Neetel Inside 文芸新都
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一枚絵文章化企画2017
「月見で物の怪しが惑ふた小咄」作:ツングー正法 0306 21:00

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 秋の深まる満月の夜、サムライの家では団子を食べながら月見をするのが習わしである。三味線をBGMに、カブキをダンスし、ハイクを詠むのだ。

 小さな下僕妖精ブラウニーどもがタタミを掃き清め、ビョウブをトコノマに飾る。いざ準備は終わり、妖怪屋敷の家人は月見を楽しまんとした。

 だが、そこへ到来する一大事!

「団子がねえだと!?」

 双頭のオーガの左首が怒鳴る。右首は青ざめ失神する。

「しかり」

 サイクロプスが頷き、単眼を細めた。

「老舗団子屋のヨシミツは、不況の煽りを受けて倒産してしまった」

「てやんでえ、そんな方便あるか! 幼女御前にどう言い訳すんだ!」

 家の妖怪どもは、身を落としたとはいえ、心はサムライであった。
 そして、サムライはレディ・ファーストを信条としている。サムライは、そこらのニンジャ・ゲイシャ・オタクとは格が違うのである。

 月見に団子が無いなどと抜かすは、奥に控える屋敷の女主人、幼女御前の顔に泥塗る行為であった。

「スケルトンよ、貴殿の助言を乞いたい。この困難、どう乗り越えよう?」

 サイクロプスが問うと、ジャパニーズ・ガーデンに面した縁側で寝そべるスケルトンが気だるそうに応じた。

「ボクは庭奉行でね。団子に関しては感知しかねるよ」

 スケルトンはそう言い、ここで一句ハイクを詠んだ。

「『古池や スライム飛び込む 水の音』。……早く団子を用意してくれたまえ。ボクはお腹ぺこぺこだよ」

「てめえのどこに腹があるってんだ!」

 オーガが呻く。

 いよいよ進退窮まった。

 幼女御前の楽しみにしている月見で団子を出せないとは、甚大なるソソウであり、サムライとしての名折れである。ドゲザで済まされることではない。
 面目を保つにはハラキリ・スウドクするしかないのであろうか!?

 そのとき、部屋の隅で瞑目していたビッグフェイスが口を開いた。

「やれやれ、四季を楽しむイベントにも関わらず、ダンドリが悪くてこの狼狽えよう。嘆かわしいことだな」

 その泰然自若とした様に苛立ちオーガが立ち上がる。

「てめえはデカい面しているばかりで、何の役にも立ってねえじゃねえか!」

「手なら既に打った。月見は問題なく決行される」

 ビッグフェイスが言うと同時に、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。

「すいませーん、ペッパー・ピザです!」

 玄関からの声。
 瞬時に、この場の妖怪どもは、ビッグフェイスが禁じ手を用いて問題を解決したことを悟った。

 玄関にてピザ配達の飛脚が続けて言った。

「ご注文いただいたアンチョビ・チーズコンボの団子トッピング・ピザ、ラージサイズ六人前、お届けにあがりました!」

       

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