罪悪感だけが残る作業であるはずだった。
悪いことをしているという自覚も、罪も、責任も判っているはずだ。
なにより、私の人生で私がしていることを咎められていない場面を見たことがないし、そもそも、私が暮らしていた国は平和な国だったので、そういったことをする人間も少なかっただろう。
もちろん、ニュースなどでそういった罪の話題が挙がると少なからず、何でそんなことを、と半ば馬鹿にした気分で眺めていたようにも思う。
けれど、いざ自分がその行為から逃げられなくなったときに。
思い出す。
そうだ、私は、
『盗む』という行為をすれば
誰かが私を、追いかけてくれるのではないかと、
そんなことを期待したのではなかっただろうか?
遠き日の感覚を今は思い出せず。
今日も私は追いかけてくれる誰かに縋る。
2、困窮する午後
圧倒的不利な状況とは確かにこのことを言うのだろう。
鑑みて見れば、突如現れた死体の前に、混乱することもなく現場に何故か留まり、一人になった教室の前で死体を眺めながらニヤついていたのだから、そりゃまあ誰が見たって、アヤシイ奴という烙印を押すだろう。
何でそんなことしちゃったんだろうね、と、後悔しても仕方がない。
とりあえずやっちまったもんは仕方がないし、それよりも、この圧倒的不利な状況をどうにかすべきである。
「どうしたもんかなぁ」
「何か?」
目の前の少女が笑う。
先ほど、私を押さえつけた少女とは別の少女。
教室で出逢った、柔和な少女。
つまり、彼女の言葉通りまた再び出会うこととなった。
よくよく観察してみると、先ほどのリーダー格である、・・・桐生? という女子生徒と同程度の存在感を持っている。
が、人相は不気味なほど朗らかで、彼女の周りにだけ暖かい空気が流れているのではないかと思うほど、柔らかい表情と雰囲気を携えていた。
名前はオリビア・・・オリビア・ドイチュというらしい。
ドイチュなんて、なんだかかわいい感じだが。
たぶん・・・・・・性格は絶対に可愛くない。
「いえいえ、何でも」
教室と似たようなつくりの部屋の中、目の前には今の苦い状況とは程遠い、・・・というより甘そうな光景が広がっていた。
口当たりのよさそうな蒸気を上げる茜色の茶に、白より光るテーブルクロス。
三段にもなる装飾豊かなケーキスタンドの上には、唾液も止まらなくなるような甘い色のマカロンやルビーより赤いジャムクッキー、そして極めつけはカップケーキまである。
もちろん、ただのカップケーキではない、ココアパウダーを混ぜているのか茶黒く、カカオの香りを漂わせているその上に生クリームと食欲を引き立てるクランベリーが乗っていた。
他にも、鮮やかなお菓子が見受けられるがそのどれもが、一つとして食堂で出されていない、彼女特製の手作りの洋菓子である。
「どーぞ? お菓子でも食べましょ、いっぱい食べるといいよ」
よっぽど凝視していたのか、オリビアにそんなことを言われてしまう。
記憶はないが、もしかすると私はグルメだったのかもしれない。先ほど食堂でお菓子をつまむタイミングがなかったこともあるだろうが、体の中からダラダラと胃酸が落ちる音がするようだ。
まあ、もう数時間この状態で拘束され続けているから、が原因なのかもしれないが。
時間が経って、お茶が温くなれば再び入れなおす、をもう十回ほど繰り返している。
くそぅ、食べたい・・・。噛り付きたい、飲み干したい。
そんな私の状態を見抜いてか、・・・というより、解かりやすいほど私が滑稽な表情をしているのか・・・彼女は確認するように呟く。
「まぁ僕に自供してくれたらだけれどね」
「・・・ホント、どうしたもんかなぁ」
ほら、やっぱり可愛くない。
ていうか僕っこ。可愛いな。
・・・・・・そう、圧倒的不利な状況とは、所謂兵糧攻めのことであった。
まぁなんとも間抜けな話ではあるが、しかしお腹がきゅうきゅうと恥ずかしげもなく鳴っている上に、転んでも食べられないような茶菓子の数々。
泣いて縋りたくなるのも無理はない。
うん。無理はない。――数時間の拘束、普段にはない長時間の緊張によって、そう仕向けられていたとしても――
しかし、どうしたものか、何かこの食料にありつきながらこの場を問題なく離れられるような秘策はないものだろうか・・・。
「くくく・・・ふふ」
「はい?」
そんなことに思慮していると、オリビアは可笑しそうに笑った。
「いやあ、キミがあんまりにもお腹をすかせた子犬のように、お茶菓子を見つめるものだから、ごめん少しいじめたくなっちゃった」
少しいじめたくなった、で人を数時間も拘束するだろうか。まあ拘束といっても身体を縛られているわけでもないし、食べなかったのはあくまで自供を共用されていたからに他ならないのだが。
「はあ・・・つまり、自供云々を抜きにして食べてもいいと」
「どうぞ、好きに食べてもらって構わないよ」
「では、遠慮なく」
体裁は冷静を装いつつも、わああい! と内心はしゃいでいた私は――こらえきれず、耐え切れず、わかっているものの――気になっていたジャムクッキーを真っ先に頬張る。思っていたよりもイチゴの風味が鼻腔をくすぐり、甘酸っぱさが臍をなでた。
「余程お気に召したみたいだね?」
「ええ! ・・・ああ、いやはい」
「素直なのはよろしい」
笑顔を見せ、紅茶を口に含むと、先ほどと変わらない飄々とした調子でオリビアは本題に入る。
「それで、キミは何であんな所にいたのかな?」
心の隙を縫うようにしてオリビアは、本題に入ったのだろう。
尋問の常套手段だ。
「・・・・・・」
まぁ本題といっても、繰り返し同じ質問ばかりされている。
そして、私もソレが解かっているから同じ答えばかりを言う。
RPGの村人にでもなった気分だ。不愉快とまではいかないが、つまらない。――が、何より恐ろしい――
「それは先ほども答えましたけれど、事件現場に立ち合わせたからです」
「ふうん、で、何で留まっていたの?」
「倒れていた子がいたので、介抱していました」
「その子の名前は?」
「
「その子はどこにいったんだ?」
「さーっと逃げていきました」
「その子の外見特徴は?」
「あんまり覚えていません。背が小さかったことくらいでしょうか」
けろり、と何のことない調子で言うと、しばしの間が生まれる。
丁度いいから渇きを潤すために此方も紅茶を啜った。程よい苦味と渋みが口に広がる。
「あのさあ」
力の入っていない自然な声で彼女は続ける。
「君も知っているとは思うけれど、この学園には
籠の鳥。
そう、まさしく私たちは籠の中の鳥だ。この学園の中、正しく管理され、正しく生きている。
だから、治安を維持するような装置の設置も意味はなく、ましてや混乱に際する備えもない。――それはきっと、とっても異常な事で――
「だからって規律がないわけじゃないし、むしろ規律が正しく機能しているからこそ、警察も裁判所も要らないんだ」
要らない、か。
「・・・それが?」
「警察は、先ほどから僕がやっている誘導尋問を何日と掛けてやるだろう。君が思っているよりも、耐え難い苦痛だよ」
「覚悟はできています」
オリビアは頭を振ると、もう一度私の目を見つめて
「しかしそれは人道的に配慮された上での苦痛だ、僕らは風紀警鐘隊、警察じゃあない」
そう、彼女特有の柔和な雰囲気のままに呟いた。
「僕らには非人道的な尋問を行える資格がある。・・・・・・今ここで体験してもらってもいいんだよ?」
・・・本領、というところだろうか?
いや、きっとこれは、脅しであり、半ば彼女のもがきなのだ。
この尋問を始めてから既に数時間は経っているが、いまだ私の口は割れない。
彼女は確実にあせっている。私が有利であることは確かだ。
そう、判っている。判っているのだけれど。
ふと、自分がいつの間にかスカートの裾を掴んでいることに気がつく。
折り目正しく伸びていたスカートに皺ができるほど、強く握っていた。
・・・
・・・
私は、齢十六から十八程のちっぽけな人間で。
この場からスタントアクション大立ち回りで逃げ果せる事も、口八丁手八丁でやりこめることもできる自信がない。
そもそも、そんなことができる風には、私自身作られていない。
ただ腹をすかせては、煌びやかなお菓子に目移りする程度の女子生徒なのだ。
――判っていた。これが彼女の手の内だ――
・・・・・・いや。
ただお腹をすかせただけの女子生徒なんて、そんなのは感傷にすぎるか。
それ以前に私は、私を知らないのだから。
自分がどのくらいの年の頃で、なんてあくまでこの学園に居るからそのくらいの年の頃だろうという予測に過ぎないわけだし。自分に何ができるのかわかっていないということは、それはそれだけで可能性があるということに他ならないのではないか?
ちくしょう、判っているのにいまいち踏ん切りがつかない。かなり気合が居る。やるなあクッソォっと悪態の一つもつきたくなる。
――いや、彼女には感謝すべきだ――
私は死体を見ても、死を目の当たりにしても、恐怖を感じなかった私にも、この場でようやく、人間らしい感情を発露することができたのだから。
オリビアに気が付かれないように小さく息を吐く。ドクドクとなっていた血管の音が一際大きく鳴った後、落ち着きを取り戻す。
・・・一瞬のうちに心の隙を上手く裁かれたようだ。
――判っている、先ほどまで口にしていなかった、甘露を口にしたことが原因だ――
判ってはいた、だが、乗り切れるとも思っていたのは事実だ、もちろんそれは私が私であるための意志を固めればの話で。
私が何を目的としているか、今だ他人事のように思う自分の姿や形、思惟や尊重が何を求めているのか。
――パキリ、と瞳孔の開く音がする――
ふと、冷水を浴びたように何かが突き抜ける。
体が、全身が、神経の一つ一つが、それこそがと、叫んでいる。
・・・・・・求めている? 私は、何かを求めているのか。何のために?
――私は誰なんだ、それは誰にも証明出来ない――
証明できないけれど、私はそこにある、私は考えそして求める。
――そうだ。お前は・・・。
そうだ、私は考える。
そして、私は自己を欲求する。
――いや、
私が私であるために、私は謎を
叫びそうになる口を押さえるように、もう一度カップに唇をつけ、息を吐くように言った。
「それは嫌ですね」
「でしょう?」
「ええ、ですから、そろそろお互いの腹を割りませんか? 先の事件は殺人事件で自殺ではない。そうですね?」
「そうじゃなければキミを拘束する必要はないね」
オリビアはおどける様に、こちらを見下すようにそんなことを言う。
「そして、あなた方は犯人に至るための証拠も手がかりも掴むことができていない」
「容疑者が先に出ちゃったからねこれから見つけるよ」
「殺害方法さえもわかっていない状況でですか?」
「・・・・・・」
相手がどの程度の情報を手に入れていて、どの程度せっぱつまっているか。
知るわけあるかそんなこと。
こんなことハッタリに決まっている。
しかし、いささか綱渡りである。なにせ何もかも的外れなことを言っても、交渉《・・》にならない。 また逆に真に迫りすぎても、犯人と間違われる可能性がある。何もかもを知っているような振る舞いもこの場合は駄目なのだ。
本当なら、こんなハッタリなんかかまさず、何もかもをつまびらかに話し不利じゃない状況に持ち込めば数日間の拘束の後、解放される事は眼に見えている。しかし、それでは駄目なのだ。満たされない。
私の欲求が、今ここで行動しなければならないと、脳髄を刺激し続けている。
「ずいぶんと挑発的だけど。大丈夫? 心象悪くなっちゃうよ」
オリビアは、そうは言いつつも余裕のある態度を変えることはない。
そうだ、オリビアはこういう人間だ。だからこそ。
「私はオリビアさんを信頼してますから、
「へえ、ありがたいね」
「たぶん、私が思っている以上にオリビアさんは優秀でしょう。私、たぶん人を見る目はありますから」
「たぶんばっかりじゃない」
「まぁ自分のことさえわからないので」
「眉唾だねソレばっかりは」
おどけて言うとおどけて返す。やり取りとしては地盤が慣れてきた。
憶測のハッタリ第2弾を出す。
「・・・しかし、死因が判らないほどの死体損壊や指紋が出ないカードやロープなど大変なことばかりでしょうね。なんといいましたっけ、自警団ではなくて・・・」
「風紀警鐘隊」
「そうそう、なんともお堅いお名前でしたね」
私は、会話をしながら今のハッタリに効果がないことを悟り、急いで彼女の返しやすい『風紀警鐘隊の呼称』という話題を振った。
「しかし、それだって仕方のないことじゃあないかな、元々この施設には死体を検分するための資材なんてないからね。もちろん、僕たちにだって医療知識が完全にあるわけじゃない。大体でやっているわけだ」
こちらの思惑が漏れたのか、オリビアは餌を出すようにして態々ハッタリに掛かる言葉を出す。
「平和が約束されているからのこの状況、そして貴方はいち早くその混乱に終止符を打ちたい。平和とは危ういバランスの上で成り立つと聴いたことがあります、外れた平和を元に戻すのは困難でしょう」
「共感、痛み入るよ」
中々丁々発止じゃないか、出来るな。私。
だから、そろそろ頃合だ。
「どうでしょう、協力しませんか?」
「・・・・・・キミ、自分で言ってること判ってる?」
私は、ただ私の伝えたいことを伝える。
本題、これで彼女を説得せねばならない。
「判ってます。貴方は平和を正す人、私は混乱を解き明かす人間です。同じ様ですが相容れません。アナタは正すために平和を求めますが、私は解き明かしたいから混乱を求める。私は、わからないことを解き明かせればそれでいい」
「だからあの現場に最後まで留まっていたと」
「そう、解かり易い謎が転がってましたから」
解かり易い、という言葉にオリビアの眉端が上がる。そうだ、そのまま釣られろ。
「ずいぶんな言い草だね、僕たちもがんばっているんだけれど」
「仕方ないですよ、あなたと私では行動原理が別ですし」
「だから、あの不気味な死体を作ったと?」
彼女も刀を返すように、探りを入れてくる。しかし私には、痛くもかゆくもない。
「作るのは趣味では在りませんが、中々素敵な光景であったことは確かですね」
「どの点が?」
「それは協力してもらえるならお話します」
「・・・・・・僕としては、キミがあのよくわからないカードを書いたって言うなら納得できるんだけれどね」
来た。ここだ。
「中々いいセンスでしたが、アレはいただけません。私プライド高いので」
「ん? どういうこと?」
「だから、
そして、私はワイルドカードを切る。
「あの暗号の解き方をお教えしますので、私に協力させてもらえませんか?」
静寂。
先ほどまで揺れていたオリビアの紅茶の湯気も形を潜め、時間が止まったように凡てが動かない。
私はじっと、結果を待つ。
オリビアがどのような解答をするかを。
「本当に解けているのかい?」
「解けてます」
「なら、吐かせるとしよう。なんて、僕が言ったら」
「・・・不安なんでしょう? 今後こんな事件が連続して起こらないかどうか・・・と、返します」
オリビアはふっと、笑顔を作った。
緊張が解けたように、空間が動く。
「まあ、そうだね。そうか、あれやっぱり暗号だったんだ」
「協力させていただけるので?」
「つまらないけれど、僕たちにもプライドはある。協力はさせられない、と言っておこう」
まあ、だろうとは思っていた。
「では、泳がせていただくということで」
「そういうことにしようか」
オリビアは、初めて茶菓子に手をつけた。男性のような振る舞いの割りに、細やかな所作でクッキーを摘み一口でそれを食べる。
どうやら、上手くいったようだ。が、最後まで気は抜かない。
「ならば此方も折衷案で行きましょう」
「うん?」
「解けるための三つのポイントだけ、教えます」
「ふうん、まあいいでしょ」
よほどお腹がすいていたのか、二枚三枚と彼女はクッキーを平らげていく。
やはり所作を気にしているのか、一定のスピードで。いや、なんかシュールだ。
そんなオリビアの姿を眺めている私は、いたずら心を働かせ、矢継ぎ早にポイントの説明を始める。
「まず、第一に『あの表が何を模しているのか』」
「表?」
「そう、表です。そして第二に『表は符』になります」
「符・・・? ちょ、ちょっとまってなんだか意味わからないけれど」
オリビアの顔に多少の焦りが見える。解けないかもと、不安なのだろう、が知ったことではない。構わず言葉を続ける。
「ここまでが判れば、第三は簡単『始まりは示されている』です」
「始まり、ってあの冒頭の『へのはじまり』のこと?」
「それでは、もう帰っても?」
そういって立ち上がる。と、何故かオリビアも立ち上がって
「やっぱりちょっとまって、もう一つ! もう一つヒントくれない?」
と拝んで懇願してくる。
それってプライドないのかな、なんて思うのは可愛そうだろうか。
うーん、なんて業とらしく呟いて見せてから、特別にもう一つヒントを出してやることにした。
「じゃあもう一つだけ」
「おお! 頼んでみるもんだ」
軽い感じに、顔を上げるオリビア。本当にプライドなんてあるのかな?
「・・・特別ヒント。死体ぶつかった天井の位置です」
「天井の位置・・・?」
「もうこれ以上はサービスできません」
「ええぇ・・・こうなったら人海戦術だなあ。きりゅー!」
オリビアがパンパンと手を叩くと、扉の前で控えていたのか、先ほど私に耳打ちしてきた女子生徒が入ってくる、やっぱり名前は桐生というらしい。
「桐生手伝ってよぉ、意地悪するんだこの探偵」
「探偵?」
ふ、と何気ない拍子に聞き返してしまう。
「謎解き専門の業者、ロマンあふれる呼び方でしょ」
「そうですね」
探偵、探偵か。
悪くない響きだけれど、気に食わない。なんだか、自分のような人間が他にも居るような感じがする。あくまで私は私であるために、欲求を叶えるのだから。
でもまあ、こだわっても仕方ないことでもあるか。
「まあ好きなようにしてください」
「ならば、○○ンカ・○ニ○ナと、お呼びすればいいのでは?」
桐生が発言すると同時に、私が固まる。
いや、何気なく会話に入ってきたことにも驚いたが、そうじゃない。
もしかすると、それは私の本名なのか。
「なに、その反応。もしかして本当に自分の名前わからなかったの? 仮にそうだとして、生徒手帳にも書いてあるじゃない」
そう、先ほどカミーナが指摘してくれた生徒手帳。
私も持っているはずの生徒手帳。
今は、生徒手帳のことはどうでもいい、それより名前だ。
私は、そんな名前だったのか。しかし、なんだかおかしな名前だ、そう、か。
名前か。
ここからはじめるのなら、丁度いいな。
ユズに名乗る名前も必要だろうし、意味合いを少し借りて、適当な仮名をつけるとしよう。
「いえ、好きじゃないんです。その名前」
「ふうん、なんだかよくわからないこだわり多そうだね、探偵」
「オリビアさん、探偵もあんまり好きじゃないから、やめてもらっていいですか」
「それじゃあ、キミにする?」
「いえ」
「なんだよ、さっきまで好きに呼べって言ってたのに・・・じゃあ、何?」
「音無・・・、音無小唄と呼んで下さい」