Neetel Inside ベータマガジン
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 沼地を這いずり回り、俺は泥まみれの中 茂みの中を歩き続けた。

途中、雨露に濡れた葉っぱを千切り、ペロペロと舐めて喉の乾きを潤す。
水たまりの水もあるにはあったが、葉っぱの水で喉を潤してなければそのまま飲んでいただろう。
無数の動物や虫の死骸が浮いていたりと、とても飲めそうなものではなかった。

おまけに最悪なのは足に襲いかかる大自然の痛みだ。
なんという最悪な状態だろう。踏みしめる草、土、石……その全てが容赦なく
俺の足の裏へと噛み付く。もし、ウルフバードの下で働かされていた頃の俺の足なら
今のこの状況も耐えられただろう。なにせ、来る日も来る日も裸足で砂利道や山道を
歩かされていたお陰で足はヒビが入るほど硬質化してくれていたからだ。

だが、蜂窩織炎(ほうかしきえん)を患って暫くヴィンセントとミランダの介護を
している間、足から鰹節が生えているかのように皮が捲れ、剥がれ落ち、
それまで硬質化していた足が綺麗に戻ってしまった。おまけに
しばらくは小屋の外を歩く時もヴィンセントが編んでくれた草鞋や藁の長靴を
履いていたものだから、足も弾力を取り戻してしまっていた。

「うごぇぇええ……」

足の裏には内臓のツボが集中している。
さっき思いっきり踵で石を踏みつけてしまった。
あまりの痛さに俺は悶え苦しむ……
たしか……踵は骨盤周りの臓器だったな。
……身に覚えがありすぎるが、あれだけ足を痛めてりゃあ骨盤も歪むよな。

「はぁっ……はぁ……っ」

ダメだ……あまりに痛すぎてこれ以上歩けそうにない。俺の足ももう限界だ。
ふとあたりを見回すとそこら中にゴミが落ちているのが目に入った。

「うお!!!」

ゴミに群がってか知らないが、無数のアリや見たこともないような
虫がそこらじゅうを這いずり回っている。全くもってひどい臭いだ。
裸足で踏みつけた時には溜まったもんじゃない。
すぐさまその場を離れようと立ち上がり、歩こうとすると
途中で空き缶、ペットボトル、雑誌と新聞紙の束……そして 使いさしの黒いビニールテープ
が至るところに置かれていた。

「ヴィンセントが裏手にゴミ置き場があると言っていたが、
こんなところにあったのか。どれも……甲皇国やアルフヘイム、SHWのアーミーキャンプからくすねてきたものか。」

様々な国のメーカーの名前が書かれた空き缶を手に取りながら、
俺は呟く。

「うぎゃぁああっっ!!」

空き缶の中から例のあの……あれが出てきたのに
思わず驚き、俺は直ぐに空き缶を投げ捨てた。


「もういやだ……おうちにかえりでぇ」
半ば半泣きになりながら、俺は弱音を吐く。
ここに来るまでに鳥肌の立つ光景ばかりを
何度も目に焼き付け、肌に感じ、散々な気分だ。


「いつまでも裸足でいられるか!!ちぎしょおお!!」

だが、この状況に出会ったことで寧ろ
何とかして裸足状態から抜け出す策に頭を巡らす決心がついた。

ゴミ捨て場から出て行く道中で拾った黒いビニールテープをいくつか
懐にしまい、雑誌の束を両手に抱えると 蠢く虫たちを踏まないように
近くの茂みの上にスタスタと歩いていく。

先ほどあのエッグキーパーの出没した倉庫から盗んできた
折込ノコを広げて、雑誌を束ねていたビニールヒモを切ると
いくつかの雑誌をパラパラとめくる。

筋肉の鍛え方……プロテインのカタログ……エロ雑誌……
雑誌の種類もざまざまだ。
ふと、手にとった雑誌のページを開くと
たわわなおっぱいをした美しい銀髪のエンジェルエルフが
温泉を楽しんでる様子を映したグラビアが載っていた。

(何処かで見たことがあるぞ……?この女?)

普段の俺ならおそらく、すぐさまおっぱいに目が釘付けになり、
そのページだけ切り取って今後の食料に使っていただろうが
俺は暫くそのページに映っているエンジェルエルフの女の顔だけをじーっと見つめ、
思い出せないことがわかるとあっさりそのページを何の遠慮もなく真っ二つに千切った。

その時の俺は性欲よりも寧ろ靴を作りたい欲求に駆られるほど疲れが
ピークに達していたのだと思う。

足に雑誌のページの束を巻きつけ、ビニールテープでぐるぐる巻きに貼り付けて
足を覆っていく。その上から更に新しい雑誌のページを貼り付けてはビニールテープで
巻きつけていく。足底にはペットボトルを踏み潰したものを使い、そこから更に
雑誌のページの束をくくりつける。見た目は不格好だが、簡易的な長靴の完成だ。
ぶっちゃけ歩き心地もヴィンセントの編んでくれた長靴に比べればかなり悪いが、
これで裸足で虫を踏んだり、石を踏む危険は軽減するだろう。

「よし……これで……」

俺は再び茂みの中へと歩いて行った


追記:
今になって大変後悔しているが、どうやらこの時
俺が真っ二つに千切ったエロ雑誌はアルフヘイム本国では
あまりのエロさに発売中止になった
アルフヘイムの美人女エルフのグラビア雑誌だったらしい。
タイトルは「アルフのエルフの甘い罠」。(罠と書いて女という送り仮名がついてる)
しかも 俺が見ていたのは
あの絶世の悪女ニッツェシーア・ラギュリが掲載されていた特集号だったらしい……
よりによってコレクターの間では現在の闇市場価格で15万~20万vipで取引きされるほどの
ウルトラレア商品だったのだ……!!!
元々この雑誌のシリーズ、当時闇市で50000vipで取引されるほどのレアな雑誌だったようだ。
そのあまりのエロさに欲求不満の兵士たちの間で盗難が相次ぎ、
所持している兵士が盗難を防ぐために要らない雑誌の間に挟んだりしていたようだ。


       

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Neetsha