現実



 人数はそこまで多くない、十人から十五人。彼らは全員、達也の遺したレーザー銃を片手に、無機質なヘルメットで顔面を隠していた。
 無線で通信をしながら、足を止めることなくまっすぐマリアに向かって行く。
 それを見ても、マリアは動こうとしなかった。少なくとも今までは国連軍は味方だったし、彼らのことをクライシスが危険に感じることなど無いように思えたからだ。腰を上げることなく、彼らの動きをぼーっと無意味に網膜に映し続ける。
 マリアから約数十m程度離れた位置で動きを止めると、そのうち五人が一歩前に出る。

 そして
 ゆっくりと腕を上げると
 手にしていたレーザー銃を構えて
 銃口をマリアに向けた。

 銃口を向けた。
 そう、狙いを自分につけてきたのだ。


 「えぇ?」


 そこで初めて
 マリアは正気に戻る。
 だが
 遅すぎた。


 「殺せ」という小さな声
 無慈悲に引かれる引金。


 そして、強烈な熱と共に放たれる赤い光線
 幾筋ものそれは、寸分違わずマリアに命中した。


 「なんで……」


 誰に向けて放たれたのかもわからない呟きがこぼれる。

 その瞬間
 マリアの全身――主に上半身――をレーザーが突き抜けていった。腕を、胸を、足を、腰を強烈な痛みと身が焦げる熱が襲い来る。だが、それらは即座に感じられたわけではなく、一拍遅れてからマリアを苛んだ。
 さっきまでの魔力吸収とは違い、あっさりと過ぎ去っていく鋭い痛みだった。
 それが体の痛みなのか、心の痛みなのか
 マリアにははっきりと区別がつかなかった。


 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 いきなりの攻撃と、苦痛に
 マリアは堪えきることができなかった。


 何だこれは!
 何だこれは!!
 何だこれは!!!


 何が起きた!
 何が起きた!!
 何が起きた!!!


 マリアは完全に混乱していた。
 混乱しながら地面に転がると、そのままもだえ苦しむ。傷跡から大量の血液がこぼれると、周囲の地面を真っ赤に染めていく。どういう訳か分からないが、致命傷こそなかったものの、重症であることには変わりない。
 また、なぜか傷が修復されなかった。
 この程度の負傷なら一分もかからず再生するはず。
 ところが今日に限って、その傷跡から粒子が吐き出されるだけで何も変わらなかった。


 「なんで……」


 誰に向けて放たれたのかもわからない呟きがこぼれる。

 その瞬間
 マリアの全身――主に上半身――をレーザーが突き抜けていった。腕を、胸を、足を、腰を強烈な痛みと身が焦げる熱が襲い来る。だが、それらは即座に感じられたわけではなく、一拍遅れてからマリアを苛んだ。
 さっきまでの魔力吸収とは違い、あっさりと過ぎ去っていく鋭い痛みだった。
 それが体の痛みなのか、心の痛みなのか
 マリアにははっきりと区別がつかなかった。


 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 いきなりの攻撃と、苦痛に
 マリアは堪えきることができなかった。


 何だこれは!
 何だこれは!!
 何だこれは!!!


 何が起きた!
 何が起きた!!
 何が起きた!!!


 マリアは完全に混乱していた。
 混乱しながら地面に転がると、そのままもだえ苦しむ。傷跡から大量の血液がこぼれると、周囲の地面を真っ赤に染めていく。どういう訳か分からないが、致命傷こそなかったものの、重症であることには変わりない。
 また、なぜか傷が修復されなかった。
 この程度の負傷なら一分もかからず再生するはず。
 ところが今日に限って、その傷跡から粒子が吐き出されるだけで何も変わらなかった。

 クライシスはその原因に気がついていた。
 原初の魔法少女の魔力のせいだ。吸収したそれは、マリアのコアの内部でマリア本来の魔力と相殺しあっているのだ。そのせいで一時的に傷の修復や身体機能の強化と言った魔法少女特有の能力が失われてしまっているのだ。
 それに気がつかないマリアは、訳の分からないまま叫び、血をまき散らし、痛みに苦しんでいる。
 国連軍はそれを見て、好機と見たのかレーザー銃の照準を再び合わすともう一度射撃しようとする。
 その瞬間
 クライシスの声が響いた。


 「マリア!! 飛べ!!」
 「――ッ!!」


 反射的に
 マリアは動いた。

 瞬間移動能力を発動するとそのままその場から消えた。
 座標設定をしていないが、そんなこと心配する余裕はなかった。
 とりあえず、この場から離れたかったのだ。


 ドサリッと軽い音がして、マリアの体が地面に放り出される。
 すると、傷跡に衝撃が襲い、鋭い痛みが走る。
 「うぅぅぅ……」
 マリアは呻きながら何と体を上げると、地面にへたり込む。
 ここがどこかよく分からないが、とりあえずあの国連軍から逃れることはできた。安堵の息を漏らす。そして、左肩の方を見てみると、クライシスの姿がはっきりと見て取ることができた。
 彼は悲し気な目をしながら、マリアに話しかけようとした。
 が、その前に彼女がクライシスに向かって叫んだ。


 「なんでッ!!!」
 「マリア……」
 「なんで国連軍が私を殺そうとするの!!」
 「…………」


 マリアの疑問はもっともだった。
 自分に向けられた激昂を全て体の中に押し込めながら、クライシスは話を始めた。


 「簡単な話だよ」
 「何ッ!!」
 「原初の魔法少女が死んだ今、この世界における最大の脅威ってなんだと思う?」
 「なぞかけなんかいいから!! 早く!!」
 「魔法少女だよ」
 「だから、何で!!」
 「分からないのかい? 君も魔法少女なんだよ」
 「え―――」


 マリアは文字通り
 絶望した。
sage