Neetel Inside ニートノベル
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ある程度の案件を片付け、小休止を取ろうしてしていた蔵人だったが、クライアントからのメッセージが一件入っていることに気が付いた。

「大手ヘルスケアの執筆と校正依頼?」

依頼内容には有名メディアに掲載する記事のトライアル募集と書いてあり、報酬も一文字一円以上とWEBライティングとしては破格とも言っていい報酬だった。
募集人数も数十人越えと、かなり大掛かりな案件なのが分かる。

すこしばかり興味を持った蔵人だったが、これだけの大規模なプロジェクトだと打ち合わせや追加執筆も頻繁にあるかもしれない、そのうえ募集要項にはWORDとExcelが必須と記載されていて、そのどちらの使用経験のない蔵人としては、手を出すのに躊躇する案件だった。

「まあ、うまい話には裏があるってよく言うし、見なかったことにしよう」
そう呟いて蔵人はメッセージを閉じた。
ひょっとしたらこれがこの業界でのし上がるチャンスなのかもしれない、だが今でもギリギリ生活できるだけの収入は確保できているから、無理に請け負うこともない。



蔵人は遅すぎる昼飯を取り、気を取り直してタスク作業を再開することにした。

タスク作業は気楽でいい――そう考えながら蔵人は記事作成を進める。

まとまった記事を請け負うプロジェクト方式とは違い、タスク作業は一件が数百文字程度の単発案件だ。
その時の気分で選べるタスク作業の方が、ノルマや責任を負うこともなく精神的にも負担が少なくて済む。

這い上がって眩しい光に照らされる世界を目指すよりも、自ら薄暗い穴倉の底で生きていくのも気楽で良いと、蔵人は最近思い始めていた。

続く

       

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Neetsha