Neetel Inside 文芸新都
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No14 「地底都市の侵略者」

縦に、横に、空間一杯に広がった未来的な都市、そこを獣人のような人影が各所を行き来している
ここは別惑星でも未来の世界でも無い、現代の地球、その地底に宇宙から来た侵略星人、スドルボ星人が勝手に建造した巨大地底都市だ。
既に数十万のスドルボ星人がこの都市に移住していて、都市は地球の地下資源を使って更に拡大を続けている。

その都市の最下層に、宇宙道徳に従って地球を守る白い胴着姿の巨大な宇宙人、カラテレンビクトリーが出現した。

「スドルボ星人!すぐにこの都市を解体して地球から退去しろ!」

視界を覆う都市の建造物に向かって叫ぶカラテレンビクトリー。
だが、そこで暮らす獣人達は意に介さず、ビクトリーを無視している。
それならば、とビクトリーが何か行動を起こそうとしていると、イルカ型の戦闘艇に乗ったスドルボ星人の一団がサイレンを響かせながらビクトリーの周囲に降下してきた。

「カラテレンビクトリー、ここはもう我々スドルボ星人の都市だ、民間人も数十万入植している。そんな言葉は聞け無い。さっさと退去しろ、そうしないと不法入国罪と恐喝罪で逮捕するぞ」

ビクトリーを包囲した戦闘艇の内の一隻、英語でポリスと書かれ、パトランプまでついていた戦闘艇に乗る、狐にの星人が、ビクトリーを指さしてそう言った。
それに対し、ビクトリーはすぐに反論する。

「地球の地下資源はいずれ地球人類が使う大切な物だ、地上の地球人類に断りなく使うのは間違っている。それに、貴様等の都市建設の影響で地上では地震が起こって大きな被害が出ているんだ」

それを聞いて、周囲のスドルボ星人達は一斉に笑い始めた。

「そんな物は早い者勝ちだろう?それに、地上の被害なんか知ったこっちゃない!大体地球人が文句言ってくるなら兎も角、何でお前に言われなきゃならねえんだよ」

戦闘艇上のスドルボ星人達は手にした強力な銃火器を一斉にビクトリーへと向ける。

「帰れ!我々の都市への侵略は許さないぞ!」
「そうか…」

星人の返答に、ビクトリーはゆっくりと身を屈めた。

「こいつやる気か?この人数と」

人数で勝る余裕から、ビクトリーを嘲笑うスドルボ星人達。
スドルボ星人達の大きさは40mあるビクトリーの手のひらほどでしかないが、手にした火器は地球の如何なる兵器の装甲も容易く貫通でき、戦闘艇は音速でアクロバティックな動きをしつつ、搭乗者に負担をかけない作りになっている。
更に、星人達は四方八方上下かビクトリーを狙っているのである。

「構わねえ、やっちま…」

星人達が引き金にかけた指に力を入れた瞬間、ビクトリーの姿が描き消え、周囲を取り囲んでいた戦闘艇が一斉に爆発四散した。

「な…な…な!」

ビクトリーが、目に見えない速度で回し蹴りを放ったのだ。

「そちらがそちらの理屈で動くのなら、私も私の理屈で動こう」
「ま…待て、待った!ま…」

冷酷にそう言い放ち、反撃する暇もを与えずに残りの戦闘艇を拳で撃墜するビクトリー。

「ポリ公あっけなくやられてやんの」
「よえー、マジウケる」

次いで、ビクトリーは先ほどから逃げもせずに楽し気に戦いを見ていたスドルボ星人達の方を向いて、言い放つ。

「もう一度言う、地球から出て行け」

だが、非武装の民間人である自分達が攻撃を受ける事は無いと思っているのだろう、星人達はビクトリーの警告を無視して、その場から去ろうとはしない。

「わかった、死にたくない奴は逃げろ」

その様子を見たカラテレンビクトリーは、容赦なく都市の破壊を開始した。
壁にある都市の建造物を拳で砕き、天井から伸びる建造物を手刀で叩き切り、地面に立つ建物を踏み散らす。
自分達にも攻撃を始めたビクトリーに、流石の星人達も慌てふためいて逃走を開始する。
悲鳴と怒号が木霊し、降り注ぐ瓦礫と爆発が逃げ惑う星人に降り注ぐ。
時折イルカ型の戦闘艇や建造物に設置された迎撃装置などが反撃してくるが、ビクトリーはそれを苦もなくかわし、一撃で排除する。

「ま、待ってくれ!やめてくれ!俺達は関係ない」
「ならさっさと星へ帰れ」

命乞いする星人を追い払い。

「ここは病院だ!動かせない患者が大勢いるんだ!来るな!」
「ここは地球だ、ここに連れてくる方が悪い、それにスドルボ星の技術なら建物ごと移動させられるだろう!破壊されたいか!」

医療施設を追い散らし。

「子供がいるんです!やめて、お願い!家を壊さないで!」
「他人の星だと知って連れてくるお前が悪い、さっさと失せろ」

幼い子供も容赦なく追いだしていくビクトリー。
ビクトリーはまる二日暴れまわり、星人の地下都市を完全に破壊し、全ての星人達を追放、もしくは撃破した。

瓦礫の山と化した都市で、ビクトリーはじっと両手を見つめ、考える。
自分は今、理由はどうであれ都市を一つ粉砕し、大勢の星人達を殺したのだ。
いや、この都市の星人達だけではない、地球の平和を守るためとはいえ、今までも宇宙人や怪獣を殺してきた。
その行いは、侵略者ではない、破壊者、何も産みださない行為だ。
本当に、これが正しい事なのか、と。
しばらく両手と、瓦礫の山を見つめていた破壊者だったが、結局、応えは出なかった。
だが、この破壊が地震で苦しむ人々を救い、人類が将来つかう地下資源を守り、スドルボ星人よりも弱い地球人類に貢献したのは確かである。

       

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