デルタ その①


 「見つけタ!!」


 デルタはこちらに向かって飛んでくる魔法少女の姿をその目に捕らえた。
 直後、戦闘準備を整える。魔力量が極端に少ない今、長時間の戦闘は行えない。なるべく短期決戦で決着をつけたい。そこでデルタは先制攻撃を仕掛け、その隙に一気に殲滅する戦法ととることにした。
 これなら奥の手を使わずに済むかもしれない。
 幸い、まだ暗がりの中なので敵はこちらの姿を捉えていないよう。ならばこの隙にデルタは両腕の装甲を展開すると、そこからロックした敵に向けて幾筋ものレーザーを照射する。
 そこで敵は初めてデルタの存在に気が付いた。


 「レーザーか……」


 高速で向かって来るそれらを見て、小さな声でそう呟く。
 こんな限定された場所ではそれを躱すことは容易ではない。
 二人ともそれを理解しているが、どういう訳か敵――御雷――は余裕綽々だった。


 「これでも喰らいな」


 そう言って動きを止めると、槍を線路に突き刺す。次に、自由になった両手をサッと前に向けると能力を発動する。それと同時に、まばゆい光が御雷の掌から発せられ、真っ暗だったトンネル内を照らしていく。
 デルタはそれが何か分からず訝しげな顔をする。
 だが、レーザーはそんなこと関係なく襲い掛かる。


 今にもそれらが命中するかと思われた瞬間。
 レーザーはまず、掌から放たれる光に包まれる。
 と同時に、起動が不自然に変わるとそのままグニャリと曲がり、トンネルの左右の壁へと突っ込んでいく。直後、ドンドンという爆発音が響き、アスファルトの破片などが吹き飛んで、御雷の体に降りかかる。
 だが、その破片たちもすべて周囲に光る光に弾かれて、御雷の体には当たらない。
 御雷はニッと笑い、挑発する。


 「ハッ!! その程度かよ」
 「そんなわけなイ!!」


 もう一度レーザーを放とうかと思うが、さっきのように軌道をずらされてはどうしようもない。デルタは敵の能力の正体を探るため、接近戦を挑むことにする。両腕の装甲を展開してエネルギーの刀を前腕部から偃月状に形成した。
 二人の間の距離は、もう五十mもない。
 御雷は急いで突き刺していた槍を手に取ると、その切っ先をデルタの顔面に向けた。


 「おうおうおう!! そうこなくっちゃ」
 「死ネ!!」


 デルタは腕を振るうと御雷を切り裂こうとする。
 だが、御雷の方が一歩早かった。正確に首を狙って振るわれる右腕を見切ると、地面を蹴って後ろに飛ぶ。デルタは予想通りのその動きを見て、追い詰めるように一歩前に出ると今度は左の刀で切り裂こうとする。
 それを受けて御雷は素早く動き、今度は空いた方の手をサッと前に出すとデルタの手首の辺りをサッと掴む。
 それだけならよかった。
 それだけならよかったのだが

 御雷が掴んだ瞬間に
 デルタの全身に電流が走った。


 「――――ッ!!!」
 「フンッ!! これでも喰らいな!!」


 電流とは比喩ではない。
 文字通り電気がデルタの体を流れたのだ。魔力のバリアーを突き抜けて、全身が焼き付くような強烈な電流が流れる。全身のコードや機器がそれに堪え切れず、オーバーヒートする。そのせいか、ポンッという軽い爆発音がすると、デルタの左目が吹き飛んだ。
 デルタは痛みに負け、逃げることにすると、思いっきり腕を振るって無理矢理御雷の腕を弾き飛ばし、そのままフラフラと後ろに倒れ込む。
 そして、後ろに数歩下がった御雷との距離が数m開く。
 さっきのダメージが癒えないデルタは顔の左半分を腕で押さえてうずくまっている。彼女は普通の魔法少女と違い、自己修復能力を持たない代わりに外からの攻撃に対する防御力では魔法少女を超える。
 しかし、内部からの攻撃には非常に弱い。
 おまけに電流など、最大の弱点といっても過言ではなかった。


 「―――ッ!!! アアアアアッ!!!!!」


 思考回路まで焼き付いているような気がする。
 デルタは久しぶりの致命傷に簡単に立ち直ることができなかった。
 御雷は余裕の笑みでこう言った。


 「ねぇ、この槍の名前、教えてあげようか」
 「アグゥゥゥ……!!」
 「避雷針っていうの」
 「――ッ!!」


 ヒュッと軽い音がして、槍が投げつけられる。
 デルタは咄嗟に体を動かすと地面をゴロゴロと転がる。すると、さっきまでデルタがいたところに黒い槍がザクッと突き刺さる。そのままデルタはその場から離れると、そこで立ち上がった。
 御雷はその動きを見越すと、サッと指を伸ばす。
 それは起き上がったデルタの顔にロックオンされる。


 「クッ!!」
 「躱せるかな?」

 刹那
 御雷の指がピカッと輝く。
 その瞬間にデルタはそこから発せられた何かに吹き飛ばされて、さらに数m後ろに吹き飛び、全身を強烈な電流が走る。ただでさえさっきの攻撃で致命的なダメージを受けたというのに、また大ダメージを受けてしまった。
 もし、デルタに口があったらそこから黒煙を吐き出していたかもしれない。
 代わりと言っては何だが、ポッカリと穴の開いた左目から煙を吐いていた。


 「アガァッ!!」


 幸いなことに、厳重に守られている脳には一切のダメージは届いていなかった。
 そのため戦うことはできる。
 デルタは急いで背中の装甲を展開すると、一気に体内に籠った熱を吐き出す。それと同時に地面を蹴ると後ろに飛び、その蒸気の中へと入り込んだ。その程度でどうこうなるわけではないが、とりあえずの動きだった。
 御雷はそこまで行くと、サッと腕を振るうと、槍を振るって蒸気を吹き飛ばす。
 するとそこにデルタの姿は見えなかった。


sage