Neetel Inside ニートノベル
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だんだんじめっとしてきた。夏服に滲む汗が不快感を煽る。夏は嫌いだ。何もかもがいきいきして、眩しすぎる。



今年の夏を乗り切れば、大嫌いな部活が終わる。そしてついに私も受験生。このご時世、高校に行かないという選択肢など私にはない。いや、今受験のことなどどうでもいい。

私は、部活で、同じ学年の奴らに、可愛く言えば仲間外れされている。バカなふりしていつもヘラヘラしていたのが原因のひとつで間違いない。さすが、スローガンでもある団結力(笑)。こんなことしているバカに、それに怯えながら何が悪かったんだろうとひたすらに考えているバカ。「私」はバカどもを見下していて、嫌悪感を感じずにはいられなかった。

家に帰ると、雨がちぎれるくらい尻尾を振って出迎えてくれた。
雨、というのは弟が犬にとあるおおかみこどもの映画から名付けたもの。と思う。弟は小学生のバスケットチームに所属していて、そこから子犬を貰ってきたらしい。
私が雨を撫でていると、台所から私の嫌いな声が飛んできた。まだトイレの場所をおぼえていない雨が、台所でやってしまったようだ。棘のある声で叱りつける母。助けを求めるように私にすり寄る雨。そんなありふれたワンシーンは、私お得意の自問自答のきっかけとなった。



今回のお題は、こちら。

人と犬のしつけ 、なんて。

私なりに本で学んだが、犬は飼い主が全てで、喜んでもらえるなら一生懸命だそうで。いいことをしたら全力で褒めちぎり、悪いことをしたら大声で注意して何十分かガン無視というのが基本のしつけ。ようはトラウマじみたものをうえつけさせればいい。(記憶に歪みがあるかもしれません。ご了承ください。)

一方、人は考えられる。理由を理解できるから、ちゃんと説明すれば荒療治する必要はあまりない。よく知らないが。
しかし、個人差は例外無くある。
恥ずかしながら、私はヒトとしては欠陥品で、お母さんがダメと言ったらダメと、よく考えもせず従っていた。怒った母が何よりこわかった。私の人の顔色をうかがう癖は、物心ついたときにはすでにあった。

私は人として成長してなかった。自分で考えられない、意思も意志もない空っぽな奴だった。犬の様に、言われてきたことに必死になっていた。犬の様に、というのは犬に失礼かもしれない。私はクズだ。なにもない。価値がない。







そんなわかりきっていた結論が出た頃には、私は受験生になっていた。夏が終わる。

       

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