Neetel Inside 文芸新都
表紙

ぐんたいぐらし!!
裸の王様

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 「やってられっか……クソが」

趣味の押し付け合いと、酔っ払いどものどんちゃん騒ぎにいてもたっても居られなくなり

わたしはトイレに引きこもる。

酔っ払いのクソ先輩や上司どもに手招きされ、散々愚痴をはかれたり

酔った勢いで食べ物を粗末にしてくる先輩

特に伍長連中は糞どもばかりだ。正直、一番の害悪だろう。


兵長とは階級が一つだけ違う。

だが、その階級が違うだけでまるで貴族と奴隷のような階級差が生まれる。

何とか宴会の終わりまで時間を稼ぎたい気持ちもあるが、

そんなことをすれば後で同期に「こいつ逃げてましたよ~w」と売られかねない。

クソが……なにが親睦を深めるためだ。なにが乾杯だ。



何で何故数千円もの大金をつぎ込んでいるのか何度も疑問に思ってきた。

宴会とは楽しむものの筈だ。それがなんだ。

酔っ払いどものご機嫌取りと挨拶回りに右往左往して、

聞きたくもない説教に耐え切れず、思わずすみませんと言ってしまい、

すみません→謝ったら済むと思ってるのか→無言→何か言えや→以後、気をつけます→そのセリフ聞き飽きた


老害どもお得意の後輩イビリのループに閉じ込められてしまう。

なんだ、この茶番は。

おい、老害。

おまえら、クリア出来んのか。この無理ゲー。

……落ち着け 思わず我慢汁が滲んでしまったが、一旦ティッシュでしこり…仕切り直しだ。



ドンチャン騒ぎする伍長どもにおべっかを使い、叩かれつねられ愚痴を吐かれのイジリイジられに対応し、

隅っこや、トイレの近くの扉の近くで集まる兵士たち。

「おい、酒屋やないかー」

「河中さん。」

まるこめ頭の兵長歴4年目のまるこめさんが数名の兵士たちを集めて愚痴会を開いていた。

普段は結構いい人だが、かなり自分の世界に入り込みすぎる人で

説教たれると話が止まらず、17時の仕事終わりから20時まで屋上で説教されたことがある。

(話長い。説教されながら、夕日が落ちるのを横目で見ている自分が居た。)


「ほんま、あいつ鬱陶しいわぁ 伍長連中。

なにが最近の兵士はカスじゃ。 自分らがでけもせんこと下に押し付けるカスばっかが

何ほざいとんねん。」

まるこめさんの後輩であるとんがりコーンみたいな尖った鼻をしたピノキオさん(3年目)がこぼす。

わたしの同期のヘルボーイ(2年目)からは「あいつ、分かってること言いすぎや」と陰口を叩かれていたが、

少なくともわたしにとっては年下ではあったが、いい先輩だった。

「伍長連中も鬱陶しいっすけど、いっちゃんウザイのは浅原(6年目)ですわ。」


「あいつなぁー……あいつ酔っ払ったらすぐ伍長気取りで後輩に説教まがいの

上から目線の武勇伝語りだすやろ。」


「ほんまそれっすわー、おまえ伍長やないのに喋んなっつー話ですよ。」


まるこめさんとピノキオさんが後輩をつれて愚痴会を開いている。
こんなところで愚痴をこぼしたところで何も解決しないというのに
少なくとも浅原が死ぬか 辞めるか くたばるかしない限りは。


私はもう何もかもに心底ウンザリしながら、乾杯の現場を入口の扉の影で見送ると
そそくさと置いていた自分のカバンを回収し、その場を後にする。

幸い、今日は金曜日だ。
残留もなく、3日間シャバで過ごせる。
こんな連中と同じ空気を吸わなくていいのは有難いことだ。

私は、携帯のフォルダーに保存していた文鳥の画像を眺めながら
実家へと戻る。

週末に宴会がある週は決まってこんな暮らしをしていた。






話を浅原に戻そう。


浅原はまるこめさんの2個上の兵士会長である。同時にわたしの元教官でもあった。

わたしが軍人というものに、とことん失望させられ、かつ人間というものに激しく失望した理由を作った張本人である。

正直、感謝もしている。

今になってもふと彼のことをフラッシュバックするだけで

激しい憎悪がこみ上げ、そのおかげでわたしの小説や漫画の作風はドス黒く潤う。

信じていた筈の誰かに裏切られた、あるいは敵になった……

あくまでも わたし的にはいい悪役キャラを生み出せたことは大きな成果だろう。

世の中とは一生涯 友達で味方で居てくれるものなど居ないということを

教えてくれたおかげで わたし的には魅力的なキャラたちを生み出せたことを感謝している。

浅原のことについては 需要があればまた話そう。

それまで、この小説が消されなければの話だが。

もっとも、わたしに怒りと憎悪を教えてくれた彼らが

退役したわたしが どんな思いでいたのか  知りもせず、のうのうと生きているのも癪だ。

どうせ、人はいつか死ぬのだ。 

たとえバレたとしても 暫くはチキンレースに勤しむとする。



浅原はあと一年で昇任できなければクビと言われていたが、

仕事は出来る(と自分で思い込んでいたが、実際は伍長連中からは調子乗りのガキと陰口を叩かれていた)

ため、兵長歴6年でありながらまだまだ野心を捨てずにいた。

昇任試験は基本、兵長歴1年目から受験できる。

つまりは、試験になかなか受からなかった(のは私も同じだし、4年目でリタイアした私が

後から言うのも 人のことは言えないが…)というわけだ。

まるで中村獅童とゴテンクス(フュージョンに失敗したデブの方)を足して、

ゴテンクスの要素しか残らなかったような顔をしたチビデブの彼は、

酔うと正体を失い、上から目線の説教をしてくるのだった。

私より3歳年下で、社会人歴は軍人しかない20代のガキだと言うのに

人生の有り難みをありがた迷惑(あえて、この言葉を使ってやる。わたしの母の手料理を「ありがた迷惑」と言った報いだ)に語ってくれる

ありがたい先輩だ。 最近、若い老害という言葉が流行っているらしいがまさに若い老害っていうのは

こいつのことを言うのではないだろうか?

私とは教官と教え子だったという関係もあり、教官だったという主従関係があるとでも思っていたのだろうか。

もはや有難い話を超えて、ただの内政干渉に近い説教をかましてくれたものだ。

「おまえも車を買えよ~~」 

彼は車に金を使いすぎたせいで貯金が100万円しかない。もうじき、結婚して子供も生まれるというのに。

無計画極まりない奴に、買いたくもないものに金を使えとどうして干渉されなければならないのか。


「おまえ、風俗ばっかで彼女作らんのか。俺が紹介してやろうか?」

たった2日しかない土日の外出で、漫画や小説を新都社で連載するだけでも精一杯だ。

寮の部屋に閉じこもって執筆活動をしようものなら、いたずら好きの先輩ども(とくに酔っ払ってる時に遭遇したら最悪だ)に

ノートを探られかねない。そんな執筆環境でどうしてネタなんぞ思い浮かぼう。

私としては土曜日に実家に帰ってからが勝負なのだ。実家に帰ってラフスケッチをし、

日曜日の寮の門限に間に合うように最低20時半までには仕上げアップしなければならないのだ。

気分転換やネットで拾ってきた可愛い文鳥さんの写真では

心を癒せなくなった時は話は別だ。

確実にヤレる一人用バスルームで

ひたすら、その娘と子作りごっこを嗜みながら、

その娘のうなじと腕のケロイドを舐め回すのも

リフレッシュと心と体のメンテナンスのためには

たまには必要だ。


というより、自分は当時驚くほどの口下手だったし、
青春時代に彼女が居たこともないから女付き合いが出来ないというだけなのだが。


「整理整頓せぇや 部屋よぉ~」

ゴミダメみたいな部屋しておいてよく言うなと思う。

おまけに寮には持ち込み禁止のビールの箱を2箱も3箱も隠しておきながら、(まあ、みんなやっていたことだが)

自分のことは棚にあげる。まあ、確かに整理整頓の出来ていない私も悪かったし、

事実そんな自分を反省するいい機会にはなっていたが、指導してるその日に

せめて自分も部屋綺麗にしよぐらいは思わなかったのだろうか?


まあ、あげればあげるほどキリがない。たぶん、このまま語っていても

こいつの悪口しか出ないので今日はこの辺にしておく。


どうせ、わたしの正体もバレてるだろうが

あえてこのままでお願いします。



       

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