「湧いて出てきてない!!」
 「どっちにしろ変わらねぇ、お前は殺す!!」


 ガンッガンッという銃声が連続して響く。
 それと同時に金色にきらめく銃弾がいくつも飛んでくる。
 マリアは、それが命中する直前に時間停止能力を使うと、制止した時間の中を移動する。そして銃弾を超えて移動し、ルナの目の前までくる。そこで限界を迎え、時間は再び刻み始めた。
 ルナは突然目の前に現れたマリアの姿を見て、余裕そうにしていた顔を歪ませる。


 「な――ッ!?」
 「喰らえ!!」


 マリアの左手がうすぼんやりと光を放つ。
 視界の隅でそれに気が付いたルナは、瞬時にやばいと判断し、思いっきり左足を上げるとそれでマリアの腹を蹴り上げる。それは見事腹部に命中する。マリアはそれでえずいでしまい、そのまま後ろに飛ばされる。
 胃液がこみ上げてくる。
 鈍い痛みがマリアを襲う。
 歯を食いしばってそれを堪え、何とか態勢を立て直す。


 「死ねぇ!! この糞アマ!!」
 「来い!!」
 「マリア!! 後ろだ!!」
 「――ッ!! 次から次へと!!」


 クライシスの声と共に振り向くマリア
 すると、さっき躱した銃弾が背中から向かって来るのが見えた。このままでは貫かれてしまう。しかしこの動きを見る限り、銃弾の動きを操作することができるのだろう。それではいくら躱してもジリ貧である。
 そう判断したマリアは左腕を振るうと、魔力の腕を伸ばして銃弾を掴む。
 すると魔力を吸収し、銃弾の姿が消える。


 「なっ!!」
 「やった!!」


 初めての試みだったがうまくいったらしい。
 ルナは悔しそうな顔をすると、懲りずに銃弾を連射してくる。
 対処法が分ればどうとでもなる。
 マリアは自身の能力を駆使して自分に命中する前に銃弾を消滅させていく。


sage