Neetel Inside ニートノベル
表紙

無職&幼女
プロローグ

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 だるい。だるすぎる。
 なぜこんなに何もする気が起きないのだろう。

 車の中でラジオを流しながらタバコを吹かしている俺、山田健二(23)は深刻なまでに無気力な状態が続いていた。

 先週派遣バックレてからスマホの電源は切りっぱなし。
 今試しに付けてみると不在着信の嵐。
 それを無視して預金残高をチェックすると三万円と表示されている。

 そろそろ仕事探さんとやばいな……。

 そんなことをぼんやりと考えながら向かいの公園に目を向けると、ガキ共が奇声をあげながら走り回っている。

 俺もついこの前までは何の不安もなく、本気になりゃどんな夢でも叶えられると思っていた。
 実際いい高校、いい大学と順調にコマを進め、サークルで知り合った友人たちと充実した学生生活を送っていた。

 大学三年の冬、ほとんどの学生が就活を始めていた。
 そんな中、俺は自分の将来像というものが全く見えないことに焦りを感じていた。
 サークルやゼミの仲間は銀行や商社、広告代理店など大手企業の内定を勝ち取っていく。

 一方俺はというと適当に受けた大手は全滅。
 焦ってエントリーした中小では圧迫面接によるトラウマを植え付けられた。
 このようにして仲間内で唯一のNNTとなった俺は、徐々に皆と距離を取るようになった。

 人付き合いが悪くなった俺を心配してくれた親友にも嫉妬混じりの怒りをぶつけた。
 結局仲間内でも完全に孤立し、晴れて小学校以来のぼっち状態になったのである。


 大学四年の冬、俺は一人暮らしのアパートの一室に引きこもっていた。
 ゼミの皆は卒論発表を終えて卒業旅行を楽しんだらしい。
 当然NNTの俺にはそこに参加する資格もメンタルの強さも無かった。

 引きこもっていた時期はひたすら漫画、アニメ、ネット小説に浸っていた。
 今までは流行っているものをつまみ食いする程度だったが、引きこもりを機に遅咲きのオタクデビューを果たしたのである。

 腐った日々を過ごしていると、いつの間にか俺の中にいくつかやりたいことが浮かんでいた。
 まず試しに漫画を描いてみた。
 特に絵がうまくもない俺が描いた漫画は某漫画投稿サイトでビチグソ以下の評価をつけられ、漫画家の道は早々に閉ざされた。
 お次は小説である。
 近年はweb小説の漫画・アニメ化が盛んだと知り、半日で描いた異世界転生モノを試しに投稿してみた。
 すると意外にも高評価で、すぐに俺は自分の才能を確信した。
 しばらく書き続けていると雑誌の片隅にも載るようになり、本格的に小説家を目指すようになった。

 当然、そんな簡単にうまくいくわけがない。
 相変わらずたまに雑誌に載るくらいで、有名な賞を狙ってみてもいいとこ二次落ち。
 今は派遣でなんとか食いつないでいる。


 だがコールセンター勤務にも嫌気が差し、バックレて公園の前でボケッとしているのが現在の状況というわけだ。

 はしゃいでるガキ共から少し離れた所で、幼女がベンチに座って本を読んでいる。
 私立小学校の制服を着ていて、見るからに育ちがいい。
 ショートカットが風になびいて揺れている。歳は十二歳くらいだろうか。
 凛とした幼女の読書姿に見とれていると、引きこもり生活中に培った巧みな妄想力が暴走を始める。

 誘拐してしまおうか。
 そんでもって身代金を要求する。
 見るからにいいとこのお嬢様だし、娘の命と引き換えにはした金を払うくらいなら余裕だろう。
 最近のガキは携帯持っているらしいから電話かけるのも簡単そうだし。

 今思えばこの時の俺は脳にサナダムシかなにか湧いていたとしか思えない。
 誘拐なんて今の御時世簡単に足がつくし、実名報道されれば生きていく術はない。

 だが仕事も金も友人も失った俺は文字通りどうかしていた。
 幼女と仲良くなって身代金ゲット……デュフ、デュフフ……という状態だった。


 そんなわけで俺は車から降りて、公園の中に大人がいないのを確認し、ゆっくりと幼女の方へ近づいていった。

       

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