Neetel Inside ニートノベル
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自慢ではないが、私は勉強はできた方だった。まあ、忘れ物が酷く評定は並みだったが。
進学なんて頭の隅にもなかったが、担任にいわれるままに県内No.2の進学校を受けた。前述の通り大して勉強なんてしていなかったのに、

こんなクズが受かってしまった。
嬉しくなかった。それどころか、私はショックだった。数字の書かれた板の下、精一杯の喜びを母に向けた。母の都合のいいことになってほしくなかったのかもしれない。自分でもよくわからない。人は矛盾した生き物、とはこのことか。泣きながら高校を出ていった彼らの背中を、ただただ妬ましいと思ってたことは、今ではどうでもいい思い出だ。


合格発表の帰り、母とファミレスによった。珈琲の不味さしかおぼえていないが、はたからみれば普通の親子に見えただろう。当時の私も普通の関係だと思っていた。子供は性行為のついでにできたもの、子供は親の老後の生活を支えるためのもの、子供は親の言いつけを守るもの、だと。
そうでなければ説明がつかなかった。親が私のようなクズを辛抱強く飼っていることを。




家に帰ると、雨が真っ先にとびつくのは私だった。とびつくとはいえ、体が小さいので、せいぜい膝のあたりまでだ。
雨がきて一年もたってないのに、家族の 冷め が感じられた。雨は少しバカだからお座りしかできないが、飼い主たちが私含めみんなバカなせいでもあるが、待てはできる。母や弟がかまって欲しい雨をしつこく思ったとき、が主な使用場面。雨はお座りをして、彼らがスマホから手を離すのを待つ。ずっと。

犬は何も語らないが、私が解ろうとしないだけなのか。
人間同士でさえ、言葉が話せているのに解り合えない。
ペットは家族同然なんて言うが、家族もたかが他人の集まりにすぎない。
ペットはペット。それでいい。
雨はこの家のペットじゃない。私のペットだ。
雨は私がいないと生きられない。そう考えると「リードを握る私」に変に違和感をかんじた。

       

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