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漫画喫茶のわりには良い寝心地だった。
リクライニングチェアが置いてある部屋じゃなくて、座敷みたいな、床一面がクッションになっているタイプの部屋で、
部屋の三分の一ほどのスペースが机になっている。
腕時計を見ると午前6時17分。チェックアウトの7時まで、まだ時間がある。
ドリンクバーに向かうと、マグカップとつめたい飲み物用のプラカップを、まずは飲料用の蛇口で軽くすすいだのち、
マグカップをコーヒーのマシンにセットした。
「うがいしなくちゃ不潔だよな」と思いつつ、おれは冷えたストレートの紅茶を飲みながら、コーヒーを待った。

コーヒーと紅茶を飲んだあとは、歯磨き等の身支度を済ませた後、パッキングを済ませ、
部屋を出る前にもう一度忘れ物が部屋に残っていないかチェックして、重たい荷物を背負った。

漫画喫茶の外は、まだ活気づいていない街が朝日に照らされていたが、ゴミの悪臭で清々しくなかった。
カツカツと、ハイヒールの音を立てながら派手な女が歩いてくる。
朝日に照らされて魔力のなくなった水商売の女は、今の時間、超現実的である。
そもそも、おれは人間が嫌いなので都会というのものもあまり好きではないが、商売上、人間がいないと金が生まれない。
また、おれの持っている商品は田舎の人間にとってあまり魅力的ではないらしい。
だから、物を売りたければ都会に来なければいけない、というわけだ。
が、ここ3週間でそこそこ物が売れたので、この悪臭まみれた都会からおさらばして、すこし田舎に行こうと思う。
遊び半分、仕入れ半分の旅。
膨張と収縮。
いつもこのために都会に来てるなあ、と思いつつも、田舎に居すぎると都会に行きたくなるのは、いつものことだ。
とにかく。この町はおれをイラつかせる。一刻も早くここから離れたい。