外へ出ると、雨は上がっており赤い空が広がっていた。
スマートフォンで位置を確認し、ここが都内であった事には少し驚いた。
一先ず無事に外の世界へ戻れたものの、これからどうするべきか思いを巡らせる事で一杯になり、諸星に言葉を掛ける余裕はなかった。
どういう訳か彼も同じく口を噤んでいるばかりで、二人の間には、大金の詰まったトランクをゴロゴロと引き摺る音だけが響く。
最寄りの駅に近づいたとき、諸星は足を止めた。
「やっぱり。最初に聞くべきことは、貴方の正体ですよね」
「そうですよね」私も立ち止まる。
もう偽る必要もない。
「貴方達が転覆を謀っている華族、源家。その運営する組織に所属する者です。正確には所属していた者ですけど。つまり神の遣いではなく、源家の長女、源美咲に遣われている者なんです」