Neetel Inside 文芸新都
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お兄ちゃんのソーセージ
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 大変なことになってしまった、と兄は思う。
 6歳になったばかりの妹が、今目の前で、一心不乱に兄のソーセージを舐めているのだ。
 もしも両親にばれたらどうしようか、不安で兄の胸は張り裂けそうだった。
 妹は病気だった。
 勝手に妹にものを食べさせてはいけないときつく言われていた。とは言え兄も食べ盛りだ。両親は兄におやつを用意したが、妹の前では食べないのが条件だった。
 だから兄はソーセージを、自分一人でこっそり処理するつもりだった。しかしあまりにソーセージに集中しすぎたために、気付いた時には背後に妹が立っていたのである。
 兄のソーセージを見た妹は、もう歯止めが利かなかった。
「食べたい!お兄ちゃんのソーセージ欲しい!お兄ちゃんのソーセージちょうだい!」
 妹は声を上げてソーセージに触ろうとする。
「駄目だ!そんなこと!」
 拒否したものの、可愛い妹の懇願する顔を見ると、兄の心は揺らいだ。
 妹はソーセージが大好物なのだ。その口元からは今にも溢れた涎が零れ落ちそうだった。
 少しだけなら……兄は思った。
「舐めるだけ、舐めるだけだぞ」
 兄が言うと、妹は顔を輝かせて、兄のソーセージに飛び付いた。
 幼い妹の小さな口が兄のソーセージを咥え込む。
「あっ」
 罪悪感を感じつつ、兄は思わず声を出す。
 未熟な舌がちろちろと兄のソーセージをねぶっていく。妹は恍惚の表情を浮かべ、飽きる様子がない。
 様々な感情がない交ぜになって、兄の呼吸は乱れて来る。
 もう駄目だ、これ以上は。兄は妹を止めようとしたが、その前に妹が兄を見つめて言った。
「ミルク飲みたい」
 兄はドキリとした。
 それはいけない。ソーセージばかりか、ミルクまで!
 兄の躊躇いを見て取った妹は、悲し気な顔になって、兄を見つめたまま舌先でソーセージを舐めた。
 そんな妹のいじらしさを見ると、ここまで来たのだ、ミルクを出しても良いじゃないか、という気持ちが兄の中に起こらずには済まなかった。
「出して!出して!真っ白いミルク飲ませて!」
 興奮したように妹が兄のソーセージを激しく舐め回す。
「あああっ!」
 兄は耐え切れなくなって、とうとう冷蔵庫からミルクを出して、コップに注いで持ってきた。
「飲み込むんじゃない。口の中に溜めて、味わったら吐き出すんだぞ」
 兄は言って、ミルクを妹の口に注ぎ込んだ。
「んっ!」
 妹は一瞬眉を寄せて、ミルクを口内に受け止めた。妹の口の端から白濁した液体が一筋垂れる。
 妹はうっとりとして、舌に絡みつくミルクを味わった。
「さぁ、吐き出すんだ」
 兄は言った。
 しかし兄は、妹の喉元が動くのをはっきりと目にした。
「あああっ、ごっくんは駄目だって言ったのに!」
 満足げな表情の妹を目の前に、一線を越えてしまった気がして、兄は頭を抱えた。

       

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