詩音とアリヤ その③



 アリスはアリヤにこう言った。

 『あなたに孤独でいながら百%理解しあえる仲間をあげる』

 その言葉に嘘偽りはなかった。
 アリスは自身の能力を利用して、アリヤを何十人にも、何万人にも増やし、それらを翼の少女と名付けた。自分が何十人もいる。それは確かに自分のことを完全に理解してくれている仲間がいながらも、孤独であった。
 一人でいながら、仲間がいる。
 それは何とも言えない感情をアリヤに与えた。


 翼の少女たちは自分でありながら自分ではない個別の生き物
 彼女たちは自分のことを理解している。
 しかし
 それはどこまでも虚しかった。
 一か月もしないうちにアリヤは自分が何者なのかさっぱり分からなくなった。戦場に出ると、自分が何十人、何百人と死んでいく。それなのに自分はここにいる。雑踏の中たった一人で
 正直な話
 アリヤは半分後悔していた。
 だが、詩音の元に戻ることはできなかった。

 彼女の顔をもう一度見たら
 アリヤはもう元に戻れなくなる
 そう分かっていたからだ
 それに、今更どの面を下げて会いに行けばいいのか

 アリヤは孤独でいたかった
 それでも誰かと一緒にいたかったのだ。

 彼女は決して、孤独の魔法少女ではない
 矛盾の魔法少女だ。

 一度誰かと一緒にいる楽しさを知ってしまった。
 アリヤは孤独に戻る必要などなかったことをアリスのもとに来て初めて気が付いた。

 だが、全ては手遅れだった。
 アリヤはいつまでも一人で、一人っきりでいるしかないのだ。
 それが自分の望んだことなのだから

 結局のところ
 アリヤも詩音のことが好きだったのだ。




 「……私は」
 「え?」
 「………………私は…………私は………私は……っ!!!!」
 「何でも言えよ、聞いてやるから」
 「……私はッ!!!」

 何か堪えきれないものが胸の内からあふれてきて
 アリヤは叫んでいた。
 しかし、なんといえばいいのか分からなかった。

 代わりと言っては何だが、両手に刀を顕現するとそれを構えた。
 詩音もそれに合わせて両手に氷の剣を生やして姿勢を整える。


 「…………」
 「いいよ、来いよ。受け止めてやるからよ」


 その言葉をきっかけに二人は動いた。
 アリヤと詩音は同時に地面を蹴ると、まっすぐ突っ込んでいく。顔をしっかりと上げて、相手のことをジッと睨み付ける。

 もう二人は
 言葉で分かり合うことはできないのだ。
 
 何となく、お互いに察していた。これが最後になるだろうと
 詩音は上半身を守るように氷の剣を顔の前でクロスさせたまま進む。対するアリヤはいつでも攻撃を仕掛けられるように、両手を広げた姿勢で刀を構えている。はっきりと対照的な二人
 あとはどちらが先に攻撃を仕掛けるか

 この調子で行けば一秒もかからずにお互いの間合いに入る。

 そんな二人の勝敗を分けたのは、能力の差だった。

sage