「苦学生みたいな部屋だね」
 山ガールが俺の住まいである築20年の四畳半を眺めた最初の感想がそれだった。
「おい、山ガール。お前はいちいち文句を言わないと気が済まないのか」
「いやあ、悪いね。昔から口が悪いって叱られてるんだけどね。特にお兄ちゃんから。あとさ、私、山ガールじゃなくてアキコだからね。昨日も言ったけど」
「分かったよ。じゃあ早速、これからどうするか決めようか」
「話し合うなら近くの喫茶店でも良かったんじゃないの?」
「誰が、金を出すんだ?俺はほぼ一文無しだ。何もないこの部屋をみろ、真冬なのにコタツや暖房だって置いてないだろ」
「…そう」
 山ガールはしょげた様子をみせる。なんだその反応は。
「まあ、お茶くらい淹れてやるよ」
「ありがとう。お詫びになるか分からないけど、私がやるよ」
 彼女がそう言うので、場所を指示すると、テキパキと作業を始めた。
 俺が苦言ばかり挙げるからか、部屋の文句を言う事は無くなった。
 しかし、先程から変な気遣いばかりして、大人なのか子供なのか、性格が良いのか悪いのか、今一掴めない奴である。手際よく作業を進める彼女の後ろ姿を眺め、そう思った。
「出来たよ」
 急須と湯呑、足りない湯呑の数をガラスのコップで合わせ、丁寧にお盆に乗せて運んできた。
「意外と食器は揃ってるね」
 山ガールが腰を下ろしテーブルにお茶を並べ終えた後、ふたたび挙動不審に辺りを見渡し始めた。
「また文句があるのか?」
「そうじゃないけど。あとで掃除しようか?これもお詫びに」
 まったく掴めない奴だ。溜息を一つして、財布の中から小銭を取り出し山ガールの前に置いた。
「なんだよこれ」
「この部屋に風呂は無い。途中に銭湯があっただろ、二人で行ってこい」
「急に、なんだよ」