イチ

田舎は建物が全て低く飛び降り自殺も出来ず、ただただ精神が死んでいくだけで身体は生きるしかない。だから私は上京したのだ、東京は死ぬための場所だ。だって田舎は世間体という鎧で死ぬ事も許されない。
 買いたての安い服は肌なじみが悪く、薄手のシャツと長いスカートに歩きやすく就活用に買った葬儀にも役立つ楽チンパンプスを履いて、五時過ぎに家を出る。今日行く場所に合わせてアクセだけは少し高いものにした、よくわからない石のマスカットと山葡萄みたいな色をしたネックレス、緑色の石の指輪。それに比べて使い古した肩掛けにもクラッチにも出来るバッグにはスマホとティッシュとつけま糊とルースパウダーとグロスと、クレカも保険証もほとんど抜いた財布を入れた。これから先の私は何をしでかすかわからないから、身分証みたいな物は抜いていく。都会の人間は信じない、私も含めて。きっとアクセなんかは途中で外したりしないだろうから、でも怖いのでピアスは外していく。
 家の側のゆるい下り坂はヒールでは下り辛く、その先の横断歩道に辿り着いて今日も転ばずに済んだと胸をなでおろす。夕方特有のゆるい温い風と排気ガスの匂いが私の周りを取り囲んで、信号青に合わせて歩みを進める。家のすぐ近くにも飲み屋街はあるのだけれど、多少荒らしてしまったから、今日は電車に乗って遠くの飲み屋に行く。スマホアプリで面白そうな居酒屋を探して、狙いをつけて最寄り駅で降りる。メトロで八駅、八駅も進むのに所要時間は十五分、地元だったら八駅も進んだら四十分以上かかるだろうし、かなり遠くまで行けるだろう。駅に近づくにつれて人が増えてきて、スマホを見て歩きにくくなる。都会の人は能力が高すぎて異生物だ。電話をしながら、スマホを見ながら、人にぶつからずに細い道を歩いていく。彼らには高機能センサーでも眼球に張り付いていて、最適な経路が見えているのではないだろうか。私は数年でその能力を失ったので、ただただ歩くのに集中する。一気に喧騒が増えたのに私は一人で、人が多い方が孤独だ。
 改札を抜けて電車に乗って、早い帰宅ラッシュと被りながら、目的の駅に着く。どっと降りる人たちと一緒にホームに降りて、出口を確認する。めったに来ないのでどっちが何口かもわからないのだ。案内看板で出口を見つけると一緒に電車に乗ってきた人たちに数分遅れで、改札に向かう。彼らはもう何処かへ行ってしまった、この場所は人が多いのに霞のように消えていく。掃いても捨てるだけ居そうな人数、一人一人のアイデンティティはどうやって満たされるのだろう、恐ろしいと身震いをする。
 階段を上ると地上に出て、スマホの地図が示すように進む。霞でありながら実体を持った障害物たちは、誰も同じ場所を目指さなくて、一人路地裏の居酒屋に進んだ。初めての場所に入るのはとても怖い、一杯か二杯ひっかけてくれば良かったと思いながらも路地の片隅にあるスタンドが立っている居酒屋に入った。商売屋さんの店先と思えないすりガラスのアルミ製の事務所の勝手口のような扉を開けると、カウンターが延びた店内が見えた。
「いらっしゃいませ」
 早く来たつもりだけれど、常連のようなおじさんが一人、年齢不詳の女性が一人もう飲み始めていた。お好きな席どうぞ、という自主性の無い私には辛い言葉を優しさで投げかけられて、二人から遠い入り口よりの席に腰をかける。ビール、と言いながらおしぼりを受け取って、メニューを開く。
 一品料理、焼き物、煮物、お食事に分けられた見開きをめくるとドリンクメニューが出てきて、細長い冊子に似合いの丁寧な文字で種類分けされていた。店内に貼ってある黒板に本日のお造りと、オススメが書いてある。辺りを海外に踏み込んだ異国人の気持ちで少しずつ様子見をしていく。瓶ビールが届くのと同時にお通しのミドリの茎っぽいものにハムと玉ねぎが和えてある小鉢が運ばれてきた。一席に一膳ずつ備えてある割り箸を割ってお通しをに口をつけると、茎だと思っていたものはセロリだった。しゃきしゃきとした歯ごたえと今まで食べた事のないセロリとハムと玉ねぎのマリネの味わいに満足する。顔を上げて配膳をしてくれた女将さんのような綺麗なお婆ちゃんに笑顔を向けると、注文と察したのか側まで来てくれた。
「揚げ出し豆腐と刺身盛り合わせ、って一人前大丈夫ですか」
「はい、お作りできますよ、以上でよろしいですか」
「ええ、お願いします」
 女将さんは数十年若い私なんかより、若さに頼らない美しい笑顔で注文を受けて、隣の旦那さんなのかわからない男性の板前さんに注文を伝えていた。二人で切り盛りされている店内はこじんまりとして、カウンター以外には奥に座敷が一部屋あるだけみたいだった。割烹や寿司屋と居酒屋の中間のような小奇麗で整った店内は板前さんと女将さんの二人で切り盛りされていて、静かで、それでいて気取っていない中に気品が漂っていて、ああ土足で踏み荒らしたいなぁという気持ちを押さえ込んだ。美しく整った桐のような木目のカウンターテーブルに、お醤油と一味と爪楊枝しかない調味料類。カウンターの側には魚が置いてあるガラスケースがあって、魚の死体が鮮明に生きた姿を残しながら整備され並べられていた。私の死体もこんなに綺麗ならばいいのにと思いながら、自分の死んだ場合の利用価値の無さに絶望して二杯目にハイボールを頼んだ。
 ハイボールと刺身盛り合わせは同時に来た。ジョッキではなくビールグラスのようなものに入れられたハイボールと鮪とイカと鯛とバイ貝が並んだ盛り合わせは中華の陶器のような器に盛り付けてあって、見目も美しい。隣に置かれた醤油皿にイカを、最初は山葵を付けずに口に運ぶ。
「美味しい」
 思わず言葉が零れて、カウンターの中に目をやると、女将さんがにっこりと笑い返してくれた。美味しい、良かった、良いお店は新鮮だからまだ食べれるけれど、チェーン店での刺身なんか生で食べれるレベルじゃないものを出してくるから困る。生まれた土地が海に面していて、漁業が盛んだから生魚の新鮮さが舌に染み付いてしまっている。
 気軽に話しかけられる場所ではない空気に、一気にアルコールを胃に含ませて、一時間くらいで退散するかな、とスマホを見る。雰囲気は良いのだ、とても、ただ私が場違いなだけで。綺麗なガラス細工の中に薄汚れたエナジードリンクの空き瓶が入り込んでしまったようなだけで。
「こんばんは」
 低音の声が聞こえて、おじさんと綺麗な女の人が入ってきた。すらっとしたグレーのスーツを着たナイスミドル、という言葉が似合う男性と、若くて清楚なワンピースの似合う全てが綺麗に整えられた女性だ。ああ、同伴、とかいうやつか、と思ったが目線をカウンターに戻した。戻したところで揚げ出し豆腐が来て、箸を入れる。切り分けた先に大根おろしと生姜を一口分のせて、口に運ぶと、先ほどと同じように美味しいという言葉が漏れた。
 まだアルコールで舌がいっていない一軒目は美味しいお店に限ると笑顔が浮かんでしまう。二軒目、三軒目と重ねるほど舌も痺れるというか、おかしくなるので肴など塩なんかでいいのだ。もっと言ってしまえば、チェイサーの弱いお酒かお水があればいい。次には山葵をつけた刺身に口に運んで、ハイボールを流し込む。
 女将さんは常連のようなおじさんと、さっき入ってきたナイスミドルは連れの女性と、話していて、一人で飲む酒は美味しくて冷たい。ナイスミドルと女性は奥ではなくカウンター、私の一席空いた隣に座っていて、女性の可愛らしい声が響く。かつん、と上唇に氷が当たって、ハイボールの終わりを教えてくれる。中々ハイペースで飲んでいるな、と思いながら、メニューを開く。
「すみません、焼酎お湯割りって出来ますか」
「ええ、大丈夫ですよ」
「じゃあこれお湯割で」
 メニューを指差して注文をする。酔うと呂律が回らなくなって、そんな時でも注文出来る術を私は学んでいる。まだそこまで酔ってはいないけれど。冷たいお酒を飲んだ後は温かいお酒を、それでもこの時期だとお湯割りや熱燗を置いていない店もあるので困る。クーラーの効いた部屋で飲む熱燗は本当に美味しいのに浸透しないようだ、こたつにアイスと同じ原理なのに。
 薄緑色の陶器に入れられたお湯割りはふわりといい匂いがして、湯気と一緒に芋の香りが鼻と目に染み入る。飲むと温かいものが胃の中に広がる。ハイボールで冷え切った胃が徐々に温度を取り戻す。それから再び揚げ出し豆腐を食べて胃に固形物を入れる。
「本当に美味しそうに食べますね」
 ふと隣から声が聞こえて、ナイスミドルのおじさんがこちらに話しかけてきた。私とナイスミドルの間に居る女性が目に入って麗しい笑顔で私を見ていて、珍しい者を見るような慈愛に満ち溢れていて気持ち悪いと吐き捨てたくなったが喉元でぐっと堪えた。酔っ払うとこのストッパーというか、弁というか、つまりは理性が失われて声に出て、本音が世に出てしまうので今はまだ社会人として頑張っている。いや、社会人というと語弊があるか。
「ありがとうございます、だって美味しくて」
「美味しいですよね、僕も大好きなんですよ」
「そうなんですか、オススメとかありますか」
 にこりと笑って、尋ねるとおじさんは煮物系が美味しいんだよ、とメニューを開いて教えてくれた。と、いうか、同伴ではないのか、いいのか、相手の女性を放って私なんかの相手をして。面倒に巻き込まないでよ、と思いながらおじさんに進められた煮物を頼んで、話を切る。同性とは仲良くしたいので、あまり女の敵になるような行為はしたくない。人類皆兄弟、世界平和という普段の言動とは対極の考えが私の根元では巣食っている。
 ちょび、とお湯割りの湯呑みに口を付けて、口の中で湯冷ましをして胃に流し込む。スマホに逃げてしまおう、と卓上に置いたスマホ画面を指で弄る。ネットは膨大な有象無象の情報に溢れているので、それを興味が無くても見ていれば時間は大抵潰せる。
 頼んだ煮物も来て、お湯割りをもう一杯頼んで、お湯割りが来るまでに杯を空けて、煮物を摘んで。大分胃と脳がやられてきた。
「で、本当にオープン戦始まったのに低調でまいるよ」
「スロースターターなんですかぁ?」
「いやいや、それならいいけど、そのノリで最後まで行かれたら困るからね。ドラフトだって負けていたしなぁ、はぁー、家帰って負けてたら気分が悪くなるよ、実際」
「確かに」
 その会話に自然に混ざってしまって、はっ、と口を押さえる。
 おじさんと女性の会話に入ってしまって、酒の周りを感じる。声は聞こえていたが、知らない人の会話に入るなんて酔っ払いそのものだ。彼らも、え、という風にこちらを見ている。
「あはは、すみません、聞こえちゃって」
「お嬢さん野球わかる口?」
「えーっと多少、多少ですよ。熱狂的ではないです、はい」
「いいねぇ、寧々ちゃんはわからないもんねぇ」
「わからなくないですー、社長がマニアック過ぎるだけですー」
 口を尖らせて頬を膨らませる顔は可愛らしい、可愛い女の子しか出来ない怒りの表現だ。住む世界の違いを感じて、酒に口を付けて自嘲の笑いを隠す。
「じゃあ質問だ、一番大事な打順はどこだと思う?」
「あーそれ私にもしたやつ」
「しっ、寧々ちゃん正解は黙っててね」
 いきなり始まったクイズにえー、と苦笑いをする。嫌なものが始まってしまった、正解してもこの連れの女の子に睨まれておじさんに同志扱いされるだけだし、不正解でもおじさんの有難い持論解説が始まるだけだ。金を払って面倒な説法は聞きたくない、私はキャバ嬢じゃないのだから。
 悩んで笑っているふりをして、もう一度お酒を飲んだ。もういい、二度と関わりにならない人だろう、持論潰す勢いで戦ってやろう。
「んー六番」
「え、何で?」
「クリーンナップまではピッチャーも気を張るけど、抜けた時に打てないような人だと意味が無いし、クリーンナップが繋いできたときに途切れさせるような人でもダメ、それでいて守備との兼ね合いも合わせて七番、八番よりも打てる打者を置かないといけない、そこにベテランの技巧者を置くか、若手の有望株を置くか、一番そのチームの考えている事がわかるところだから。もう少し話せって言われたら話せますけどここらへんで」
 嫌な独り語りをした、とおじさんに視線を向けると、驚いた顔をしていた。と思ったら、急に立ち上がって、私の側に来て握手を求めてきた。呆気に取られながらも手を差し出して固い握手を交わす。そして、そのまま自分の席に戻っていった。私はどうやら正解を導き出したようだ。困った事に。
 お湯割りを一口口に含んでいる間に、おじさんが持論を口説きだした。
「お嬢さん、僕は甚く感動しているよ、僕も同じ意見だよ。こんな所、というのは語弊を生じてしまうかもしれないけれど、この場でそんな女の子と出会えるなんて。六番打者が一番見所があるところなんだよね」
「そーなんですよーやったー正解嬉しいー」
 馬鹿っぽく振舞ってみたが全て後の祭りだ。ああ正解をしたことで連れの女性からの目線が痛い。でも、まぁ、それもどうでも良くなってきた。そう、何もかもどうでもいいのだ、いい感じで酔いが回ってきたようだ。回るまで時間がかかって非効率で、代謝が悪い身体だ。良いよ、私を恨んでも邪魔者にしても、憎んでも。
 視線を連れの女性に向けると、彼女は笑顔で瞳の奥は笑っていない大人の顔をしていた。私はバツが悪くてすぐに視線を反らして目の前にある煮物を箸で摘んだ。
「いやーいいねぇ、好きな球団あるの?」
「えー無いですー私プロ野球じゃなくて高校野球が好きなんですー、あの一度負けたら終わりみたいな切迫感が好きで」
「ああなるほど」
「おじ様は好きな球団あるんですかー?」
 盛り上がるほどに冷気を感じる。そしてこの辺りから全てが自分主義で世界を回すようになる。同伴である女性の気持ちも、お店の雰囲気も、全ての配慮を失って世界中から嫌われてもいいという無敵モードになるのだ。だって元々誰にも好かれてはいないのだ。
 お腹はいっぱいになってきたのに、酷く喉が渇く。飲んでも飲んでも口に酒を付けていないと呼吸困難になってしまいそうな息苦しさだ。喫煙者の禁断症状のように、アル中のそれのように、唇にアルコールが触れていないと死にそうになる。血中に酸素じゃなくてアルコール成分が無いと死ぬのだ。
 おじさんは嬉しそうにこちらに話しかけてきて、連れの女性は板ばさみになっている。可哀想に、と思うけれど、それをどうにかしようという気力がアルコールに奪われている。どうか、強硬手段に出てくれよ、という私の思いが通じたのか、女性はおじさんに、そろそろ時間ですよ、と告げた。
「ああ、そうだね、君、次のあてはあるのかい?」
「ん?私?次のあて?」
「二軒目は決まっているの?それとももう帰るのかな?」
「二軒目はー決まってないですーどっかオススメありますかー?」
「ふふっ、じゃあ一緒に行こうか」
 一緒にお勘定を、という言葉を聞いて、はっと顔を上げる。良い感じに食べ終えて飲み終えているけれど、まさかこの後もこの人たちと一緒になるとは思っていなかった。連れの女性もそれは同じのようで、驚いた顔をしたが一瞬で元の笑顔に戻した。ああ、プロなんだな、と寒気がした。
「え、悪いです!自分で払いますよ、てか、え、一緒に?」
「払う払う、僕に恥かかせないで。一緒に寧々ちゃんのお店行こうよ、結構女の子も来てるんだよ」
「いや、えっと、私そういうお店初めてでよくわからないので、えーっと」
「良いの、良いの、僕が持つから。もうちょっと野球談義しようよ」
「私は大歓迎ですよーお姉さん飲みそうだしー!」
 寧々ちゃんと言われた女性は私の右腕に抱きついてきて、嘘を付けや、という言葉を押し込めた。まだ言葉を押し込める力が残っていたのに感動しながら、促されるままに店を後にした。
 最後に少し残ったお湯割りを一気したのが効いたのか、かなり酔った千鳥足になりながら、三人で連れ立ってタクシーに乗った。三人で乗った後部座席は真ん中に座った寧々ちゃん、がかなり私側に詰めてきて狭くて、途中コンビニででも缶ビールが欲しくなるような密閉空間だった。だけどここで私が乗っている人たちを全員殺して車のロックをかけても密室殺人事件にはならないのだろう。気持ち悪さは殺人事件並みなのに、私は笑いが零れて来ていて、二人の会話に口を挟まなかったのでただの愛想の良い人になっていた。
 タクシーはそれほど走らず、近くの高級クラブが立ち並ぶ場所で止まった。おじさんが支払いをするので一番最初に私が降りて、二人を待った。ゆっくりと降りてくる二人は腕を組んで、歩き出して、除け者にされた気がしながら後ろに続いた。薄汚れていそうでいながら、一足ビルの敷地内に入ったら格式しか無さそうなビル群の中、すぐ前のビルのエレベーターに乗って、二階に辿り着いた。二階なら階段でもいいじゃんか、と思う無粋を押し込めて、エレベーターのすぐ前、ドアマンのようなスーツを着たガタイの良い男性に、いらっしゃいませミハヤ様、と言われておじさんは軽く左手を上げた。ミハヤってどんな漢字を書くのだろう、とおじさんの顔を見る。
 扉は開かれ、煌びやかな世界が垣間見えたところで、ドアマンを見ると、驚いたような顔をしていた。
「え、滝澤?」
「ん??そうですけど??」
 ドアマンはしまった、という顔をしたが、それに何故か寧々ちゃんが食いついた。
「えーーー二本松君知り合い??凄い偶然!」
「知り合い?」
「あーえっと、はい、中学の同級生で」
「そうなんだ、じゃあ同郷同士の再会って凄い貴重だね、社長凄い偶然作り出したんですよ、社長凄いです!」
 おお、流石という顔をしていた私は、よくわからないが中学校の同級生と再会しているらしい、このドアマンの顔を全く思い出せないが。寧々ちゃんが上手い事おじさんを室内に入れて、私は二本松君といわれる人とドアとエレベーターの三畳くらいのスペースに二人きりにされた。黒い石が入っている床は綺麗にピカピカ輝いていて、重厚そうな扉が私の侵入を防いでいるようだ。
「ごめんなさい、私記憶力が低くって、二本松君、だっけ」
「いや、あーっと一緒やったつーか、一回も同じクラスはなった事ないよ。ごめんな、俺の記憶力がアレなだけ」
「マジーかーーーそっかーーー同じ中学なら同郷か、うん、懐かしい、二本松とかそれっぽい」
「それっぽい、って……、ごめんな邪魔して」
「いや、いいの、何かわかんないけど居酒屋で意気投合したおじさんに連れてこられただけだから!」
 語気を強めて笑うと、ドアマンである二本松君も笑った。縦横に大きい彼が笑うと母性本能がくすぐられるようだ。私は彼と反対側の壁に勢いよく背中からもたれかかると、大きな溜息をついた。
「てかここからお願いね、私何かあのおじさんに気に入られて連れてこられたんだけどさ、あの寧々ちゃんとか言う人に迷惑かかりそうだしテーブル行きたくないんだよね、二本松君がどれくらい力持ってるか知らないんだけどさ、こういうお店ってバーみたいのない?私そこで一、二杯くらい飲んで多少売り上げに貢献して帰りたいんだよね、どうにかなんない?」
「おお、明け透け。そうか、とりあえずバーはある。そこに案内するよ」
「なるほど、力は無いってことね、オーケー、じゃあ私は今から酔っ払いになるわ」
「は?」
 勢いをつけて壁から身体を離して、二本松君の腕に抱きつく。そしてそのまま自分で重苦しい扉を開いた。
「ちょ、滝、澤!」
「すごーーーいーーー、一緒に飲もーーーー!!あはっははは!」
 腕をそのまま引っ張って、目に入ったバーの高めの椅子に座った。隣には直立不動の二本松君が立つ。座ったバーの前にはバーテンダーと思わしき初老の男性が立っていて、表情を崩さずにいらっしゃいませ、と頭を下げた。そしてとても自然にコースターを私と二本松君の前に置いた。
「どーもー。このドアマンの彼と同郷だったので一緒に飲みたいなーって思ってー良いですよねー?」
「ええ、うちの二本松も光栄でしょう、今ドリンクメニューをお持ちいたします」
「お願いしまーす!」
 このようなクラブに不釣合いな声を張って、存在を強調しながらバーに座った。雰囲気を壊してしまったかもしれないが、保身に走った私にはさした問題ではなかった。高い位置にある椅子に座って、渡されたメニューを開くと値段が書いていない一覧があった。オリジナルカクテルと名付けられたよくわからない名前のものを頼んで、二本松君にメニューを渡すと、彼は観念したようにビールを頼んだ。
 私は彼の左耳に口を寄せると、ぼそぼそと呟いた。ごめんね、同郷の話はわからないから私の身の上話でも笑顔で聞いていて、ホントごめんね。そう言うと彼は困ったような笑顔で頷いた。そこから声のトーンは呟くように落とした。落としていても酔っ払いの音量調節だ、きっと上手いこといっていないとわかっていた。
「二本松君久しぶりだねー、こういった場所で働いているなんて知らなかった。え、私?私はそうだな、数ヶ月前に出てきたの、こっちに。仕事はうーん、デイトレーダーってことにしておいて、ふふっ、そんなに儲けられないから、多分。てか逃げてきたのよ、あの田舎から。だって凄く怖いの、二十代後半で結婚していないことが殺人くらい重罪で次々に男性を紹介されるの。あそこの普通は私の異常なの。彼らの普通は私をずっと蝕んでいくの。常識ってよくわからない、だって場所で違うもん」
「そう、だな」
「郷に入りては郷に従えっていうけれどさ、従う仕来りが信じられなかったら無理だよね。数年都会で住み慣れちゃったら、どうも十年ちょっとも住んでいたはずの田舎が異質になっちゃうんだ。慣れって怖いよねー、慣れてさ、そのルールが普通になっちゃったらさ、異常が普通に、普通が異常になっちゃうの。どっちが正しいかなんてわからないけれど。あれ、ほら、スタンフォード監獄実験と一緒。映画なったやつ。あれ?あれって役割分担すると、どんどんその役に没頭して精神蝕むって話だっけ、あれ、わかんない、ごめんねー」
 一息に思った事をそのまま言葉にすると、二本松君は苦笑いをした。言い終わると同時にお酒が来て、にっこり笑って受け取ると口を付けた。甘ったるいオレンジジュースみたいな味が舌に広がって、美味しい、と笑った。もう何でも美味しい、甘くても苦くても。細長いカクテルグラスに入ったオレンジ色の液体が同じような色をした氷の隙間に入っていて、飾りオレンジとよくわからない赤色の飾りが付いたままになっている。お通し代わりなのか、白い小さなスクエア皿が二枚、ナッツが入れられたものと、何も入っていないものが出てきて、空の皿にカクテルの飾りを引き抜いて入れた。
 二本松君を見ると、ビールに口を付けていて、苦笑いをしていた。こちらもナッツに手を伸ばして口に入れる。
「固っ、あ、これ殻付きか」
「ピスタチオだよ瀧澤さん」
 吹き出すように二本松君が笑って私も笑う。ピスタチオを親指と人差し指で口から出すと、皿にそれを置いた。綺麗な皿に汚い唾液と噛み跡が付いた殻がのる。口の中に油が広がって、甘いカクテルで押し流すと少し重たくて胃が苦しい。重苦しい胃を軽減したくて、よくわからなくて、口を動かす。
「美味しいねー、美味しいですこれー。ふふ、私こういうお店来たの初めて、お洒落で気後れしちゃうね」
「そんな……」
「気楽にお過ごし頂ければ嬉しいですよ、こちらも」
「えーありがとうございますー。でもあれだね、よく二本松君私だってわかったね、結構中学から年月経っているからそこそこ老けたと思うんだけど。あんまり変わらないのかな、私、アラサーなのに。そろそろ大人の魅力?みたいの出てもいい頃だよね。変わらないって怖いね。うん、変わらないって凄く退屈だと思っていたんだけどさ、この歳になると変わらないって怖いんだよね。自分のことだけどさ、普通年数が経ったら人間って成長か劣化かするじゃない、それは風景とか社会とかも同じなんだけどさ。これだけ自然災害やら国際化やらで多種多様に変化している世の中で何年も変わらないって恐ろしくておぞましいことだよね。ずっと立ち止まったまま、みたいな。ずっと私は取り残されているみたいな」
「瀧澤は、変わったけど変わってないよ」
「そうかなぁ」
 勢いをつけて喋る、カクテルを飲む、笑う、その繰り返しで息を繋ぐ。相手の話を聞くなんて高度なコミュニケーションテクニックは持っていないので只管喋る。それは相手が店員だから出来る悪手だ。
「ご歓談中失礼します、ミハヤ社長が呼んでいらっしゃいますので、申し訳ありませんがあちらの席にお願い出来ますか」
 食べようとしたピスタチオを持った状態で後ろを振り向くと中年のスーツを来た男性が胡散臭い笑顔で私を見ていた。少し視線を動かすと奥の席におじさんが見えて、片手を上げていた。何てスマートだと思っていたのに、面倒臭いジジイだ、と顔が曇る。それになんだそのあの席行け、みたいな不躾、敬語として正しいのかしら、とキャバ嬢扱いするんじゃねぇと思いながら溜息をつく。はいはい、そりゃあ常連の男性と一見さんの煩い女とを天秤にぶら下げたら勢い良く常連さんに傾きますものね、私は大手企業のご令嬢ではないですものね。
 それでも表情筋を持ち直して、笑顔を作って席から立ち上がる。残りのカクテルを一気して、上唇に氷をぶつけてからごちそうさま、と言ってスーツの中年男性に連れ立った。楽チンパンプスは久しぶりに柔らかい絨毯を踏んで、おじさんの下に辿り着いた。席に着いている寧々ちゃんを含めた女の子達は笑顔で私を迎えてくれて、困ったほどに客商売に慣れた方々だ。 
 重厚感のあるソファー、おじさんの隣に寧々ちゃんと反対側に煌びやかなイブニングドレスのようなロングドレスを着た女の子、眩しくて目が細くなってしまいそうだ。光り輝くものは粉々に壊してしまいたくなるので、硝子を叩き割ってそこを裸足で歩きたくなる衝動に駆られる。
 やっぱりお嬢さんと話したくなってね、と言って話始めたおじさんは前より酔っているみたいだった。話の内容はプロ野球から高校野球、ついでにおじさんの出身地の甲子園出場歴、そして最近のその県出身のプロ野球選手で、そこから引退後の選手がやっているビジネスやら馬主やらの話から競馬、そして競艇や競輪、その後に何故かドラッグの話になって、チャイニーズマフィアの話なんて胡散臭い都市伝説の話にもなって、日本経済と景気の話になった。はっきり言って聞き役に回るだけで、私はそんなに発言をしていなくて、これだったら隣の綺麗なお姉さんに聞いて貰えばいいだけじゃないのかよ、と心の中で毒づいた。
 私の手には寧々ちゃんが作ってくれた水割りがあって、お上品に少しずつしか入らない細いグラスに大きな氷が容積を圧迫しているのですぐに飲み干してしまう。水割りはそんなに早く飲むものではないのかもしれないが、おじさんの話を聞く以外に何かをしていたかったので、飲むしかなかった。指先は氷の入ったグラスから伝導する温度で冷え切ってしまっていて、それは口内も胃もそうだった。そしてそれとは逆に頬は酷く熱くなってきて、更年期障害みたいに火照ってきた。
「最近は不動産業も陰りが見えてきたみたいだよ」
「そうなんですかぁ、オリンピック景気に湧いててチャイナマネー入ってるって聞いたんですけどー」
「そうらしいけど、もう天井は来たみたいだよ」
「そうなんだぁ、知らなかったー」
 馬鹿みたいに知らないことと、褒め称えるような表情をすると場は丸く収まる。それくらいどんな女でも知っているやり方だ。
 ふかふかなソファーに座って、よくわからない話に相槌を打つ。溜息を押し殺して天井を見ると、ホールに一つだけ大きなシャンデリアが付いていて、その下に大きな花瓶、花瓶というよりは陶器の壷といった大きさの器に何本もの花と緑が突っ込まれて不自然に咲き誇っている。今あのシャンデリア目掛けてグラスを投げつけて、中心にストライク当たって割れたら、雪の結晶みたいに硝子が砕けて花瓶に降り注ぐのかな、とその姿を想像すると綺麗で笑えた。グラスみたいな軽いものでは割れないからおじさんが飲んでいるボトルとかかな、と掴みやすいその形を見る。中身さえ入れ替えれば荘厳な見た目で高い料金を取れそうなそれは、華麗な花瓶と一緒の消耗品であって、一度開けたらお仕舞いの、私みたいな一般人には手の届かない高級品だ。
 高級品、とは何だろうか。よくわからない、とグラスに口を付ける。何も、何もかもがよくわからないのだ。だって、もう、大分酔ってきたのだ。
 急に内臓が寒く感じて、二の腕と肩辺りに震えが来て、腕を抱いた。薄手のシャツが手のひらでくしゃっと皺になる。
「ちょっとお手洗いに、失礼しまーす」
 笑って立ち上がったつもりが、よろけておじさんに寄りかかる形となってしまった。ごめんなさい、とその肩に手をかけて身体を起こすと、おじさんは大胆だねぇ、と笑ってきた。何が大胆なのか全くもってわからないが、大胆らしいので目を合わせてにっこりと笑って舌を出して、テーブルから離れた。歩きにくいったらない絨毯を、歩いていると直ぐ横に黒服と思われる人が併んで来て、お手洗いに案内してくれた。手洗いを済ませて、横の洗面台に申し訳程度に付いている鏡で顔を確認すると肌の色は変わっていないが目が据わってきていた。流行のうさぎ目メイクというやつかしらと笑う。つけまつげが取れていないので良しとして、化粧道具が入ったバッグを忘れてきたことに気付いて備え付けの油取り紙でテカリを軽く取って出た。
 大失敗だ、トイレに立ってそのまま帰ろうとしたのにバッグを忘れてきた。酔っていて全然上手に立ち振る舞えていないどころか、馬鹿な行動をしている。馬鹿は今に始まったことではないか。
 お手洗いを出てすぐに黒服の人がおしぼりを渡して来て、これはドラマで見たやつだ、と興奮した。そして、その人のおしぼりを渡す手に触れながら少し近寄る。
「ごめんなさーい、酔っちゃったみたいで、帰りたいんですー、お会計お願いしまーす」
「あ、っと、会計は大丈夫だと思いますよ」
「ふふっ、そうなんだー」
 違ぇよお前私が帰るのにあのおじさんに上手くアシストしろよってのを酔った勢いで可愛い子ぶって言ってみたんだよ、本当に上手いことかわすな、と笑う。黒服が役に立たないとわかったので、すぐ身体を離して席に戻る。もう直球で帰る宣言しかないので、酔った勢いで好き勝手にしようと思う。
 ふわりふわりと絨毯を歩くと、おじさんが完全に女の子達に夢中な姿が見えて、笑顔を作って近づく。
「すみませーん、私酔っちゃったみたいでお先失礼しますね」
 にこりと笑って、寧々ちゃんに目配せをすると、彼女はさっとバッグを渡してくれた。おじさんが反応しきれないうちに、バッグを掴んでご馳走様でした、とお辞儀をして入り口に向かう。あまり早く動くと酔いが回ってしまうし、すでに回っているのだけど、腰から崩れそうなくらいには酔っているので逸る気持ちを抑える。黒服なんかよりよっぽど寧々ちゃんの方が役に立つ。が、その黒服に入り口の扉を開けてもらって、二本松君がエレベーターのボタンを押しているのを見て、まだ後ろに黒服の人がいるのにその場でしゃがみ込んでしまった。石の床はひんやりと冷たくて、体温が奪われてしまいそうで何もかもが冷たい。思わず笑ってしまって、おそらく心配して腰を落としていた二本松君を見ると苦い顔をしていた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、かな?ここって最寄り駅どこになるの?」
「えっ、この状態で電車乗って帰る気?」
 二本松君は驚いたように言って、タクシーの手配をしようと動いた。
 ここからタクシーは結構お金がかかるぞ、と急に頭が冷静になって、立ち上がろうとする。どうしてこんな世の中が発達しているのにどこでもドアが発明されないのかしら、瞬時に家に帰りたいのに、もう二十一世紀なのに。立ち上がろうとしたが、上手くヒールが床を捉えなくてよろけて二本松君に抱きつく。スーツに包まれたがっしりとした身体に抱かれて、顔を上げると二本松君が笑っていた。この軽蔑と浅ましさに満ちた笑顔を私は知っている、馬鹿な女だと、それでいて変な気持ちを起こしている顔だ。この小さな空間で嫌な顔だ。
 私の意見は無視に近い形で二本松君が私の腰を掴んでエレベーターに乗せて、そこで掴まった小動物のように大人しくしていた。寒いのに、二本松君の身体は温かい。彼の着ているスーツは手触りが良くて、二本松君の身体に合わせて作られているようだった。
 エレベーターを降りると少し歩いて、雑居ビルみたいな所の路地裏を抜けると古めかしい駐車ビルが建っていた。歩いているのか、運ばれているのか、飛んでいるのか、起きているのかわからない状態のまま二本松君に連れられてエレベーターにまた乗せられた。次の記憶ではアルファードみたいなミニバンが目の前に出てきて、助手席に押し込まれた。背中に固いものが当たって、見るとクリップボードでそこに挟んであった書類を折り曲げてしまっていた。
「あれ、タクシーは」
「送迎車で送ってあげるよ、それかパクったチケットあげようか」
「あー、いい、いい。もういいよ、普通に帰る。帰るお家わからないけれど」
「は?」
「家の場所誘導出来る気がしない、てか眠い」
「そっかー」
 そのまま二本松君は私にキスをして、良い子にしていてね、と言って車を走らせた。揺れが気持ち悪いと上がってくる吐き気を堪えて、助手席に塩をかけられたなめくじのように縮こまった。車の中は変なにおいがして、温かかった。
 それほど距離を走る事なく停車して、私は知らない場所に降ろされた。抱えられたまま階段を上って、部屋に連れ込まれた。ワンエルの部屋のベッドに転がさせられて、二本松君は冷蔵庫からペットボトルを私の枕元に置いた。
「俺戻るけど、瀧澤吐くタイプじゃないよね」
「うん、吐く時はトイレ」
「良い子だね、トイレはこっち」
 二本松君は私の頭を撫でて右側にある扉を指差すと、部屋から出て行った。気持ち悪いし、ここはどこだ、という気持ちの中眠りに付いた。良い子というのが口癖なのだろうか、きっしょい口癖だな、良い子、酔い子、と口の中で泡を作りながら意識を手放した。

 目を覚ますと暗くて、横に二本松君が寝ていて、私は半裸で、確認するとつけまつげは外れていなかったので不思議な感動が湧いてきた。つけまのりはなんと強い接着力なのか。私にそこまで執着してくれるモノなんてお前くらいのものだ。
 そもそも何故ここで寝ているのか、ぼんやりとした頭が私に正解をくれない。そして何故半裸なのか、脱がされたが得意の貞操観念の高さが露呈してしまったのだろうか。それは不思議でありながら私を護る無意識の盾であって、今は使われなくて良かった武器であったのに。覚えていない脳をフル回転させながら答え、真実に辿り着こうと必死だ。起き上がって二度ほど頭をふると、一緒に胸も揺れた。上半身は裸で下半身はパンツとパンストというわけのわからない状況だ。おそらくやってはいないのだけど、何かはあったのだろう。頑張って口だけで抜いたのかもしれない、口の中が何だか粘っこい。知らない男のちんこを舐める事で眠る事を許してもらったのだろう、可哀想な過去の私。すぐ被害者面してしまって、自分で自分が面白かった。胃が重苦しくて、酒のせいか精液のせいかわからなかった。
 二本松君が私が動いても起きなかったので、気をよくして彼の胸元にもぐりこんだ。寒い、服を着ていないから寒いのだ。薄い清潔ではなさそうなよれかけた毛布と薄手の掛け布団の中に二本松君がスエット姿で寝ていた。すんすんと鼻を鳴らすと人の布団の匂いがして、嫌な匂いでなかったのでそのまま大人しく目を閉じた、いや閉じようとした。横で二本松君の目が開いた。
「起きた?」
「寝た」
「おはよう」
「おやすみ」
「まだ酔ってる?」
「そこそこ」
「そっか、下脱がして良い?」
「一宿一飯の礼として許そう」
「いっしょくいっぱんの礼?」
「わからないならいいや、てか写真は止めて」
「いや、撮ってないよ。すっげー抵抗したじゃん」
「おお、記憶の無い過去の私グッジョブ」
「わっけわかんねぇ」
 腰を上げるとパンストとパンツは綺麗に脱げて行った。一層寒い。全裸の私と服を着た二本松君。使い古して柔らかくふんわりとした毛布に下半身の素肌が直に触れて鳥肌が立った。
sage