1週間後。2月14日。
 地下鉄の改札を抜け、路地裏へ進む。滞りなく三人は後をつけてくる。
 小さなビルの合間にある、ダクトに囲まれたスペースに指定のバンは駐車されていた。
 手早く、扉を開け後部座席へ乗り込む。
 車内は運転席と助手席が埋まっており後部座席は全て空席となっていた。
 四人全員が乗り込むと、バンはすぐに発進する。
 運転席の人物の顔を窺うことは出来ないが、助手席の人物は帽子を深く被り、サングラスを掛けている。
「思っていたより少ないですね。豊さん。お仲間を沢山連れてくるって言ってませんでしたか?」
 助手席の人物が口を開き、車内の緊張感がより一層深くなる。
 彼女の最初の一言は再会を祝す物でなく、単なる皮肉であった。
「うるさいな」
「失礼ですが、源静香さんですよね」桐谷が言う。
「ああ、八号、失礼。桐谷さん、久しぶりですね」源静香は優しく言った。
「貴方が迎えに来ることは、竹ノ内さんから伺っていました」
「そうですか。まさか、貴方までこちら側に寝返るとは」
「あまり、驚いていないみたいですけど」
「まあ。想定の範疇です。内村さんに関しては想定外ですが」
「内村?」俺が尋ねると、「みそかの本名です」と桐谷が答える。
「みそか。いえ、三号、内村がついてくることも想定されていたのですか?」
「桐谷さんが寝返る事は、貴方の境遇を慮る事で想定できていました。ただ、内村さんに関しては、想定外、かな。まあ、何となく雰囲気が変わってしまった気がしますね」
「流石の慧眼ですね」
「ちょっと待て。なぜ静香はみそかの正体が分かったんだ?みそかの本来の姿は別にあるって言ってなかったか?」
 河原で俺がアキコに鉄拳制裁を受けた日の帰り道、桐谷の発言である。
 すると、静香は「憎らしい姿」と言った。
 どういう意味だ。俺は首を傾げる。
「今の内村さんの姿は、私の妹、真理亜の姿ですよ。変身能力の秘密は分かっていると思いますが、この腕輪は私達の身体を元に作られた物です。だから、妹に変身した内村さんだと分かったんですよ」
「そうだったのか」
 源真理亜、名前だけは知っていた。いや、日本中の人間が源一家の名前は知っているだろうが。その姿は誰も知らなかった。
 表に姿を晒している長女の源美咲が異例なのだ。
 そして、桐谷がみそかの現在の姿について伏せていた事も思い出した。
「何か異状をきたしているようで、記憶を失くしていて、元の身体も忘れているみたいです」
「なるほど、それで真理亜の姿に」
「はい」
「本当は、元の姿が一番負担が少ない」みそかが言う。
「ん?」静香は首を傾げる。
「どういう訳か、変身能力については覚えているんだよ」俺は解説する。
「そうですか。ただ、そんな話は聞いたことがないですね」
「私も、です」桐谷も首を傾げる。
 そんな様子をみて、みそかは唇をへの字に曲げる。