No10 「お嬢ちゃん、地球をくれないか?」

「お嬢ちゃん、地球をくれないか?」

だらしなく太った薄毛の中年が、少女に尋ねてきた。
少女はそれは首を振ってそ断るが、男は何度もしつこく同じ事を尋ねてくる。

「お嬢ちゃん、おじさんに地球をくれると言ってくれないか?」

いやらしい視線で少女を見つめ乍ら繰り返される男の言葉に恐怖を感じつつ、少女が首を振っていると、やがて目覚ましが鳴り響き、彼女は現実に覚醒した。
全ては夢、だったのである。

しかし、その日から毎晩、少女の夢には同じ中年の男が現れる様になった。
最初はただ目の前に立って同じ事を繰り返してくるだけだったが、ある時から男は裸になり、やがて手に何かいやらしい物、例えば女の裸が写った本だとか、ゴムのちくわの様な物だとかをもちだして、卑猥にエスカレートしていく様になる。
やがて気持ちの悪い男の夢のせいで少女は寝不足になり、ある日つい、うとうとと授業中に眠りについてしまった。

その夢の中にもあの男が現れて、いつもどおり少女に同じ事を尋ねてくる。

「お嬢ちゃん、地球をおじさんにくれるって言おうよ」

男は裸の女が映る映像をパソコンで開いていて、それを眺めながら話していた。
少女は即座に首を振る。

「地球をおじさんにあげて…」

ゆっくりと振り返ってくる全裸の男。

「おじさんと気持ちい事を毎日しよう」


「いや!いやいやいやいや!絶対に絶対に嫌!助けて!カラテレンビクトリー!」
「な!?」

力いっぱいの拒絶と共に少女が叫んだ名前に、男が狼狽える。
カラテレンビクトリーとは、宇宙の道徳に従って地球の平和を守るために戦う宇宙格闘家で、男の様な侵略星人の天敵の名前だ。

「む…無駄だ、ここにカラテレンビクトリーは現れない」
「セイヤー!!」

気合と共に、次元の壁をたたき割って白い胴着姿の宇宙人が少女の夢の中に現れる。

「カラテレンビクトリー!」
「アイワン星人!夢に干渉して子供達の心を自分の物にし、ハーレムを作るなど、許さん!私が相手だ!」
「何故それを!?ひいい」

パソコンを投げだし、逃げだす男、アイワン星人。
ビクトリーは空高く飛びあがると、その頭に急行下キックを放った。
アイワン星人の頭が吹き飛び、倒れた胴体が爆発する。


「やった!!」


授業の真っ最中、突然大声を上げて飛び起きた少女に、沈黙する教室。
宇宙から来た変質者の野望はカラテレンビクトリーの手で打ち砕かれた。
だが、それとは別に少女の孤独な戦いが今、始まろうとしている。