VS研究所 その②



 『ハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!』


 やはり、自分を邪魔するものはいないのだ。
 そう思った瞬間
 ヒュッと風を切る音と共に、小型ミサイルが一発アリスの目の前の地面に着弾する。いきなりのことに反応しきれず、そのまま爆発に巻き込まれるアリス。ドゴンッという鈍い音と、視界をすべて奪うほどの爆煙
 その中から飛び出したアリスは何がミサイルを放ったのか確かめる。
 すると、空中に何機かのドローンが飛翔しているのが分かった。小型ヘリコプターのようなデザインをしているそれは、やはり小型のミサイルを一気につき四発装備していた。そのうち一機のミサイルが一つなくなっていた。
 どうやらさっき自分に攻撃してきたのはそのドローンだったらしい。


 『ハハハハハハハハハハハハ!!!!!!! ハハハハハハハハハハハハ!!!!!!! 邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔!!!!!!』


 そう叫びながら腕を上げると、剣を投げつけ一機のドローンを破壊する。それとほぼ同時に残りのドローン数機は爆破から離れるように、移動する。アリスはそのうち、一番数の甥一団に指を向けると、パチンッとならす。
 するとガオンッという軽快な音と共に、数機のドローンがまとめて空間削除に飲み込まれ、消えていく。


 『ハハハハハハハハハハハハ!!!!!!! ハハハハハハハハハハハハ!!!!!!! この程度!!!』


 ドローンはアリスを迎撃するべく、何十発もミサイルを放つ。
 しかし、ダメージが全く入らない。全てかわされるか、命中してもただの目くらましにしかならない。
 他にも破壊したのとはまた別のポットからレーザーが放たれて、その攻撃もあるが、やはり通用しない。
 アリスは腕を振るい、次から次へと破壊していく。
 一方的な制圧だった。


 マリアはジッとモニターを見ながら、心配そうな顔をする。
 どうにも押されているようにしか見えない。確かにすごい武装ではあるが、まだ一度もアリスを殺すことに成功していない。ただただ魔力と弾薬の無駄遣いをしているだけにしか見えない。
 だが、達也からはそこまで追い詰められている雰囲気は出ていなかった。
 どういう訳だろうか
 マリアが困惑していると、その雰囲気を過敏に察し、達也が答えた。


 「いいかマリア、これはシールド生成装置までの時間稼ぎだ」
 「え?」
 「どうせあまり時間をかけずシールドは消え、この研究所は破壊される」
 「…………」
 「戦闘システムを全て全自動に切り替えるまでの辛抱さ」
 「……一つ、聞いていい?」
 「手早くな」


 マリアは前から疑問だったことをぶつけてみることにした。


 「なんで、こんな強いのにアリスは戦わないの?」
 「あぁ、そんなことか」


 馬鹿にするようにそう呟き、達也は早口で答えた。


 「いいか、アリスはいつもは全世界を飛び回り、翼の少女や絶望少女に魔力のコアを生成し、与えていた。それが主な仕事だ。ところが、翼の少女が消えて手持無沙汰になり、劣勢になった。どういうことか分かるか?」
 「……なるほど」

 手が空き、不利になったからこちらを叩きのめしに来た
 つまりはそういうことだ。理にかなっている。
 マリアはそれを聞き、一層不安になった。アリスの強さがはっきりとわかっているから、根拠もなく自信に満ち溢れているように見える達也が非常に恐ろしかったのだ。どう考えても勝てるはずがない。
 しかし
 どういう訳か彼はまるで子供のように楽しんでいるのだ。
 訳が分からない。

 「第一線が突破されたか」


 放心していると、そんな呟きが聞こえてくる。
 驚いて正気に戻り、ぱっと顔を上げてモニターを見てみると、ポットとドローンのほとんどが破壊され、攻撃の手が緩んだ隙にアリスが相当な距離を進んでいるのが分かった。すっかり燃え広がった炎を背中に、アリスは道なき道を進んでいる。
 達也は急いで第二線を起動させると、今度は地面からさっきよりも威力を高くした代わりに拡散性を抑えたレーザーを搭載したポットを何十個と地面からは展開させる。さらに、今度は空を飛ぶのではなく地面を走るタイプのドローンを発進させた。
 こちらは機動性を重視したもので、火力こそやや劣るがこれで十分なはずだった。
 「さて、どうする?」
 あと少し
 あと少しでこちらの作業は終わる
 それまで凌ぎ切ればこちらの勝ちだ。


 アリスは向かって来るドローンの型が変わったことに気がついた。
 さっきまで空を飛んでいた物から今度は小刻みに地面を走るタイプになった。武装も変わり、今度は魔力を利用して撃ちだすマシンガンのようになった。ミサイルと違い、視界は悪くならないのでその点でいえばマシなのだが、攻撃が鬱陶しい。
 さっきより数と威力が上がっている。
 面倒くさい


 『ハハハハハハハハハハハハ!!!!!!! ハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!』


 全身にずぶずぶと穴が開いていく。
 そのうちの数発が致命傷に近かったがなんとか堪えようと、少し動きを止める。
 その隙に、一発の銃弾が正確に頭部を貫通すると、一度死ぬ。
 不定形の体がふわりと浮き上がると、そのままバンッという軽い音をたてて全身がバラバラに吹き飛んで消える。黒い粒子が空中を漂い当てもなくさまようが、すぐにまるで意思を持っているかのように動き出す。
 すると数m離れた場所で行き場なくフワフワと浮いていたコアの周囲に集まると、復活する。


 『ウガァ!!!!』


 アリスは認識を改めた。
 舐めていると無駄に時間を消費する。
 これ以上コケにされるわけにはいかない。
 全力で、潰す。
 殺す

 『殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

 アリスはそう叫ぶと、自分の周囲に大量の剣を顕現し、雨のように周囲に振らせる。それと同時にバッと両腕を前に突き出すと、連続で指を鳴らし次から次へとドローンを消し去っていく。
 それだけではない。
 いくつもの光弾を同時に顕現すると、同じようにまき散らした。
 ドンドンという爆発音と、破壊音が響き渡る。
sage