Neetel Inside ニートノベル
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ビジュクとの戦闘後、俺はなんとか夕暮れ前にサイヒシティに到着することができた。早く宿を探さないと…
「やめてください!!」
悲鳴?あの人だかりから聞こえたみたいだけど…ちょっと行ってみるか。俺は人だかりをかき分けて中心部へと向かった。
人だかりを進んでいると、周りから「大丈夫かねあの子・・・」「誰か助けてあげないのか?」と誰かを心配する声が俺に聞こえてきた。誰かが捕まっているのか?俺が人だかりを抜けると、エプロンを着ている1人の女性と、ムダに細い体系の男が何やらもめている光景が見えてきた。
「放してください!」
「いいじゃねえか~楽しいことしようぜ。でないとこの剣でグサリだよ?」
 細身の男は女の喉に剣を近づけながらそう言った。ナンパにしては強引なやり方だ。「剣を使っておどすなんて最低だぞ!」「そうだそうだ!」という町の人たちの批判の声が飛び交った。町の人のいうことはもっともだ…でも。
「誰のおかげで町の中で平和に暮らせてると思ってんだ!あぁ?」
 でも彼らのような冒険者や旅人のおかげで町や村が守られているのが今の現実。だから、町や村の人達は旅人に何も言い返すことが出来ない…そこを付けねらって悪さをする連中が最近増えてきている。
「わかったか?貴様らは俺に助けられてんだよ、いい思いして何が悪い!」
でも、だからと言って何をしてもいいわけはない。
「いやっ、はなして!誰か助けて!!」
ましてやそんなのが、旅人であるはずがない!

【バシッ!】

「いって!誰れだ…誰れだ俺に石を投げやがったの!」
「俺だ」
俺は男の顔に石ころを投げつけた。性分と言うかなんと言うか…やっぱり、こういうことを見て見ぬ振りなんかできないよな。誰かを助ける事に理由なんて必要ない。
「なにが『俺だ』だ!!ふざけやがって、今すぐぶったぎってやるよ!!」
「きゃっ!」
 男は女を突き飛ばし、一直線に俺に斬りかかってきた。
「死ねぇぇぇ!」
「冗談!」

【ドコッ!】

「ぐはっ!」
男が剣を振り下ろした瞬間、男のみぞおちに剣の柄頭(剣先の反対側)を打ち込んでやった。こんな奴相手に剣を抜くまでもない。
「ぐっ…」

 【バタッ!】

男の膝はガクッと地面に落ちた。
「…俺達はモンスターを倒しているんだ、いい思いして何が悪い!」
「力を持っているからって、それを行使していいわけじゃないだろう…まだ、やるというなら」
 
【チャキン!】

 俺は鞘から剣をゆっくりと抜いき、それと同時に風を周囲に発生させた。

 【ブワッ!!】

「うわっ!な、なんだ、風がいきなり?お前まさか、風の力を使うあのミキス・クロウディか!?」
「ああ、そうだ」
「ははは…ま、マジかよ。じょ、冗談だよ冗談。ちょっと調子乗っちまっただけさ。だから命だけは勘弁してくれよ、なっ?」
「ならさっさとここから立ち去れ!」
「はい!」
 男は大急ぎで逃げていった。俺はこの大陸では結構名が知り渡っていて、名前を聞いたり、風の能力を見せただけで逃げてく奴が多かったりする。褒められたことではないけれど。

【パチパチパチパチ!】

俺が剣を鞘に納めていると、周りから拍手が聞こえてきた。
「すごいぜ兄ちゃん」「あなたのおかげでシューちゃんが助かったわ」「あんたこそ本当に剣士だ!」
周りにいた人達からの感謝の声が俺に集まってきた。
「い、いや、そんな…」
 なんだか照れるな、こういうの。
「あの」
そのとき、人質になっていたエプロン姿の女性が声をかけてきた。
「あ、大丈夫だった?」
「はい…ミキス・クロウディさん、ありがとうございました。本当にありがとうございました」
 女性は何回も何回も頭を下げた。
「そ、そんなに頭下げないでよ。とにかく俺はもう行くよ、宿探さないといけないから」
「宿を探しているのですか?…それなら私に任せてもらえませんでしょうか!」
「え?」
 俺は訳も分からぬまま、彼女の顔をじっと見ていた。

       

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